おとぎ話の世界から飛び出した
シンデレラを乗せるハーレーダビッドソン
「王道中の王道、これが今回のカスタムコンセプト。ハーレーを知らない人が見ても『ハーレーダビッドソンやね』って分かる一台に仕上げたかった」
元々はポリスモデルだったというこの1983年式 FLH-Pを手掛けた神戸のシウンクラフトワークス代表 松村友章氏は不敵な笑みを浮かべた。一方で、本モデルを最初に見たときに印象的だったのはタンクやフェンダー部分のペイントで、その他は従来のFLHとの違いに気付かなかったほど。しかし、細かくディテールを観察していくと、熟練の腕を持つビルダーならではの手が加わっていることを思い知らされる。
「何より大事にするのは、全体のシルエット。ディテールにどれだけ手を入れても、最後にビシっと決まっていないと意味がない。そこは長年の経験から、“これぞ”というものを描いてまとめていくんです」
そう語る松村氏の言葉どおり、スタイリングの完成度は申し分ない。それだけに、「実は……」という秘められたカスタムポイントが隠されている。
まずこの一台、従来よりもローダウンさせられているという。この際、リアに設置されたサドルケースとリアまわりのバランスが合わなくなり、そこでサドルケースの位置も同じく下げることに。しかし、干渉する部分がいくつか発生し、リアブレーキキャリパーを小径化させるなどさまざまな工夫を要した。このほかにもメーターコンソールをさりげなく変更したり、テールランプもシウンならではの組み合わせに変えたりと、ハーレーダビッドソン本来のイメージはそのままに、ビルダーの経験から生まれた工夫を取り入れてバランスよくまとめられたヴィンテージモデルと言えよう。
Midnight Pumpkin(ミッドナイト パンプキン)とは、おとぎ話『シンデレラ』に登場するカボチャの馬車のことだそう。妖しく光る三つのテールランプとともに夜のハイウェイを駆け抜けるその姿を思い描くだけで、胸が高鳴る。
カスタムの詳細をチェック!
一見すると従来モデルのままのようなヘッドライトまわりだが、実はパンヘッド モデルに使用されていたヘッドライトステーを流用しているという。
POLICE SPECIALと刻まれたメーターコンソール。従来だと四角いデザインのものが使われているのだが、雰囲気を重視し別車種のものを取り入れた。
ベース塗装はWhole Nine、シルバーリーフやピンストライプなどはGRIMB krazy paintingという手の入れよう。「申し分ない仕上がり」と松村氏。
1967年モデルのバディシートを換装。タンデム可能なので、あとはオーナーが後ろに乗せるシンデレラを探すだけ。「男とのタンデムは基本的に禁止、緊急時のみ」(松村氏)。
本モデル最大の見どころのひとつ、ロアマウントされたサドルケース。一見気付きにくいところに深く手を入れ、シルエットの完成度を高められる熟練ビルダーの手腕には脱帽するばかり。
下部に設置されたふたつもテールランプ。「夜、三つのテールランプが妖しく光るところがこのハーレーの魅力です」と笑みを浮かべる松村氏。この遊び心がたまらない。
ヴィンテージモデルとしての雰囲気を増すホイールキャップも。ナイトラン時の街灯でギラっと光る瞬間を楽しむのもポイントと言えよう。ここもシウンらしい工夫だ。
S&S キャブレター Super Eはもちろん、ストローカーキットを取り入れて1,400ccまでパワーアップされたショベルヘッド エンジン。その乗り味への興味は尽きない。
古き良き時代の左右出しシガータイプ メガホンマフラーを装着。整えられたエンジンのパワーを吐き出すことはもちろん、スタイリングも申し分ないベストチョイス。
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