何かしらの意思、何かしらのオートバイに手を加えること。オートバイが本来備えていたシルエットやポテンシャルを意図的に変更させる行為。それをカスタムと呼ぶならば、例えばその行為に優劣を付ける場合、オートバイに主の意図がどれだけ忠実に具現化されたか、基準はそこにしか存在しないはずだ。例えばその意思が「どのバイクよりも速く!」だとすれば、幸いこの世にはスピードという世界共通の基準が存在するから、そのカスタムの優劣は誰にでも客観的に判断できる数値として捉えることができる。
しかし「かっこいい」や「美しい」といった数値では示せない各々の主観的意思に基づくカスタムバイクに優劣をつけるとしたら……結局は「どれだけ満足したか」という主張的判断、つまり主の自己の満足度を基準にするしかない。主がベストだと思えばそのカスタムバイクはベスト。カスタムとは元来そういうものではないか。
もちろんオーディエンスが他者のカスタムバイクを見て抱く感情を否定するつもりはまったくない。なぜならオーナーやビルダーの意思が投影されたカスタムバイクは、場合によって第三者の心も惹きつけるエンターテイメントにもなりうるものだと思うから。作り手の意思と見る者の意思。両者がオートバイを通して交錯した瞬間の瞬間。好きか嫌いか。カスタムを見るのに理屈なんていらない。それを見て感じたことがすべてじゃないか。
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今回紹介するご覧の一台は、ビルダー徳山公俊率いる ACE MOTORCYCLE のチョッパーだが、このパンヘッドこそ昨年の HOTROD SHOW に出展された650台のオートバイの中での一番。あくまでも個人的な主観だが、ブッチギリの一番である。実はこのパンヘッド、2010年式 NEW ORDER CHOPPER SHOW ですでにお披露目され、その際間近で見たのだけれど、横浜の会場で再見したときもファーストコンタクトの興奮が見事に蘇った。「衝撃的」といったら少々大げさに聞こえるかもしれない。でもあの蒸し暑い会場で、気付くと鳥肌が立っていた。かっこいいと思うバイクは他にも多数あった。しかし胸の奥に「ズトン」とくるバイクはこの一台のみ。いろいろ考えてはみたけれど、結局のところ明確な理由は見当たらなかった。直感的な衝動? あえて言葉にしたところで、陳腐なセリフしか思い当たらないのが本当にもどかしい。
こんなパンヘッドが自分の日常にあったなら、日々の生活はどれだけ楽しくエキサイティングで豊かになるだろう……そんな妄想をどれだけしたか。震えるほどの感動を与えてくれるカスタムバイク。これを読むあなたにも、きっとそんな一台がある。