2010年の JOINTS で見事“KING OF STREET”を受賞した車坂下MC製の1972年式 FLH。バランスの取れたスタイリングが見せ場となるロングフォークチョッパーだ。
注目すべきは“フロントフォーク”と“ペイント”の2点である。まずフロントは10インチオーバーのハーマン製ガーターフォークを使用。元々付いていたディラーバーをトップブリッジ上部でカットし、シックスベントを装着。2mm厚のスチールパイプで製作したハンドル内部は発砲ウレタンで密度を増し、強度が確保される。通常、レイクしたネックへの装着が一般的なハーマンフォークだが、このチョッパーは敢えてネックを起こしマウント。シッシーバーと角度を均衡させ、フロントのカチ上がった狙い通りのサイドビューを入手する。しかしビルダー野呂裕二は、ネックの微調整を始めロッカーの加工などで、スムースなハンドリングを実現するトレール量の確保に苦心したと言う。そしてミニドラム装着のロングフォークによく見受けられる、ワイヤーの伸びにも配慮。ブレーキワイヤーのインナーには太いタイプが使用される。このチョッパーにはこうした経験に基づくノウハウが細部に潜んでいる。
お次はペイントである。シルバー/ブルー/パープルの3カラーはフレイクを混合して塗装。明るめから暗めへとグラデーション(ぼかしペイント)でフィニッシュされる。これらペイントワークも一貫してビルダー自身が担当している。
「ペイントは手間が掛かるから苦手。だけど車体のバランスや雰囲気すべてに掛かってくるから他人には任せられない。カスタムする上で重要な部分だしね」
多様なカスタムを手掛けるビルダー野呂裕二のボトムラインはロングフォークである。客のいかなる要望にも応え、それを具現化する腕を持つ彼だが、やはり得意とするチョッパーには無二の存在感が漂っている。