ご覧のチョッパーは石川県金沢市の UPPER が製作した一台。ベースは1979年式の FLH。シルエットの要となる骨格は、ストックの4速フレームが活かされている。
「そもそものオーダーが4速フレーム + テレスコフォークで、それ以外はお任せで作らせてもらった」
ビルダー石川大はオーナーが託したイメージを汲み取るべく、4速フレームにしか実現できないチョッパーを企画した。しかし4速フレームベースのカスタムは今は巷にあふれている。小さいタンクに短いフェンダー、ドラッグパイプ。リジッドバーにしたところでもはやドラマチックな演出も望めない。ビルダーは骨格となる4速フレームを改めて観察していた。
「結局はご覧の通りで奇をてらう事無くシンプルにまとめた。ただしトータルのバランスとシルエットにはこだわっています。そのためにフレームに少々細工した。ほとんどの人は気づかない地味な加工なんだけど、それをやるとやらないとで完成時のバランスが異なります」
ネックからシート下にかけてのメインチューブに注目して欲しい。フレームのシートレール部が1インチほどロワードされメインチューブのラインが修正される緻密なモディファイ。でも確かにストックの4速フレームには、ここまで直線的なラインは存在しない。
かくして石川は4速フレームのチョッパーを心待ちにしていたオーナーに100% + αの満足を与えることに成功する。扱う素材の特性を見極めて、その素材を最大限に活かすこと。あっさりとしているがプロにしか出せない味。過去の HOTROD SHOW でアワードを獲得したビルダーの実力は健在である。
「実はこの7月になんとかうちも10周年を迎えました。ここ最近はカスタムショーもご無沙汰していますが、カスタムビルダーとしての自分の集大成と呼べるプロジェクトを製作中です」