「オーダーはディガースタイルで二人乗り出来るバイク。あとはお任せだった。古代文明をイメージして自分なりの解釈で製作した」
富山県魚津でショップをオープンさせ7年目を迎えるダブルクレスト。代表の斉藤雅巳は各パーツの造形、そして全体のバランスに留意しカスタムを進めた。
フロントフォークには3インチオーバーのパウコ・ナロースプリンガーを装着。トリプルツリーは四角い造形が嫌いとの理由から、サンダーで丸みを出し綺麗なアールに仕上げられる。更にリアレッグに真鍮ロウを盛って削り、2ミリ厚のエッジが立つデザインにフィニッシュ。注意して見なければ見落としてしまう箇所ながら、細部に至るまで徹底した作り込みが施されている。
「既製品をそのまま取り付けず、無い物をイチから作ってカスタムするのが僕のこだわりかな」
幼少の頃から造形深い物に惹かれていたビルダー斉藤。鈑金、溶接、削りという地道な作業工程の集大成がこの57FLである。例えばフットペグステーひとつ取っても、理想の形にするなら何時間掛けて削り続けても苦ではないと言う。
タンクからリアフェンダーへと続く流麗なライン。手作業でしか成しえないエッジとアールが調和した美しい造形である。アルミの質感がアクセントになるヘッドライトバイザーやエアクリーナーカバー。そしてクロームの1.5倍は値段がするゴールドメッキを「古代文明」のテーマに沿い施したプッシュロッドカバーやステーボルト。素材の違うメタルパーツをバランスさせメイクしたフォルムからは、どこか中世の騎士を彷彿させる気品と存在感が漂っている。
「バイクが静止している状態でも生きているかの躍動感を与えたい」
造形にこだわる斉藤雅巳が狙うカスタムの先は「芸術」の域。そのポリシーは妥協の無いマシンの作り込みに投影される。