ハーレー乗りなら知らない人はいないだろう、愛知県岡崎市のゼロエンジニアリング。今回紹介するのは、ゼロの創設時から携わる熊谷勝司氏の手がけたFLH。低くコンパクトなスタイリング、極少フューエルタンク、有機的なデザインを備えたパーツ群…。それらが織り成すシルエットは、いちショップの作風というレベルを超え、「ゼロスタイル」というジャンルを生み出すに至った。
66ジェネレーターショベルは丁寧にオーバーホールされると同時に、アンドリュースのJカムをインストール。キャブレターは始動性と扱いやすさを考慮したケイヒンが選択される。スロットルを握った瞬間、強烈な前傾姿勢を強いる特有のフォルムは、低く構えたグースネックと74スプリンガーによるもの。前後16-4・00サイズのハイトのあるタイヤゆえに、低速での取り回しは少々重いが、その反面高速での安定感は抜群。ワインディングへ乗り出し、右へ左へとリーンさせて冬の山間をエキゾーストノートと共に駆け抜ける。気分は実に爽快で、タフなライドフィールは「操る楽しさ」へと変わっていた。
「いつ見ても、何台作ってもいいスタイルだと思うよ」
としみじみ語る熊谷氏。撮影を行った夕暮れ、陽光を受けて輝くグースネックのチョッパー…。カメラマンと共に眺め入ってしまったそのときの光景が、上の右向きの写真だ。岡崎のチョッパー屋の一貫した哲学は、世界中のビルダーに今もなお、強い影響を与えている。