一見すると、カスタム要素の少ないローライダーに見える。むしろトランプサイクルというショップのキャラクターを考えれば、物足りなさすらあるところ。しかしながら、このローライダーの本質はそこにあらず。代表の長岡 守氏が「カリッカリにチューンアップした面白い一台。ウチの代表作と言ってもいいかもね」と自信を覗かせるほど、内なる性能を引き出したドラッグレーサーなのだ。
ベースは排気量1,450ccのツインカム。まずエンジンのヘッド部分をCNCポーティングで加工し、カムやオイルポンプ、クランクなどすべてハイグレードなものに交換している。そこにS&S製 Gキャブレターを備え、低速から高速域までのパワーを最大限に引き上げる好相性のパフォーマンスキット サンダージェットを投入。これだけで排気量は約1,600ccまでボアアップ、通常このモデルなら65~70馬力のところが105~110馬力ぐらいまでパワーアップしているという。「テスト走行したけど、正直怖くてアクセル全開にできへんかった」とは長岡氏の弁。
ここまでやれば、当然足まわりも徹底的に強化するのがトランプ流。フロントフォークにはショップオリジナルのスプリングを内蔵し、リアにもオーリンズベースのオリジナルショック「BLD-316」を採用と、当然のようにパフォーマンスアップを図っている。ハンドルは1977年式 FXS ローライダーへのオマージュか、プルバックライザーにオリジナルのドラッグバーという組み合わせ。「鈍くさそうに見えて、実は軽くて速い。信号待ちで“ヨーイドン!”しても、そうそう負けへんね」(長岡氏)と、外装はシンプルながら、内側にモンスターを飼っている恐るべき一台である。
このモデルのオーナーは同ショップの若いスタッフで、ドラッグレースに持ち込むことも視野に入れているのかと思いきや、「今はまだそこまで考えていない。でも検討はしたい」とのこと。老婆心を承知で言わせていただければ、このローライダーのポテンシャルを最大限に発揮するには、公道はいささか狭すぎるのではないだろうか。ぜひサーキットでそのパフォーマンスを見てみたいものだ。