絶対条件はストックの骨格。フレームに手を加えずどこまで理想の形に持って行けるか。ハイレベルな板金スキルを擁する群馬のノーブランドは、明確なコンセプトのもとロー&ロングなドラッガースタイルに99FXDLをメイク。
タンクからリアフェンダーにかけてのラインがキモとなるマシンだ。一枚の鉄板から叩き出し製作したエクステリア。それに拍車を掛けるビレットパーツとペイントワークの饗宴。細部に至る徹底した作り込みが完成度を上げる。
「変わったことをしないでもモディファイすべき箇所は山ほどある」。ビルダー阿部はまずリアアクスルに目を付けた。55mmストレッチしたトムドラッグ製スイングアーム。そこでアクスル部にナットを締め込んでもペイントが剥げないよう、4mm厚のステンプレートを埋め込む。寸法を計り無垢のスチールブロックに穴を開けスイングアームにはめ込むという、恐ろしく手間の掛かった箇所だ。更にフューエルタンクも同じ理由から、タンクマウント部にボルトワッシャーを圧入。これによりタンク取り付け時によるペイント剥げを払拭。そしてシートはボルトでなくマジックテープで脱着可能とする。これはトラブル時、シート下にまとめた配線類を直ぐ見れるようにしたものだ。日常の使用を前提にした細かな配慮。ココまでディテールにこだわるビルダーは稀だ。
そして6度レイクさせたフロントエンドの取り回しに注目したい。2インチローダウンのSJP製フォークは、ストック同様の軽やかなハンドリングを実現する。それは十分にトレール量を計算した阿部のセッティングによるものだ。
タンクやフェンダーなどはほぼ全て阿部によるハンドメイド。そしてマシンの細部に至るディテールワーク。この一台を前に、カスタムとはユーザーサイドに立つビルダーのキメ細かな配慮の集大成なのだと痛感した。