昨年、LAカレンダーモーターサイクルショーやHCSなど、多くのカスタムショーでNO.1の座を獲得したケンズファクトリー。メカニカルなディテイルに内包した色香、バランスの取れたフォルムが持ち味のショップだ。
今回の98FXDLはストックフレームをベースに製作。「特別なことは何もやっていない」とビルダーの永井健次は言うが、細部を見るほどにケンズ特有の味付けが見て取れる。例えばストックのバイザーに入れたスロッテッドや流麗なタンク、サイドマウントのナンバープレートなど挙げていけばキリがない。が、一番の見どころはリアフェンダーの角度だ。
曰く「ダイナはシートからフェンダーへの流れるような角度が出し難い」。しかもこのマシン、LEGENDのエアサスを装着するために、ショックが機能を果たすベストな位置へアンダーピポットを後方へ移動している。つまりストックでも出難いフェンダーの角度を、ショックを移動したマシンで製作することになる。さらに、フェンダーとストラットは一体。別体であればフェンダー角の調整は容易だが、フェンダーエンドへ繋がるストラットと共に加工が必要になってくるわけだ。
完成したシートからフェンダーへと繋がるラインはご覧のとおり。均整の取れたバランスをはじめ、シートエンドを包み込むかのように隆起させたフェンダー前部の処理など、その完成度にケンズの手腕を見る。
数時間乗ってみた率直な感想は、至って普通。が、カスタムマシンにおいてこの「普通」の乗り味が楽しめるバイクは意外なほど少ない。個人的に、街乗りや高速でストレスなく快調に走るカスタムマシンほど魅力的なものはない。ビルダー永井健次は見事に走りとスタイルを両立させた。