闇に溶け込む1999年式FXDX。ブラックを基調としたストックのフォルムに、独自のエッセンスが注入される。素材の良さを最大限生かしたカスタムの好例がこれだ。手がけた仙台のチョッパーファクトリー「SAM’S」のビルダー、鈴木オサム氏は言う。「実はツインカムベースのカスタムは初めて、これまでオーダーがなかった。ペイントとシルエットで雰囲気を出してみた」。
SAM’Sではライトカスタムの部類に入るこのマシン。タンクはノーマルの流麗なアールを生かし、センター幅を詰めてナロード。また一見ストックとおぼしきリアフェンダーはエンドを絶妙な長さにカット。狙いはあたかも純正のように。ビルダー曰く、「短すぎるとチープに見える」ため、最善の注意が払われている。そしてフロントのスポークに至るまで、メタルパーツはすべて艶消しブラックでパウダーコート。これら徹底した処理がマシンの完成度を高めている。
元々はKAWASAKI Z2をイメージし、YOSHIMURA集合管に似たマフラーを組み合わす予定だったという。革ジャンでなくワークジャケット。ジェットヘルでなくフルフェイス。乗り手のファッションまでイメージしてカスタムするビルダーは稀である。全体のバランスを考慮してその案は変更されたが、Z2から派生したこのスタイリングは、「走り」を意識したものだ。
SUICIDE ATTACK
SAM’Sのデザインに一貫して流れる、隠されたキーワードだ。