ハイマウントされたピーナッツタンクにソロサドル、ハンドルはナイスのミディアムエイプ、そしてジョッキーシフト&ロッカークラッチというセッティングの1980年式FLHのリジッドショベル。このチョッパーの主人は、女性ハーレー乗りの髙田有唯。まさかこのチョッパーのオーナーが女性だと普通は思わないだろう。
「このショベルはアメリカからパーツを取り寄せて父に組んでもらったんです。父は滋賀県でタカダモータースというバイクショップをやっているんですが、子供のころからバイクがそばにある生活で、モトクロスのレースなどにも出ていました。そうそう、母もハーレーに乗っているんですよ。ツインカムのソフテイル。さすがにチョッパーではありませんが(笑)」
そう話す彼女のバイク歴は、19歳でヤマハのYB-1に乗り、スティード400から2003年式FXDのボバーに乗り換え、今から5年ほど前にこのショベルを増車。車好きでもある彼女は1970年式の真っ赤なビートルも所有しているという筋金入りのモーターヘッドである。
「ハーレーに乗るようになってからバイクの友達が増え、その影響で旧車に憧れるようになりました。このショベルは日常の足として使っています。今日も滋賀県の東近江市から東大阪の船場さんまで走ってきました。ロングツーリングにもよく行きますよ。九州までキャンプツーリングに行ったこともあります」
そんな彼女の生業だが、想像の斜め上を行くものであった。地元の東近江市で100人以上の生徒を抱えるピアノ教室を経営している、というのだから驚かされる。4歳からピアノをはじめ、コンクールなどにも参加し、音大を卒業後にピアノ教室を開業。現在もピアノコンクールに参加しつつ、0歳から80歳までの生徒に日々ピアノと歌を教えている。ハーレーとピアノ。しかもショベルのリジッドチョッパーと、職業としてのピアニストという、一見真逆かと思われる組み合わせなのだが、彼女の考えはこうだ。
「地元では古いハーレーに乗っているアクティブな先生のピアノ教室として人気があるんですよ(笑)。キャンセル待ちの生徒さんがいるくらいです。子供のころからバイクとピアノはすぐそばにあったので、私にとってはとても普通の組み合わせなんです。ただ指を怪我しないようには気をつけています。もちろん他の怪我も……。
実は今日履いているジョブマスターは、母がショベルに乗る記念としてプレゼントしてくれたものなんです。オープンプライマリーなので、安全を考えてのことです。足を計測していただきサイズを決めて制作してもらったんですが、履いた瞬間からぴったりで1ミリも痛いところなんてなく、ショベルに乗るときや普段着としても使っています。ウエスコは憧れのブーツだったんですが、ショベルに乗るんだったらウエスコを履きたいとずっと考えていました。デザイン、クオリティ、ステイタス、そして安全性を考えてもすべてが特別で、一生履き続けたいと思っています」