このナックルを見ていると気が引き締まる思いがします
船場代表の岡田学さんにとって、まさに運命とも言えるこの1939年式のEL。学さんが若かりし20代のころ、スティーブ・マックイーンの友人にして彼のスタントを務めたこともあるバド・イーキンズが持つノースハリウッドのガレージで、学さんは船場で取り扱う車両の買い付けの傍ら、メカのアシスタントをやっていた。1977年から78年の話しである。驚くなかれ、そのガレージには1910年代から20年代のアンティークが150台近くもストックされていたという。
1978年のある日、レストアラーのマイク・イーガンが学さんに一台のナックルヘッドの商談をするためバドのガレージにやってきた。ナックルの当時の相場は4000~5000ドル。しかしマイクが提示した金額は相場の倍近くの8500ドルというものだった。当時の為替は1ドル=185円くらいだったらしく、今考えれば破格値であるがバドの助言もあり購入を断念。しかしそれ以来、どこか心に引っかかっていたという思い出深いナックルヘッドが、この1939年式のELなのだ。
そして時は流れ、昨年末にアメリカのコレクターから一通のメールが届き、このナックルヘッドを買わないかというオファーがあったという。ひと目みて、すぐに40年近く前にバドのガレージで見たあのナックルヘッドだと直感し、即決で購入。そして晴れて船場のショールームにやってきたというわけだ。右上のセピア色の写真はマイクがバドのガレージにナックルヘッドの商談にやってきたときのものだ。一番右が学さん、その隣はバドのメカニック、ハーマンで、この写真を撮っているのがマイク、その隣にはバドとスティーブ・マックイーンもいたという。今回のメインカットはこの写真を再現すべく、船場のショールームで撮影したものだ。
「バドのガレージで見た1910年代から20年代のアンティークはアートとしてのモーターサイクルという印象が強かったのですが、この39は実用的に走れる車両だったんです。僕がビンテージのハーレーにどっぷりとハマったのはこのナックルがきっかけでした。
当時の写真を持っていたのはたまたまです。それとこのナックルが特集された1979年発行のサイクルマグ、SUPER CYCLEも持っていたんですが、これも偶然です。大事に保管していたというわけじゃないんですけど、ちょっと探したらいろいろと当時の品が出てきたんです。なんか昔を思い出し、この仕事の原点を戻ったみたいで気が引き締まる思いがします。古い恋人に再会したような感じで気恥ずかしいですが、まずは車検を取って走らせてみたいですね。それが僕の原点ですから」