僕らが乗りたい、かっこいいと思うものは
みんなも欲しいのではないかということ
パンヘッドやショベルヘッドモデルを中心に、旧車だけを扱うショップとして開業した「オーシャンビートル」は、今年で5年目を迎えた。
社長の野崎龍一郎さんは、以前は鋳造業を営む専門家で、屋号はそのときから同じである。
「僕は鋳造で有名だった埼玉・川口が故郷でね。祖父も職人だった。だから血の中にきっと金属が流れているんですよ。少年時代からバイク乗りだったわけじゃないけど、ハーレーに乗るならショベル以前のモデルにしか興味が湧かなくてね。アメリカにも住んでいたことがあるから、帰国のときに自分のと他に数台日本に持ち帰ったんですよ。そうしたらそれに乗りたいって人が現れて、売れちゃった。売った以上メンテナンスもやらなくちゃって勉強して、仲間が増えていってね。それがこのお店をやることになったルーツですよ」
オーシャンビートルの敷地面積はかなり広い。カスタムやメンテナンスをするサービス部門の面積も広いが、ストックするバイクも多く、ユーズドウェアや、最近販売を開始した、古い BELLをモチーフとしたジェットヘルメットや防寒ジーンズの展示スペースもある。しかし、新車を扱うディーラーのような整然としたディスプレイではなく、どこか金属と油の匂いが心地良い、アメリカの片田舎にある、古いモーターショップのようなイメージなのだ。
生み出すカスタムは、基本的には1960年代からのオールドスクール。当時のチョッパーにあった「さまざまなパーツを寄せ集めてクールな1台を創る」という考え方に忠実な方向性を持っている。つまり、出来上がった車両を見ると、まるでそのスタイルのまま本国から輸入してきたような仕上がりなのだ。でも実際は、仕入れた車両をベースにほとんどイチから組み上げて製作する。3人のメカニックは、車両製作とメンテナンス作業で常にフル稼働状態なのである。
「当時のノーマルスタイルは素晴らしいけど、こだわりすぎると乗れなくなっちゃう。僕らは気軽に旧車を楽しんでもらいたいから、輸入した時点ですでにオリジナルとは違う車両でも、息を吹き込んで復活させます。ガレージチョッパーって、そんなジャンルだと思っていますし、そこが遊び心じゃないですか」
ハーレーは飾るものでも愛でるだけのものでもなく、乗るものだ。それはヴィンテージでも新車でも同じ。オーシャンビートルが作り出すハーレーは、旧車ベースでしか表せない独特の躍動感を持っているのである。
【1】元は大型の花屋だったという店舗は天井も高く広大。そこにストックされたチョッパーやヴィンテージモデルが並ぶ。 【2】ヴィンテージモデルは、もちろんストックのまま整備して乗ることも可能だ。レストアせず、時代を感じるのもまた良し。 【3】チーフメカニックの神田秀幸さんはパンショベルが愛車。カスタム製作にスタイル的なこだわりはなく、様々な要望に答える。 【4】中尾浩三さんはメカニックになって3年目。以前は板金塗装が本業だったので、外装の塗装も担当する。都会的なチョッパーが得意。 【5】上村武さんも、ここのメカニックとしては3年目である。クルマのディーラーメカを長くやり、自分らしさを表現したくて現在に至る。
思わず旅に出たくなる
ローカルチョッパー
当時のアメリカが生んだ、無駄な装飾を徹底的に拒むスタイル。でも、その造形にはビルダーの思い入れとポリシーが刻み込まれていることがチョッパーの条件である。それは当時のアメリカという背景のなかでチョッパーのアイデンティティだった。ライダーは、そのチョッパーに乗ることで、作品としての完成を見るのである。
フリーであることを主張するためには、長い旅でも頑丈なタフネスさと旅の相棒として使いやすい装備も必要。当時のチョッパーの特徴であり、それがシッシーバーの装備や大きく段付きとなっているシートでもある。ハンドルバーは小型のプルバックでカンファタブルなライディングスタイルを生み出した。そんな当時のローカルガレージチョッパーとして製作されたこのモデル。エンジンはストックの1200ccで、操作性を高めるためにフットクラッチを選ばずにマウスストラップを使用したハンドクラッチとしているのが特徴である。
シンプルで軽快感抜群のチョッパーという意味で、アーリーショベルのエンジンは抜群のマッチングと言える。チューニングは施さず、ノーマルスペックを守って完全整備されたフィーリングは独特の乗り味だ。ロートンネルのピーナッツタンクにグラデーションを施したオールディーズな塗装。明るさが際立ち独特の雰囲気を醸し出している。1次駆動はオープンプライマリーだが、フットクラッチではなくステップまわりはシンプルである。ハンドクラッチ用マウスストラップは当時の純正アイテム。ヘッドライトが小型で縦の2連であることが、当時のアメリカっぽさだ。スプリンガーフォークは1940年代のWLから移植。最初からメッキされていた。キング&クイーンシートはこの年代のチョッパーを象徴するアイテムである。シッシーバーを利用すれば荷物も積みやすく、長旅が楽しくなる1台なのである。
都会を疾走したい
フリスコスタイル
幅の狭いバーハンドルを高めにセットして、徹底的にスリムなシルエットを強調したフリスコスタイル。その都会的なシルエットは、サンフランシスコで生まれた。アップダウンの多い道はこの街の特徴だが、車高を下げたスタイルでは乗りにくく、クルマの行き交う都会ならではの交通事情も克服するシルエット。それがフリスコスタイルなのだ。そのためのショートマフラーや、アッパーなポジション。ステップの位置はミッドコントロールというわけである。
スプリンガーフォークのリジッドフレームを有するパンヘッドのファーストモデルがベースである。ガソリンタンクは 2.5 ガロンの振り分けで、いかにもハーレーらしいスタイルだ。それをユーザーレベルでこれほどスリムにカスタムしてしまう当時のビルダー。そんな方法論を忠実に再現した1台はカスタムの材料に、現代的なアイテムはいっさい使用せず、できるだけ当時のデッドストック品でモディファイしている。
エンジンは完全にオーバーホールされた 1948 年型のパンヘッド。純正のリンカートキャブの存在が強調された外観だ。ステップは高い位置にセットされ、フリスコスタイル独特のアッパーなライディングフォームを生み出す。ハンドルバーはライザーと一体型のワンオフ。ヘッドライトは 1940 年代シカゴ製のデッドストック品だ。シートもまたベイツのデッドストック。表皮までオリジナルの極めて貴重なアイテムである。こちらもフットクラッチではなく、操作性を優先したハンドクラッチに交換されている。リアホイールのハブは当時のノーマル。リムとスポークは新品を採用した。テールランプはシボレーのもので、なんとステーにエンジンパーツであるコンロッドが使われているところが当時の雰囲気を演出していておもしろい。マフラーはパウコ製。サイレンサー内蔵で、心地良いパルスを奏でる。
名品BELLの500TXをモチーフとしたジェットと
蒸れない防寒ジーンズを発売中
ジェットヘルメットの基礎をつくり、数々の名品を生み出してきた BELL 。その初期モデル 500TX をモチーフとして、さらに被りやすさを追求したヘルメットが発売された。サイズはSからLまでの3種類。ストラップはシングルとダブルの2種類から選べる。カラーはブラックとオレンジとホワイトの3色。価格はダブルストラップが17,850円シングルストラップは16,850円である。その他、ショーティタイプも17,850円で販売されている。
真冬のライディングでもこのジーンズだけでOKという驚異的な防寒性能と普段履きでの通気性を兼ね備えたワンダラーズ、ウインターラン 500XX も好評販売中である。デニムは 1950 年代のリーバイス 501 を細部に亘って復刻。そして裏地にシンサレートとウィンドストッパーを用いて防寒と通気性を高い次元で両立している。履き心地は抜群で素足に履くことができ、通気性も良いことから秋から春まで使用できる。ボタンフライモデルが31,500円、ジップモデルは32,550円である。