取材協力/デュアルワークス エンタープライズ 写真・文/モリヤン 構成/VIRGIN HARLEY.com 編集部
群馬県の高崎市内に拠点を置くナセル。国道17号線からほど近く、関越自動車道からのアクセス良い立地は、訪れる人にとっても便利な場所でカスタムワークを展開するショップである。基本的には、ユーザーからのオーダーがあってからのバイク製作が主な仕事で、いわゆるコンプリートカスタムの製作はしない。しかし、ほとんどのモデルがエボリューション以降のハーレーをベースとして製作されるというナセル独自のスタイルが存在する。それは、極めてシンプルで、どことなく無骨でオールドスタイルとも言えるシルエットだ。それには理由がある。今回は、代表の酒井氏から、最新のライトカスタムをモチーフに、その真意を聞き出してみたい。
2002年にショップをオープンして以来、今まで製作したカスタムハーレーは数多いが、そのほとんどがエボリューションエンジン以降のモデルをベースとしている。現在は、ツインカムモデルとエボリューションモデルがほぼ半分の割合。多くはソフテイルがベースとなっていて、その次はスポーツスター。ダイナがベースの場合もあるが、ツーリングモデルをモチーフとすることは今後の展開である。それがナセルのカスタムなのだ。
──なぜショベル以前の旧車をあまり扱わないのですか?
酒井● 答えは、その信頼性の問題ですね。もちろんきちんとメンテナンスされている旧車は問題なく走りますが、現代車のように扱って維持することは難しいでしょう。 修理できると言っても、純正パーツは少なく旧車らしさを生かしたパーツを使用すればパーツの耐久性は現代車から見れば劣りますし、こまめなメンテナンスが必要です。そこを楽しめるユーザーならまったく問題ないのですが、いつでも安心して乗るためには、ユーザーもそれなりのスキルアップが必要ということです。僕らはカスタムハーレーの裾野をもっと広げてツーリングやカスタムを楽しんでほしいと考えているんですよ。
──エボリューション以降なら、基本的な信頼性が上がっているということですね。
酒井● 実は、エボリューションでもそれまでのウィークポイントを克服した中期型と言われている92年以降からのモデルと96年以降の後期型のモデルをベースに考えていますね。96年以降の後期型はさらに安心できるモデルになっています。
酒井 敏之さん
ナセルのチーフメカニックであり、ショップの代表でもある酒井さんのポリシーは、ネジ一本まで美しさを追求すること。だからこそ信頼性の高いカスタムバイクを製作することができるのだろう。
──ナセルのスタイルとして、カタログにはプライスの付いたカスタムハーレーが掲載されていますが、コンプリートカスタムではないのですか?
酒井● 大まかにベースのシルエットを分けたスタイルの提案として掲載しているので、事前に製作してそのまま販売するコンプリートカスタムとは違います。でもユーザーには参考になると思いますよ。予算とのバランスを考えながら、カスタムのプランを練ることができるはずです。つまりそれがライトカスタムというわけです。
──オリジナルパーツの製作も数多いですね。
酒井● 最初このお店は表向きには車両の製作ではなくカスタムパーツの製造販売をメインに展開していました。ボルトオンで装着できるパーツを数多く製作すれば、大きな改造をしなくても個性的なカスタムを製作しやすくなりますから、それがナセルのスタイルへとなっていくわけです。とてもシンプルな考え方だし、性能の安定化も図れる。ユーザーには長く乗ってもらいたいと思い、生み出された方法なんですよ。
ナセルのカスタムバイクは、ボルト一本まで実に美しいことが評判だ。例えばエボリューションモデルベースでの場合エンジン、ミッションも分解し、消耗品を交換すると同時に、ケース類も塗装し直しアルミカバー類はフルポリッシュしてグレードアップ。まるで新車のような輝きを取り戻した状態で、組み上げられている。気になる部分にはすべて手を入れるので、つまりオーバーホールと同じ意味を持つ。その上で、カスタムを開始するというのが酒井氏のポリシーなのである。
──最新のハーレーをベースにする上で苦労はないのですか?
酒井● 車検時の規制もどんどん厳しくなっていますから、基本的にノーマルマフラーが装着できなくなる改造はやりません。外観の変更は構造変更手続きを取って、必ず合法カスタムを製作しています。最新モデルだと、駆動系の変更やABSの存在等も変更できない部分が増えていますから、しっかりとツボを押さえることは重要ですね。
ノーマルの外装を徹底的に剥ぎ取り、ショップオリジナルパーツを使用しホイールのスポークまでステンレススポークに張替えカスタムを製作する。特例以外エンジンとシャシーは改造をせず純正の安定感を保持する事で基本的にはライトカスタムというのがナセルのベーススタイルなのだ。その先は、フォークやホイールサイズの変更等、大胆なシルエット変更を施すカスタムも数多いのだが、それもすべてボルトオンで装着可能なパーツばかり。つまり、ナセルのカスタムは、ノーマルにも戻すことが可能なカスタムと言うこともできる。製作車両の多くがソフテイルベースなのは、エボリューション以降、ツインカムの時代になっても、その基本設計が変わらないことが大きい。外装を外すと、実にオールドテイストでシンプルなシルエットを持続している車種なのである。
カスタムの製作は、車両の持ち込みでももちろんOKで、様々なプランを用意している。旧車ベースでの製作も受けるが、ショップからの提案はやはり高年式車がベースであり続けるという。安心して長く乗ることができるカスタム製作こそが、このショップ最大の特徴なのだから。
住所/群馬県高崎市上並榎町424-2
電話/027-370-6616
FAX/027-370-6617
営業/火~金10:00~19:00
土・日10:00~18:30
定休/月曜日
>> ショップブログ