船舶用のチェーンを長年創り続けて
培われたノウハウが防犯用に生きている
衣川良介社長はアイディアマンである。強度の高いチェーンを製造するのが本業だが、金属加工のプロとしてさまざまな商品を世に送り出している。バイク用の盗難防止用品はそのなかのひとつで、「かてーな」が世に出たのは、今から 12 年ほど前のこと。
「盗難に困っていたバイクチームからのオーダーで開発したのが最初ですね。とにかく切られにくいことを重要視して作ったら、ものすごく重いものになった。でもそれこそが盗難防止になるわけです。その後も研究を重ねてさまざまなアイテムを世に送り出すきっかけになりました。いろいろな要望に答えないと、良い防犯アイテムにならない。窃盗団も考えますからね。智恵比べみたいなものです」
製作する防犯アイテムは、自宅ガレージ用のヘビーなものから携帯用。チェーンだけではなくU字ロックや折りたたみ式のアイテムなど、画一的な商品だけではない品揃え。しかもサイズ等はオーダーメイドできるという柔軟性も、大きな特徴のひとつなのである。
ライダーにとって無視できない社会問題、それがバイク盗難。特にここ最近、関東・関西などの都心部を中心に被害が拡大している。
「金属加工に携わってきた我々だからこそのノウハウがあります。それが衣川の製品です」と語る衣川製鎖工業・衣川良介社長。
防犯チェーンの「かてーな」もユニークな名前だが、このUチャンプは、まさしくU字ロックのチャンピオンというべきアイテムだ。第一号は、ホンダ車に乗るライダーからのオーダーメイドで、シート下の収納スペースに格納でき、優れた防犯能力が希望という注文だったという。
切断しにくく携帯しやすい。そして使いやすく愛車を傷つけない。利便性の大きいU字ロックではあるが、最近はその利用方法に大きな変化が見られるという。つまり車種によっては自宅用に使用する防犯チェーンが通らない、あるいは取り付けられないため、フレームなどにUチャンプを介して頑丈なチェーンを使用しているという。
このような使い方をするには、ユーザー自身が自分のバイクにもっともふさわしいサイズをチェックする必要がある。カタログ上でさまざまなサイズが用意されているが、このほかにもオーダーメイドでの製作も可能なので、自分のバイク用に特化した防犯アイテムを考えることができるのだ。チェック用に貸し出しもOKとのこと。リアもしくはフロントのホイールに単独でUチャンプを通す従来の使用方法についても、「かてーな!!」と併用することでさらに防犯効果が高まる。そして鍵には、テロ対策品としても知られているイスラエル製マルティロック社製を使用。これもまた、大きく防犯効果を高めることになっているのである。
用途に合わせてさまざまなサイズをラインナップするUチャンプ。素材は錆びに強い特殊ステンレス鋼で、極めて切断しにくい強度を持っている。太さは19mmで、プレートの厚さは10mm。フレーム用の小型のものからフロントホイールやフロントフォーク。幅の広いものならリアホイールにも使用できる。また、単独よりもチェーンと併用することで防犯効果をより強化したい。複数所有して使い分けるのも良いだろう。
最近のハーレーはリアタイヤのサイズが太い車種が増える傾向にあり、フレーム用の小型から、大きなものまでオーダーメイドで製作することができるのは、大きなメリットである。ちなみに、Uチャンプの2倍の強度で製作されている太さ 25mm のスーパーUというアイテムもラインナップされている。もちろんこちらもオーダー可能。自宅ガレージでの使用をお勧めしたい。
【注意点!】
強度を最優先したアイテムで地球ロックを
自宅やガレージでは、とにかく強度優先のアイテムを複数使用することが望ましい。外出先では時間勝負となるため、窃盗団の気持ちを削ぐ効果が重要だが、下調べをし、用意周到に計画を立てて実行するので、これではもう盗みようがないと思わせることが最も重要だ。アンカーが打ち込める環境ならばその設置も効果大。アンカーには、この他に、移動もできる重量 30kg の「ゴロゴロアンカー」というユニークなアイテムもラインナップされているので、そちらを使用するという手段もある。アンカーが打てない賃貸ガレージや駐輪場でも効果の高い防犯アイテムなのだ。
【注意点!】
バイク駐車場と携帯用ロックの併用を
携帯用のアイテムは、強度だけを優先するわけにはいかない。だからこそ、ひとつのアイテムだけではなく、複数の防犯システムで対処することが望ましい。盗難グループは、切断したり壊したりする時間が 10 分を超えるような場合は、諦めてしまうことがほとんどなのだ。だから、面倒な状態になっているほど防犯効果は高いのである。そして、チェーンはなるべく地面から中空になるように使用するとなおいっそう防犯効果は高くなる。その理由は、チェーンを切断するための工具が使いにくくなるからだ。同じアイテムを使用しても、その使い方で防犯効果は大きく変化するのである。
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盗難グループに諦めさせる
これがもっとも重要なことなのだ
盗難事件というものは、自分に降りかからないと実感が湧かないものだ。事件としてメディアが取り上げることも少なく、その実態は謎に包まれたままであることが多い。しかし、常に終わることのない社会問題でもある。大切な愛車を守るには、さまざまな対策を講じるしか方法はない。それは常に自分自身の目を光らせることでもあるし、手入れを怠らないことにも繋がる。コンディションを維持する効果もあるだろう。
衣川社長のモットーは、「夢をつなぐこと、心をつなぐこと、そして世界を結ぶこと」である。それは地球を旅するために作られたハーレーに乗るライダーと同じ意識ではないだろうか。
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