足付き性を確保しつつ乗り心地を高める
日本人に必要な条件を満たした唯一のシート
ハーレーの大きさは、アメリカ人のベーシックな体格を基準に設計されている。それはサスペンションもシートも同じだ。特に最新のモデルは以前よりさらに大柄になって、小柄な日本人に扱いにくい部分も増えた。それゆえローダウンすることが乗りやすさに繋がると思われがちだが、本来の走行フィールを体現するのに足回りの寸法を変更するのは、あまり良いことではないのだ。
シートを薄くするのも足付き性を確保する方法だが、ただ薄くしてしまうと、足の出し方に無理を生じて、かえって足付き性をスポイルすることもある。もちろん乗り心地も悪くなるから大きな問題なのだ。K&Hのシートは、その両面を満足させる製品なのである。
大本 菜津子
身長 160センチ/体重 47キロ
ハーレーダビッドソン ジャパンの会報誌『H.O.G』や各バイク雑誌などで活躍するうら若き女子ライターで、愛称は「なっちゃん」。愛車はリジッドフレーム仕様のトライアンフ TR6 というチョッパーオーナーでもある。「今はいろんなバイクのことを知りたい」と、ロードバイクやオフロードにも興味を示す今日この頃。たまに妙なところでツボにハマるナニワ娘で、業界のマスコットになりつつある?
モリヤン
身長 172センチ/体重 70キロ
ハーレー以外のバイクもさまざま所有するカメラマン&ライター。メカ好きで、バイクやクルマのメンテナンスをほとんど自分でこなす。現在所有するハーレーは 1985 年型のFLHT で、どこにでもバイクで行かないと気が済まないタイプだ。それだけに長距離ランのノウハウにはうるさく、独自の視点でのカスタムを愛車に施している。ツーリングバイクの条件は、「乗りやすく、かつ降りやすい」。
【 2007年式 スポーツスター XL883 】 歴代スポーツスターモデルと比較しても車高が高いスタンダードモデル
着座位置を前方に設定することで
平均的な日本人体型に合わせられる
モデルの身長は160センチで、平均的な日本女性よりほんの少し高い程度。スポーツスターのノーマルシートでは、やはり安心できる足付き性ではない。ライディングポジションとしても、ヒップポイントがかなり後ろに設定してあるので、なおさら地面は遠くなってしまうのだ。その理由は、足だけではなく腕の長さが欧米人とは違うということも大きく影響する。180センチ以上の体格なら、問題ないポジションのはずだ。
K&H シートは、着座位置を少し前方に設定して、足を地面に伸ばす左右の角をそぎ落とす方法で良好な足付き性を確保している。そのことがこの写真からも良く分かるはずだ。
座面は広くスポンジも厚いノーマルシートは、体格さえ合えば長距離ツーリングでも疲れない優秀なシートである。日本人の体格に合わせるには、前方角の厚みを削いで足が下に降ろしやすくする配慮と、ヒップポジションを少し前方に変更すること。今回用いた2タイプのシートについて、中央の Super Low シートⅡはストッパーが前目になっているので、フォワードコントロールモデルや小柄な体型の方向け。そして右側の Super Low シートはストッパーが後ろ側にあるが、足付き性は前者と変わらない。2つの K&H シートを真上から見ると、足を降ろす部分が細身になっているのが良く分かる。
【 2008年式 FLHR ロードキング 】 現行車種のなかでも車高が高い大柄なロードキングの足付きを変える
幅を狭めたコンパクトなシートで
足を真っ直ぐ下ろせるように
最近は、サスペンションのローダウンキットや薄いシートを駆使して、日本の女性ライダーもツーリングモデルを愛用するようになってきた。しかし、闇雲にローダウンだけしてしまうと、浅すぎるバンク角や重いハンドリングという弊害も起きる。そこで、シートの形状を見直すと言う方法で、足付き性を確保させるというのが K&H シートの大きなメリットなのだ。
大きなノーマルシートでは、とてもじゃないがこのバイクを取りまわす気にはなれないだろう。あまりの不安に、本来のヒップポジションより前方に座っているが、もう少し後方ではシートの幅が広すぎて、まったく足が届かなくなってしまうのだ。
ハーレーのなかでも、ツーリングモデルは長距離ランでの乗り心地を徹底的に追及しているので、大柄なシートが標準装備されている。だからそのままでは日本人の体格にマッチしないのは当然なのである。カスタムシートの条件は、乗り心地をスポイルせずに足付き性を確保すること。足を伸ばす部分の肉を左右とも大きく削ぐことで、難しい条件をクリアしているのである。
私のような小柄な女性ライダーにとって、「足付き」はバイクに乗る上でどうしても気になってしまうポイントです。シート交換において、足付きだけを優先してしまうと乗り心地が悪くなったり、またハンドルポジションが遠くなるなど、逆効果を生んでしまう場合もあります。K&H のシートは、そうした気になる問題点と向き合って取り除いてくれているんだ、と感じました。
またがった瞬間にまず驚いたのが、安定した足付きと座り心地。ハンドルやステップまでの距離も大幅に改善されているので、シフトチェンジやブレーキなどの操作性もアップしました。車体の大きいロードキングでも、無理のない自然なライディングポジションを確保できましたよ。シートを換えるだけでこれだけの違いが出るとは、正直思いもしませんでした。また、カラーリングやデザインが豊富なセミオーダーシートは、自分の好みに合わせてカスタマイズできるので、これも嬉しいポイントですね。
ノーマルシートを着用したロードキングは、僕の身長でも少しかかとが浮くぐらいの足付き性だが、実はもっと気になるのがライディング中のヒップポジションだった。相対的にハンドルが遠く、リラックスしたポジションがとれないのである。これが長距離ランになると腰に負担をかけてしまい、腰痛の元になった。前方に座ろうとしても、座面がタンクに向かって立ち上がっていくラインなので、安定したヒップポジションにならないのだ。これは、僕の体格がノーマルのロードキングには合っていないという証明であり、おそらくほとんどの日本人が同じように感じるはずである。
K&H のシートは、その点が大きく改良されている。つまりこれは大柄なアメリカ人には、まったく合わない日本人サイズということだ。足付きに関しては、太ももの内側があたる部分の肉を斜めに落としてあるために、厚みのあるスポンジのままでもべったりと足が付く。そして何よりヒップポジションを前方に移した改善が最高のライディングを約束するのだ。
ほんの数センチの移動と、座る場所の角度がフラットになることで、ハンドルを交換したくなる気持ちは消え失せ、本来のハンドリングや巡航性能を楽しむことができるようになる。
固めのスポンジは、少しハードに乗り込んでコーナリングを楽しむようなライディングにも適していると思う。ソフトなシートではないから、乗り心地は優しくない。しかし積極的にどこでも乗りたいライダーには歓迎されるはずである。長距離は試していないが、スポンジが柔らかすぎる他のシートで好結果を得られたことは今までない。
ハーレーのシートに求められるのは、そのルックスと座り心地。僕のように、何処まででもハーレーで行きたいライダーにとって、日本人の体格を研究しつくしたこのシートは、他のものとは一線を画す存在であると言えるだろう。
日本人が楽しむハーレーには
日本人を知り尽くしたノウハウが必要だ
K&H のシートは、インジェクション製法という一体成型のスポンジを用いていることが特徴だ。これは表皮を張り込む前に完全なシルエットを完成させる独自の方法で、その乗り心地と耐久性、そして型崩れに強いことで定評があるものだ。
シートの開発には、徹底的に長距離を走り込むと言う方法でさまざまな不満を解決させる。一日に500キロ走るテストは日常的に行われているという。ここまでシート開発に熱意を込めているメーカーはそうそういないだろう。それもひとえに、シートづくりへのこだわり、そしてより快適にバイクライフを楽しんでもらいたいという愛情にほかならない。
日本人の体格に合わせたシートづくりがポリシーである K&H。実際に愛用しているというユーザーに聞いてみると、機能美を含め全般的に高い評価であることが伺える。またカスタムという点についてこだわりを持つハーレーオーナーに向けたセミオーダーシステムを取り入れていることも、支持されるポイントなのだろう。より快適なハーレーライフを求めている人にこそ、K&H の製品に注目していただきたい。