VIRGIN HARLEY | ヘルメットは着替える時代だ!ジャムテックジャパン 特集記事&最新情報

取材協力/ジャムテックジャパン 写真・文/モリヤン 構成/VIRGIN-HARLEY編集部
掲載日:2013年7月17日(水)

豊富なデザインと、見事なフィニッシュワーク。ポップなアメリカンテイストが大きな特徴になっている『72jam jethelmet』は、すべて厳しい国内の安全基準(PSC)をパスし、SGマークラベルを取得している。機能性とデザインと価格をバランスさせたヘルメットなのだ。

老舗メーカー アルファレイズのノウハウをすべて投入しているジャムテックジャパンの設備。大手ヘルメットメーカーにもひけを取らないファクトリーから生み出される製品の完成度はもちろん高い。

これは『ヒートグループ社』からデザインオーダーで製作した一例。要望を元に、デザインを考え曲面に合うよう調整し、量産デカールの原版を作成する。丸いヘルメットにうまくフィットするよう整える技術やノウハウは、ジャムテックジャパンならでは。

 

高度な製品クオリティを保つ
製品コンセプトと工場設備

ヘルメットに求められるのは、安全性と機能性、そしてデザインである。安全性に関しては、やはりフルフェイスが一番だが、それはヘルメット単体での考え方。ストリートでの機能を考えると、ただ個体での安全性にこだわりすぎることは、トータルの安全性(精神面や人間性等のファクター)をスポイルするという一面も持っている。

 

ジェットヘルメットは、トータルでの安全性という意味でもっとも優れたヘルメットである。適度な緊張感をライダーに与え、安全運転に導く効果はフルフェイスよりも安全性が高いとも考えられる。しかも、オープンフェイスなので人間性は損なわれないのだ。

 

ジャムテックジャパンがジェットヘルメットにこだわる理由が、まさにこのトータルバランスなのだ。しかもデザインを豊富に展開することで、まるで“Tシャツを着替えるように楽しめるヘルメット”というジャンルを追及しているのである。

 

元々の母体は、アルファレイズと呼ばれる老舗メーカーである。その仕事は、二輪メーカーの試作モデル製作やTVコマーシャル背景の塗装、ヒートグループなど他のヘルメットメーカーの製品のデザイン試作およびOEM製作をしたりと、その技術力は高く評価されている。ヘルメット塗装に関しては、数多くのF1パイロットやGPライダー専用モデルを制作したり、光造形という分野でスピーディな樹脂加工での造形技術を持つことでも有名な企業なのだ。

 

『72ジャムジェットヘルメット』というブランド名は、元々「72種類のデザインワークを目指す」という意味で命名されたものだが、なんと現在はすでに100以上のラインナップとなった。有名ライダーやミュージシャンなどとのコラボモデルもあり、デザインのバリエーションは日本一であることは間違いない。ハイセンスだが、どこか懐かしいイメージも醸し出すこれらのヘルメットの製作ノウハウを、今回は工場での潜入レポートでお届けしよう。

大手メーカーにも負けない! 充実の設備

複雑なデザインワークを量産する
アイディアに満ちあふれた工場設備

塗料の飛散を防止する設備を整えているので、スタッフはマスクや防護服を着用せずに作業に集中できる。

滝のように流れる循環式の水流をバックに、塗装ブースが設置されている。埃をシャットアウトし、空気の流れを制御して、飛散する塗料を吸収する。室内は常にクリーンな状態が保たれ、スタッフはマスクを着用しなくていいという優れた環境なのだ。すべてハンドメイドだが、6個を基準にロット製作されていくヘルメットは、効率良く塗りあげられていく。

 

72 Jam jethelmet 製造工程見学
  • 帽体の準備(マスキング)

    ベース色のシルバーメタリックが塗り上がった帽体に、内側からFRP製のカバーを挿入する。そして、帽体との隙間にマスキングテープを張り、しっかりと固定する。

  • グラフィックのマスキング

    あらかじめ切り出してあるグラフィックを帽体に貼り付ける。これで、グラフィックの部分には塗料が乗らないというわけだ。一枚のシートには、ライン用の切り込みがある。

  • ぼかしを入れる

    マスキングが終わった帽体に、ブラックのペイントでぼかしを入れていく。フリーハンドで流れるようなラインは、マスキング部分と微妙な距離感で描かれていく。

  • 色入れ

    しばらくの自然乾燥を待って、オレンジの塗料をヘルメット全体に吹きつけていく。一度に塗らず、絶妙な間を置きながらの重ね塗り。プロの塗装術を感じる部分である。

  • 色の確認

    塗料の乗りを確認するために、最終段階直前の色見本を取り出して、色合いの確認をする。帽体全体が均一であるか、目視で確認。これで最初の塗装作業が終了する。

  • 温室で乾燥させる

    乾燥は密閉された専用のスペースで行う。温度よりも、使用するタングステンライトの波調でその効率は決定されるという。数時間の乾燥で終了。

  • マスキングはがし

    乾燥を終えた帽体から、張り込んだマスキングを丁寧にはがす。この時、細いラインとなる部分はまだはがさず、この状態で一度オレンジを塗装する。

  • ラインはがし

    しばらくの自然乾燥を待って、次は細いライン部分のマスキングを丁寧にはがす。すると、細いライン部分だけが元色のシルバーとなり、最終段階のベースが完成する。

  • 3度めの上塗り

    最後の塗りはオレンジをサっと吹くだけ。これで細いライン上にも塗料が乗り、3段階のオレンジが表現されるのだ。ベースはシルバーメタリックなので、金属感がある。

  • サンドペーパー磨き

    再度温室で乾燥させた後、サンドペーパーで全体をヤスる。何だかもったいないような気がするものだが、この作業が最後のクリアー塗装の乗りに大きく影響するのだ。

  • クリアー吹き

    仕上げ塗料のクリアーを塗装する際は、スタッフが作業服の上に細かい埃の発散を防止する防護服を着用する。そして、全体にクリアーを塗装。スピーディな作業である。

  • 完成!

    塗料は3層。ベースを含むと4層になっている上にクリアーが乗って、とても深みのある印象に仕上がっている。そのすべてが手作業だから、クオリティが高いのだ。

安全性が高く楽しいヘルメットは
ストリートでの理想の姿だと思う

ヘルメットのデザインは、スタッフ全員で考えるのだという。明るい雰囲気で、のびのびとした環境から生み出されていくのである。

元々ジェットヘルメットは、ジェット機に乗るパイロットのために開発されたヘルメット。それがその後、F1パイロットやGPライダーも使用したが、現在はもっぱらストリート用となった。バイク乗りにとって、もっともトータルバランスが優れたヘルメットは、やはりこのジェットだと僕は思う。

 

安全性とデザインを、着替える感覚で選べるなんて、なんと素晴らしいことなのだろう。リーズナブルな価格設定は、企業努力のたまものでもある。素晴らしいヘルメットがあってこそ、僕らは楽しくバイクに乗ることができるのだ。