HSCは、沼津を拠点に長くハーレーに携わってきたショップである。現在のオーナーである佐々木綱柄(コウヘイ)さんは2代目。父親の憲章さんの時代からハーレーの取り扱いを始め、特にビューエルに関しては日本中のオーナーが注目するスペシャルショップとして、大きな評判になった店である。その内容は、「ラムドーピング」という吸入システムの開発で大きな効果をもたらし、当時のレース部門でも好結果を得ていた。他にも様々なパフォーマンスパーツを製作販売し、その名を全国に轟かせた。
現在のHSCはビューエルだけではなく、ハーレー全般の中古車販売やカスタム、エンジンチューニング、その他、ロードホッパーの取り扱い等、幅広いユーザーニーズに適応したショップへと変貌を遂げている。
1990年代後半から2000年代初頭にかけて大きな盛り上がりを見せた、スポーツスターカップ。サーキットを駆け抜けるハーレーの中で、一際注目されていたのが、HSCから参戦していたビューエルだった。エアークリーナーボックスがまるでジェットエンジンのようにも見える外観は、エンジンの吸入効率を追求した「ラム圧コントロール」というシステムで、その大きな効果から、同社のカスタムバイクにも多く採用された。
ビューエルの取り扱いは、現在でも日本一。メンテナンスは当然ながら、ユーズドビューエルの在庫も常に20台ほどは確保するという、相変わらずの熱の入れようだが、そんなHSCに、最新のダイノマシンが導入された。実は、シャシーダイナモは、スポーツスターカップの全盛期から稼働させていて、当時はもちろんキャブレターのアナログチューニング用機材として、その威力を発揮したものの、さすがに旧型となり、今回はインジェクションチューニングを細かく施すことができる、最新型のリターダー付きシャシーダイナモ「ダイノマシン」を導入したのである。
「元々、ハーレーエンジンのパフォーマンスを向上させることが得意だったショップなので、コンピューターのチューニングもツインテックの導入など、早くから導入していましたが、最新機器の導入で、さらにきめ細かいチューニングが施せるようになりました」
佐々木社長は、元々シャシーダイナモがセッティングされていた場所を大幅に改良し、まったく騒音を外に出さない設備を施した。遮音されたコンテナ内部は、常にフレッシュエアも導入できる構造で、一般道を走行する条件を100パーセント再現できている。温度管理も完璧なので、その試走環境は実走と同等。ゆえに、完璧なセッティングが施せるということなのである。
「チューニングと聞くと、何だかパワーアップだけが本質のように思われがちですが、そうではありません。あくまで新車のハーレーは素材。そのエンジンをユーザー好みに仕上げていく作業がチューニングです。だからストックエンジンのままマフラーやエアークリーナーを交換した人はもちろん、すべてがノーマルのままのエンジンでも、インジェクションチューニングを施すと、乗りやすくなります。つまり、チューニングとは調整という意味が大きく、パワフルなハーレーだけを追い求める方法ではありません。もちろん、パワーアップへの貢献も大きいことは間違いなく、パワフルなエンジンを追求する際も、インジェクションチューニングを施して乗りやすいバイクに仕上げることは重要ですね」
アナログ時代にも様々なチューニングトライを重ねてきたHSCだからこそできる細かいセッティングワークがある。今後はそんなことにも期待して、このショップの活躍に目を離さぬようにしたいものである。
新たに導入されたダイノジェット社のシャシーダイナモ(ダイノマシン)は、リターダー付きの「ダイノジェット250I」という最新型。リターダーとは、走行中の負荷を自由に設定できる装置で、これによって実際の走行状態を完璧に再現することができるようになっている。そのダイノマシンをどのように設置するかということも、チューングを行う際には重要で、エアークリーナーには常にフレッシュなエアーが供給できる環境や、排気を効率良く排出させるシステムなど、様々なノウハウが必要なのだ。そして、HSCにはインジェクションチューニングだけではなく、その他にも快適なハーレーライフを実現するための様々なパーツが用意されている。