HSCは今から35年前の1978年にオープンしたショップ。最初はホンダ店としてスタートを切ったが、その後ハーレーのスポーツスターカップが始まるとハーレーの扱いが増え、独自のアイデアに基づくチューニングアイテムを発表。特にキャブレターセッティングに関しては他にないエンジンへの混合気充填理論を展開し、話題となったショップである。
当時の代表は、現取締役の佐々木綱柄さんのお父さんであり、特にビューエルを取り扱うようになってから、ラムドーピングという独自のシステムを編み出し、サーキットでも活躍した。
ハーレー&ビューエルの正規代理店として、沼津の本店と山梨の支店の2店舗を切り盛りすることになったが、2003年を持ってハーレーディーラーから退き、沼津の1店舗だけの活動とすることを決定。代表を現在の綱柄さんに改めて、再スタートを切った。
現在は、国内に現存するビューエルを取り扱う数少ないショップとして活動するかたわら、ハーレーを中古車として販売し、今までのチューニング実績を生かした高バランスカスタム製作など、業務の幅を広げている。
VH:サーキットを駆け抜ける、ラムドーピングを装備したビューエル。その印象がとにかく強いHSCですが、その他にも電圧を安定させてパワーと燃費を向上させるGP-1RRなど独自の理論でチューニングを手がけてきたHSC。具体的にはどのようなことが変化したのですか。
佐々木社長(以下S):僕の父親は、とにかく効率やバランスを大切にする人でアイデアマンでした。だから独自の考え方でエンジンに混合気を送り込むラムドーピングやキャブドーピングという方法を考えました。それは今でもHSCチューニングメニューには欠かせない分野です。でも当時は内容重視で、外観のカスタムという点ではほとんど興味のないお店だったと思います。
根上店長(以下N):当時の僕は普通の客ですよ。ビューエルが大好きだからここの常連だった。そのうち、どんどん中に引き込まれて、今はなんと店長というわけです。
VH:現在、扱う車種は何ですか。
S:ビューエルはもちろんですが、ハーレー全般とロードホッパーの新車、中古車も扱います。実はロードホッパーは以前も扱っていた時期があったのですが、インジェクション吸気になってから、しばらく中断していたんです。しかし吸気系が改良されたこの夏から、取り扱いを復活しました。試乗車も用意しています。
N:スタッフはハーレー担当、ビューエル担当、ロードホッパー担当と分かれていてメンバー全員がメカニックとして経験豊富なので、ユーザーの方にも安心材料になっているようです。僕はビューエル担当ですが、店長として全員を取りまとめる役目ですね。
VH:以前からの得意なチューニングやカスタムについては、どんな体制になったのでしょう。
S:現代のハーレーユーザーは、以前のようなチューニングを望む人が少ないのは事実です。まずはルックスを変更していくライトカスタムから出発して、カラーリングの変更や、足回りのグレードアップ。ストックよりも高級感を上げたいというお客さんが多くなった。そこは、以前のHSCがニガテとしていた分野でした。しかし、カスタムの楽しさはチューニングだけではない。父から受け継いだチューニングノウハウも大切ですが、現代的なユーザー心理も理解しながら、モディファイの方法を考えなくてはならないので、幅広く対応できるように担当責任者を分けたんです。
N:でも、ただ単にマフラーを変えたいとか注文をしてくるお客さんには、バランスのお話しはさせていただきます。そこがHSCのノウハウなんですから。そして僕は、実際に乗って確かめます。自分で納得できないチューニングやカスタムは人にお勧めできないですから。
VH:インジェクションチューニグに関してはどのような考え方ですか。
S:基本的に扱うのはサンダンスのツインテックのみですね。現在、色々なシステムがたくさん出てきていますが、たくさん扱うより信頼のあるサンダンスが提供するツインテックだけを扱うようにしました。そこに特化してしまえば、膨大なセッティングデータが獲得できて、ますます得意になれるからです。サンダンスの製品は他にもたくさん扱っています。トラックテックサスペンションユニットなどはHSCでも人気で、最近は取り付けられるライダーも多くなりました。
VH:カスタムを幅広く捉えるということは、長くユーザーさんと付き合うということにもなりそうですね。
S:そうなんです。そこで2階のフロアは全部中古車展示場にしました。お気に入りの1台を選んでもらえば、そのまま乗るのもいいですし、チューニングやカスタムの相談にもすぐ対応できるようにしています。
ライトカスタムからフルチューニングまで、懐の深くなった新生HSCは、
今後どのようなアイデアで勝負してくるのだろうか。楽しみでならない。
HSCがダイナベースのカスタムを作るとこうなる。コンセプトは、無国籍ランナバウトとでも言うべきだろうか。ビッグツインハーレーを重たいバイクに見せない、独特のセンスとチューニングノウハウがHSCにはあるのだ。
ベース車両は2004年モデルのFXDXである。現行モデルのラインナップにはないダイナスーパーグライドスポーツは、ダイナ系で最もスポーツ色を打ち出したモデルであり、ノーマルサスペンションにも減衰力調整機能の付いたアジャスタブルユニットが標準装備されていたモデルである。そんなスポーツ系のダイナをベースに贅肉をさらに削ぎ落したカスタムがこの1台ではないだろうか。
小振りなフロントカウルは、このマシンだけにワンオフ製作されたもの。ガソリンタンクはショベル時代のFXEに似たシルエットの汎用品を使用し、全体のシルエットを低く抑えた軽快感の強いスタイリングに仕上げている。
実際の車両重量も軽く仕上がっているはずのカスタムだが、エンジンはあえてストックのまま。特別なチューニングは施さずに、乗りやすさを狙ったある意味ライトスポーツというカテゴリーに抑えた仕様だ。
ビューエルの新車販売が終了した現在でも、オリジナルパーツの販売やリペア、メンテナンスに力を入れるHSC。
ロードホッパーの販売にも積極的で、一般のハーレーユーザーの要望にも細かく答えるという総合ハーレーショップとしての活動を開始した。ツーリングなども企画し、ハーレーライフをより楽しく演出してくれるお店だ。