その歴史と伝統をリスペクトしつつ、驚くようなモデルを毎年輩出しているハーレーダビッドソン。ここで紹介する3モデルは、「これら抜きに、現代のハーレーを語ることはできない」と言っても過言ではないほど、ここ数年で大いに注目を集めるモデルだ。それぞれの特徴と魅力を紹介しよう。
ドドドドドッ……という独特の鼓動感とともにゆったり走り出し、力強いクルージングを楽しめるモーターサイクルをアイデンティティとしてきたハーレーダビッドソン。2015年に日本デビューをはたしたこのストリート750は、そんなハーレー本来の味わいとは対照的に、軽快に街を駆け抜けるためにシャープで小気味良い加速を生み出せる新型の水冷Vツインエンジン「レボリューションX」を搭載した次世代型モデルだ。これだけで、ストリート750がハーレーの新時代を切り開くパイオニア的存在であることが伺えるというもの。
そんな最新エンジンを持ちながら、ボディそのものにはクラシカルな薫りを漂わせているところにハーレーらしさを感じる。このスタイルの起源は1977年にハーレーダビッドソンが世に送り出した唯一無二のカフェレーサーモデル「XLCR」。きらびやかなカラーのモデルが多かった当時には珍しいフルブラックのスタイルが、40年以上のときを超えて最新モデルに投じられたのだ。どんな時代でもチャレンジ精神を忘れないハーレーの伝統があったからこそ生まれたモデルと言えよう。
グラフィックは、ビビッドブラック、ブラックデニム、ファイヤーレッド、スーペリアブルーという単色カラーが揃う。これはハーレーオーナー最大の遊び場である「カスタム」を存分に楽しんでもらうためのもの。ハンドルやシート、ホイール、サスペンションなどのカスタムはもちろん、グラフィックチェンジも自分らしさを演出する手法のひとつ。オールペイントをするもよし、ピンストライプでアクセントを加えるもよし。街中で自分らしさを見せつける一台を手に入れたいあなたにとって、ストリート750はうってつけのブラックキャンバスなのだ。
スタイリッシュなスポーツスタータンクに排気量883ccの空冷45°Vツインエンジン「エボリューション」、フロント19/リア16インチというホイールサイズ、無駄のない流麗なシルエット、それらすべてをバランス良く組み合わせたロー&ロングフォルムと、半世紀以上にわたって受け継がれてきたスポーツスターのスタイリングを継承するモデル、それがこのアイアン883だ。
かつてダークカスタムモデルの先駆けとして2009年にデビューしたアイアンが、ファミリーを牽引するスタンダードモデルとしての役割を与えられた2016年、大幅にバージョンアップをはたした。「アイアンが持つ本来の味わい深さはそのままに、より快適なライディングが楽しめるよう」というハーレー本社の日本人デザイナー ダイス・ナガオ氏により、カッティング部分が鋭利な輝きを放つ9スポークホイールにパフォーマンスアップを狙った前後のハイグレードなサスペンション、アイアンだけに与えられたラウンドエアクリーナー、カスタムカルチャーを漂わせるタック&ロールシートなどが備えられ、最後にアメリカの象徴とも言えるイーグルのグラフィックがタンクに描かれた。
ブラックデニム、オリーブゴールド、チャコールデニムというスタンダードカラーに加え、ブラックボディを一層際立たせるハードキャンディー ゴールドフレークという特別色もラインナップするアイアン。「汚れたままでもカッコよく見えるデザインを目指した。ジーンズでも履くかのような気軽さで楽しんでほしい」(ダイス・ナガオ氏)と、アメリカそのものを深く感じさせるモデルへと高められたアイアン。このマシンを特別な一台へと仕上げるのは、他でもない未来のあなただ。
前後16インチ&ファットタイヤを備えるFLモデルが幅を利かせるソフテイルファミリーにおいて、唯一ロー&ロングのチョッパースタイルを貫くブレイクアウトは、それゆえか全モデルラインナップにおいても高い人気を誇る。
そのスタイリングを見れば、否応なく目を奪われるのも致し方あるまい。全モデル中で2番めの長さを誇る1,710mmというホイールベースは、ハーレーダビッドソンだからこそ実現できる「ロー&ロング」を一層際立ったものにする。加えて、1950年以前のハーレーの姿を再現するリジッド型のソフテイルフレームに、ヘッドライトからリアにかけて流れるようなデザインのシルエット、そして240mmという極太リアタイヤと、そこかしこから個性をにじませる。真一文字のドラッグバーに両足を突き出すかのようなフォワードコントロールステップという組み合わせは、ライディングポジションをよりシビアにしているが、「だからこそのハーレーなのだ」というメッセージがそこに含まれている。ブレイクアウトに求めるべきは、ハーレーダビッドソンというカルチャーに他ならない。
2016年、空冷45°Vツインエンジン「ツインカム」が1,584ccから1,689ccへと排気量アップし、走りそのものもよりパワフルになった。そう、ブレイクアウトは一層操りづらいバイクになったとも言える。だからこそ、乗りこなしたときの爽快感はどのバイクに乗ったときにも得られないもの。日々の疲れを癒してくれる存在? とんでもない、ブレイクアウトはまるで「甘えるな」とでも言っているかのような凶暴さでオーナーを連れ回し、そのパワーで叱咤激励してくれるモデルだと言っておこう。