生まれ変わったツインカムエンジン
プロによるエンジン評価はいかに!?
エボリューションからツインカム88に変わった時ほどの衝撃的な進化を遂げたツインカム96エンジン。排気量は、とうとう過去最大の1584ccに達した。それ以外にも、2006年ダイナモデルから予測されていた「6速化」と「インジェクショ化」も行われている。キャブレターが主流だったハーレーにも、とうとうこの時がきたか。そう思われた読者の方も多いのではないだろうか。ただ、今回の変更が歓迎されているその理由は、単純なインジェクション化にとどまらず、排気量をストロークであげるというハーレー社の心憎い配慮。いかにもハーレーといったトルク感、鼓動などをスポイルしないように…。そんな風にさえ感じられる意図は、ハーレーユーザーとしてやはり興味深い。
掲示板でも多くの意見が交わされているが、ここではプロ、つまりディーラースタッフのツインカム96評価を聞いてみようと思う。この大改革、プロはどう見るのだろうか。今回のエンジン、ミッションの変更点ともに取材を行ってみた。
A. 排気量のアップ 排気量は従来の1449ccから1584ccにアップ。しかもボア(内径)ではなく、ストローク(高さ)があげられている。ストロークアップすることで、独特の鼓動感は残しましょうということだ。パワーアップだけでなく、フィーリングも考慮されてるのがニクイ。ちなみに、ピストンやコンロッドなどが見直され、軽量化されているのにも注目。
B. インジェクションの採用 キャブレターが廃止され、インジェクションに。実はこれ、2006年モデルまでのインジェクションとは異なり、燃焼効率がアップしている。
C. カムシャフトの変更 小さな変更だが、この変更によってカムが軽量化。振動が軽減され、加速性がアップ。
D. 油圧式カム・チェーン・アジャスター 油圧式が採用されたことで、正確なバルブ開閉が可能に。「で、それがどうしたの?」というと、耐久性があがっているのだ。こんなところも手を抜かないのはサスガ。 |
A. 6速トランスミッション こちらも目玉の一つ。2006年ダイナモデルから採用されているヘリカルギアで、ノイズが減っている。高速走行では、従来より低回転で走れる分、かなり快適になっているのだ。シフトタッチが、従来より向上しているのも見逃せない。
B. スターターが新設計! 耐久性、始動性がアップ。この変更にともなって、オルタネーターやレギュレーターの改良が行われている。発電・充電関係のトラブルはこれで、さらに減るだろう。
C. チェーンテンショナー プライマリケースはデザインも一新。密閉性が向上し、オイル漏れの心配がなくなったのが大きな特徴。また、プライマリーチェーンのテンショナーが装備されたことで、原則的にメンテナンスフリーとなったのは、意外にウレシイところ。
D. クラッチが軽量化 06で軽くなったクラッチが、さらに10%近く軽量化された。女性にはうれしいポイントだろう。 |
ソフテイルファミリーのココがスゴい!
一番の注目点は、鼓動感アップでしょう。良い意味でエヴォ以前の昔っぽさが復活したのではないでしょうか。加速などはTC88と比べて格段に速いとは申せませんが、トルクの違いは明らかに体感できるかと。TC88だと、ノッキングするぐらいの回転数で走ってやると感じやすいです。EFI化も悲観する必要はありません。大人しくなったとか、マイルド過ぎるといったことはありません。私自身、乗ってみて「コレだけ走るなら、キャブじゃなくていい」と思ったほど。
ソフテイルファミリーのココが惜しい!
6速化は、日本ではさほど必要なかったかもしれません。ダイナのように運動性能の高いモーターサイクルなら、クイックにシフトチェンジが出来て楽しいですが。ソフテイルの場合はキビキビした走りを求めるよりも、ゆったりと乗ることを求められることが多いので、細かいシフト操作が求められるのはやや煩わしいかも。個人的にはこれで5速に乗ってみたいです。
オススメのソフテイルモデルとは?
FLSTC (ヘリテイジ・ソフテイル・クラシック)ですね。ソフテイルの中で最もロングツーリング志向の強いモデル。TC96になって大きな恩恵を受けているのではないでしょうか。長距離志向が強くなったエンジンとミッションで、荷物満載、2人乗りでもパワー不足を感じることなく快適にツーリングに行けます。
ダイナファミリーのココがスゴい!
なんと言っても、鼓動感のアップでしょう。EVO時代の鼓動とは異なり、じんわりとしたライダーが思わず「ニヤッ」となるような鼓動はかなり好印象です。ラバーマウントなので不愉快な振動は少ないのに、です。もちろん、出力やトルクが増強されていますからダイナ本来のワインディングなどもっと楽しむことができます。ゆっくり走ってもよし、ワインディングを攻めるもよしとダイナの楽しめるシーンが一層増えたといえますね。個人的には、TC96ラインアップの中でもかなりオススメのファミリーです。
ダイナファミリーのココが惜しい!
アメリカの道路事情がベースにあるため、6速を使い切って走れる場所はないのが残念なところですね。ただ、1~5速までの加速がスムーズになっているので、特にダイナモデルのように高速ワインディングを駆け抜ける際には非常に有効です(06モデルとは、シフトタッチはそれほど変わっていません)。
オススメのダイナモデルとは?
FXD (ダイナ・スーパーグライド)です。スポーツスターの軽快さと、TC96の安定感を併せ持つオールマイティなモデル。日本のワインディングなどで、その実力を存分に発揮できると思います。スーパーグライドのシンプルなスタイルは、カスタムをするにもいいですからね。
ツーリングファミリーのココがスゴい!
TC88のキャブレターモデルと比べて、振動が減ってスムーズになった印象があります。ツアラーとしての性格が強調されたと言えます。実際、TC88に比べて、排気量アップしたTC96は同じ5速でもかなり余裕。ツーリングファミリーだと、ロングや高速道路走行が多いかと思いますが、それぞれがかなりラクになっていますよ。6速は”アメリカ仕様”のため使い切るのは難しいですが、6速を使えば100km/hでもかなり低回転で走れます。スムーズとはいえ、鼓動感はしっかりとありますから、気持ちよくロングを走れますよ。
ツーリングファミリーのココが惜しい!
見つけるのが難しいほど、TC96とツーリングファミリーはマッチしていますが。敢えて言うなら、ニュートラルから1速は少し堅くて踏み応えがあります。距離を重ねれば、スムーズになると思いますが。少し気になりました。あとは上の2名が言っている6速。確かに日本では使い切れないと思います。
オススメのツーリングモデルとは?
FLHX(ストリート・グライド)ですね。若々しいスタイリングと、TC96の迫力あるパワーはとても合っているように思います。他のエレクトラグライドよりも重量が軽いのも、それに一役買ってますね。100km/hで走っても6速だと余る感じなので、音楽を聴きながらゆったりと低回転で流すと最高だと思います。
コラム —
スポーツスターは、インジェクション化でどうかわった?
07スポーツスター1200と883の大きな違いは加速感。特に0~40km/hまでの加速感は大きく違います。これは過去モデルからですが、883はアクセルを回した時にワンテンポ遅れてくる感じでした。これがインジェクション化で、更に顕著に感じられるようになってしまいました。1200の方はアクセルを捻ると素直に加速します。ただ最高速の頭打ちはストックでは、あまり変わりません。
ワインディングは、04以降から相変わらずバンク角が少ないので、思いきり攻めたい人には物足りないかもしれません。ただ、低速時におけるトルクの向上により、急なヘアピンなどもスムーズに立ち上がれるようになっています。
遠乗りでは疲れを感じずに走ることができますが、883L、1200Lは遠乗にはキツイかもしれません。前年モデルからの車高ダウンのため、さらに肉薄になったシートはかなりお尻の負担になります。これらのマシンで遠乗りする場合は、シートのカスタムをオススメしたいです。以上のように、更にいろいろなシチュエーションで快適に楽しめるようになったのが’07スポーツスターです。乗る機会があれば、その進化ぶりを是非一度体感して頂きたい魅力があると思います。
取材協力/株式会社バルコムモータース
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