これまでにない斬新なデザイン
ダイナ・ファットボブに注目!!
2008年モデルの販売がついに開始された。例年この時期になるとニューモデルが話題になるが、2008年モデルは従来のニューモデルと気色が違う、斬新なモデルが登場している。1つは「XL1200N ナイトスター」。従来のスポーツスターのスタイルを踏襲しつつ、鮮やかな色使いが美しい。2つ目が今回ご紹介する「FXDF ダイナ・ファットボブ」だ。このモデル、ローライダーに代表されるダイナファミリーのスタイルとは一線を画すモデルとなっている。特徴的なヘッドライトと前後16インチのホイールは、どれもこれまでのダイナファミリーにはなかったモノ。ダイナファミリーにも変革の波が訪れたのか。100年以上の長きに渡り、伝統を守りつつ進化をすすめてきたのがハーレー。しかし停滞は許されない。FXDFをはじめとする2008年のニューモデルからは、新たなハーレー像を作ろうとするハーレーのチャレンジ精神が垣間見える。FXDFというモデルを知ることで、ひょっとすると将来のハーレー像が見えてくるかもしれない。
各部に新デザインのアイテムが装備されている中で、もっとも特徴的なのがデュアルヘッドライトの採用。これによりFXDFのフロントマスクは非常に独創的となっている。他メーカーの車輌ではデュアルヘッドライトを採用するモデルは未来的なデザインのモノが多く、ハーレーの車体にデュアルヘッドライトを装備すると大いに存在感を放つ。車輌の顔とも言えるフロントマスクに、従来のハーレーユーザーからは論議の的になりそうなアイテムを採用したのは英断と言えよう。これまでにないモノに対しては初めは保守的な見方をしがちなのがハーレー乗り。デュアルヘッドライトの評価が落ち着くのにはもうしばらく時間がかかるだろう。次に我々を驚かせたのはフロントに16インチ・130mm、リアに16インチ180mmのタイヤを採用したこと。ワイドグライドという例外はあったが、ダイナと言えばフロント19インチが当たり前、そんな固定観念を見事に打破してくれた。前後16インチだからと言ってスポーツ性に劣るわけではない。ツアラーが走りはじめれば予想以上に軽快に走ることを考えれば、ホイールサイズからスポーツ性を疑うことはできない。フロントブレーキはダブルディスクのため、安心してスポーツライディングを行える点も注目だ。その他、スタイル面で注目なのは、2008年モデルから採用された新デザインのエアクリーナーカバーとFXDFのみが装備するトミーガンマフラー、そしてフルカバードのリアサスペンションの3点が挙げられるだろう。FXDFをどうカスタムしていくのか、はこれからだが、特徴的なパーツをどう活かしていくか、ここがポイントになってくるはずだ。
これまでになかった独創的なモデル、FXDF。一体プロのディーラーマンはFXDFをどう見ているのだろうか。これまでのハーレーの中でのFXDFの位置づけ、カスタムの方向性…発売されたばかりの新モデルについて、東西の経験豊富なディーラースタッフに質問を投げかけてみた。あらゆるハーレーを見てきたプロの目にはFXDFはどのように映っているのだろうか。
ハーレーダビッドソンプラザ伊丹 「ハーレーダビッドソンプラザ伊丹」スタッフ。長年HDディーラーに勤務し、新旧のハーレーに通じる頼れるフロントマン。
住所/兵庫県伊丹市緑ヶ丘1-298 | ハーレーダビッドソン秋田 体格と笑顔が人気の「HD秋田」店長。ほんわかとした雰囲気の中にもハーレーへの深い知識と熱い情熱を隠し持つ。
住所/秋田県秋田市新屋豊町4-17 |
Q.かなり思い切ったモデルですが、初めて見たときの印象は?
吉川●なかなか奇抜なバイクを出したな、と思いましたね(笑)。ホイールサイズからFLを連想しますが、ダイナファミリーですからスポーツ性は高いだろう、と。よく走る小さなFLとも言えるんじゃないでしょうか。
鎌田●個性的なスタイルには驚かされました。ストリートボブ+ファットボーイという印象で、マッチョなモデルですね。ライザーやフォークがブラックなのでワイルドな雰囲気も魅力的です。
Q.お客さんからはどんな声が上がっていますか?
鎌田●期待の声は大きいようです。ファットボーイの「ファット」、ストリートボブの「ボブ」でダブルネームのファクトリーカスタムですから。
Q.カスタムをするなら、どんな提案をしますか?
吉川●フットボードをつけてFLテイストを強くするのも面白そう。前後タイヤサイズやフルカバードのサスペンションに違和感なく納まると思いませんか? あと発売されたばかりでパーツは少ないと思うかもしれませんが、2006年以降のダイナ用シートは取り付け可能です。ノーマルの時点で完成したスタイルのモデルですから、イメージが激変するようなカスタムは…勿体無いと思います。
鎌田●“トミーガン”という愛称がついたマフラーは「ちょいワル」的でカッコいいし、カバードサスもいい感じ。この2つは変えたくないですね。全体的なイメージは崩さず楽しんで欲しいですけれど、ストリートボブのエイプハンドルも似合うかもしれません。あとアメリカではFXDFはフォワードコントロールが標準なので、ポジションに余裕がある人はアメリカ仕様にしてみるのはいかがでしょうか。
Q.どんな人にオススメなモデルでしょう?
吉川●これまではファミリーごとに個性がハッキリしていましたが、FXDFはダイナのスポーツ性とFLの重厚感も楽しめます。これまでFLのスタイルが好きな人はツアラーかソフテイルのFLシリーズしかありませんでしたが、ダイナモデルにもFXDFという選択肢も提案できますね。このモデル、個人的には背の高い女性が似合いそうな気がします。FXDFを颯爽と乗る女性…カッコいいと思いませんか?
鎌田●最初からカスタムされたようなデザインなので、バリュー度も高いと思います。「こんな風にカスタムしたかった!」と思っている方は多いのでは? 個性的なモデルですから「FXDFじゃなきゃ嫌だ!」と、他のモデルと悩まない人も出てくるでしょう。
Q.FXDFを見て「今後ハーレーはどう進化していくのか」何か感じることはありますか?
吉川●ファットボブだけではなく、ナイトスターもこれから出るロッカーなど、他に真似できない独自性の強いモデルが増えてきましたね。従来の伝統的なデザインのモデルも変わらずラインナップにありながら、新しいスタイルのモデルにもチャレンジしている。ハーレーのデザイン部門には勢いを感じます。これからも面白いモデルが登場してきそうですよ。
鎌田●「ハーレーを超えられるのはハーレーだ!」と自ら殻を破るようなチャレンジをしているのを感じます。ナイトロッド、ナイトスターなどファミリーを超えて増えつつある“ナイト”シリーズ。FXDFなどの“ボブ”シリーズはその流れのなかにあるように思えます。一見“ナイト”風だけど趣向が違う“ボブ”スタイル…面白いコンセプトのモデルですね。環境問題などがある中「ハーレーにはこんな楽しみ方もあるんだ!」と上手くお客さんの要望や意見を取り入れてニューモデルを開発してくれているのかな。「次はどんなモデルが」とこれからもワクワクさせてくれそうで楽しみです。
注目すべきはルックスだけではない
走るほど感じるのはスポーツ性の高さ
セルを回すと、身震いするような鼓動とともにFXDFのツインカム96エンジンは始動する。かけた瞬間こそぐっと身構えてしまうものの、アイドリング時のサウンドやフィーリングはジェントルなもの。音量こそ最近の音量基準のため控えめなものの、鼓動感は健在で、体に伝わってくるバイブレーションが心地良い。320kgとカタログ上では重量があるものの、足つき性の良さからか思ったほど重さが感じられない。一度走り出してしまえば1,584ccという大排気量が生み出す圧倒的なトルクで軽ささえ感じさせてくれるだろう。前後16インチへとタイヤサイズが変更になったことで、スポーツ性がどう変化したのか、心配な方も多いだろう。しかし前後16インチからくるライディングフィールは格別で、フロントタイヤが太いモデルにありがちな切れ込んでいく感覚はない。スロットルと体重移動で意のままに楽しめる。街中から速度の乗る高速コーナーまで見事なフットワークで駆け抜けてくれるだろう。FXDFに「走らない」という先入観を持っている人が試乗したならきっと驚くはず。また、太いタイヤによる安定感も抜群で、高速道路でも余裕あるクルージングが味わえる。
ダイナファミリーは優れた運動性能が魅力の一つだが、FXDFは全体的にポテンシャルが1ステージ上がったかのような印象だ。「のんびりと鼓動を感じながら」走るのもいいけれど、力強いツインカム96のトルクを感じてキビキビと走り抜けたい、そんな方にはFXDFは特におすすめできる。鼓動が生み出す心地よさだけでは終わらない、この奥深い楽しさはFXDFならではではないだろうか。個性的なのはルックスだけではない、走りの面においても独自の哲学をファットボブは感じさせてくる。
刺激的なルックスに、インジェクション化されドライバビリティの向上した車体とエンジン。ツインカム96の鼓動と太いトルクの快感はもちろん、一番感心したのは操作系の軽さや使いやすさ。ハーレーといえばルックスやエンジンに目を奪われがちだが、ライディングの快感をライダーに伝達する部分の作り込みはもっと注目されるべきではないだろうか。2008年モデルで新たに登場したFXDFの個性は賛否両論あるだろうが、伝統だけにとらわれないハーレーの挑戦は高く評価したい。各部のこだわった仕上がりに、その気にさせてくれるライディングフィール、ハーレーならではのあのテイスト、すべてが凝縮されてこのFXDFは作り出されている。実際に乗ってみれば、変化したからこその凄さは一目瞭然。これは是非一度体感してみるべきだ。