ハーレーダビッドソンの魅力のひとつにVツインサウンドがある。狭角45度のOHVエンジンが奏でるエキゾーストノートにオーナーは酔いしれ、憧れを抱く者はそのサウンドに胸を弾ませることだろう。ただし、海外製のリプレイスマフラーでは音が大きすぎるため、住宅街では人に迷惑をかけてしまうし、そもそも車検に対応せず非合法である。Vツインらしいサウンドやカスタムルックは楽しみたいが、車検対応でないマフラーは遠慮したい。そんな想いを持っている人は少なくないはずだ。
そこで紹介したいのが、デイトナがリリースする車検対応マフラー。そのフォルムは紛れもなくカスタムシーンで見るハーレーに相応しいもの。デイトナ製であるなら品質も確かなはずで、気になるのはやはりそのサウンド……。一体どんなマフラーなのか、開発を担当した「ハーレーカスタムグループ」の両名、吉川 要さんと巣山淳一郎さんに話を聞き、実際のサウンドやフィーリング、質感を確かめてみた。
歯切れのよい音を奏でながらも
力強く潤沢なトルクを発揮する
―― 車検対応ということは、つまり音を犠牲にしたということであり、ハーレーならではのVツインサウンドは期待できないのでしょうか。
巣山 ● いいえ、そんなことはありません。おっしゃるとおり、ハーレーと言えばまずサウンドが大きな魅力だと思います。ハーレー用マフラーに関しては、その音質と迫力には徹底的にこだわりました。
―― 音質はともかく、厳しい音量・排ガス規制をクリアしているのに、迫力のあるサウンドなんて実現できるのでしょうか。
吉川 ● はい。ハーレーの場合、エンジンを高回転まで回して走るような乗り方はしません。ほとんどのライダーはストップ&ゴーを繰り返しながら、低中回転域を使って走っているはずです。
―― その回転域がもっとも気持ちの良い部分ですからね。
吉川 ● デイトナではまず、その回転域でのサウンドとトルク特性にこだわりました。海外製のマフラーの多くは音が大きすぎますし、アフターファイアも気になります。そしてハーレーで多用する低中速のトルクを犠牲にしてしまい、「乗りづらくなった」という声もよく耳にします。
―― 確かに。
巣山 ● 排気脈動を突き詰めることで図太いトルクを発生させ、鼓動感のあるサウンドが楽しめるよう内部構造もいろいろと試してみました。デイトナが製品化する以上は、まず車検対応が当たり前で、これを念頭に置き、歯切れの良い音を奏でながらも力強く潤沢なトルクを発揮するマフラーを作ろうということになったのです。
吉川 ● もちろん難しかったです。シャーシダイナモによる計測と実走によるテストを何度も繰り返し、ようやく製品化に至ったのですから。
―― 実際、手に取ってみるとクロームメッキがキレイですね。
吉川 ● ハーレーってメッキパーツがよく似合いますし、そこにこだわる人は多いと思います。実際に純正車輌のメッキもかなりクオリティが高いので、我々としてはバフ処理の段階から最高級の仕上がりを目指しています。
長きに渡って続く名門ブランドへのOEM供給
ハーレーとの結びつきは今に始まったことではなかった
―― デイトナとハーレー、その結びつきは深いわけですが、日本のユーザーにはあまり知られていませんよね。
吉川 ● おっしゃるとおりです。およそ40年前の創業当初から長きに渡って、北米の CCI、V-TWIN、DRAG SPECIALITIES、BIKER’S CHOICE など名立たるディストリビューターにハーレー用カスタマイズパーツを企画・開発・販売しており、現在も500を超える品目をハーレーダビッドソンの母国であるアメリカへ提供し続けています。
―― デイトナはもともとハーレー用パーツは得意なところであったけれど、北米向けの商品のほとんどがOEM(相手先ブランド)供給だったために、日本では認知度が低いというわけですね。
巣山 ● はい、日本国内のみなさんには、紹介する機会がありませんでしたからね。
―― 日本でカスタムを楽しんでいる人の中には、もしかしたら「Made in 森町」(森町=デイトナ本社のある町)のパーツを使っているかもしれませんね。
吉川 ● ははは、あり得ますね。
巣山 ● そして昨年、40年目の新たな挑戦として社内に「ハーレーカスタムグループ」を創設しました。日本の交通事情や日本人の体格に合わせた専用パーツを新たに企画・開発・販売していこうという試みです。
[ 本文中敬称略 ]
性能だけでなくバフ処理やクロームメッキの仕上がりなど外観にも細心の注意を払って生産するデイトナのマフラー。深い光沢を放つ。
騒音・排ガス規制などアフターマーケットマフラーが置かれる状況が厳しさを増す中、満足して性能が発揮できるまで幾多の試作を繰り返す。
性能、ルックス、サウンド、徹底的にこだわった結果、3拍子が揃った高い完成度を実現した。
今回のマフラー開発では技術的なところをメインに任された吉川氏。一 切の妥協は認めなかった。
ハーレー乗りにどういうマフラーが求められているのか、その要望を満たすべく参画した巣山氏。
シャーシダイナモによる計測と実走によるテストを繰り返し、デイトナのハーレー用マフラーは作られていく。音、パワー、合法性などすべての条件を満たす。
これで本当に規制値をクリアしているのか
迫力のサウンドは歯切れがよく、低中速トルクも増している
それでは実際に試乗してみよう。まずスラッシュカットを装着したFXDL ダイナ・ローライダーだ。改めて眺めて見るに、クロームメッキが美しさが際立つ。車体側の隠れた場所に、JMCA認定プレートが取り付けられている。近接排気騒音規制、排ガス規制に対応していることを証明するプレートで、オーナーは購入時に同梱される排ガス証明書を車検時に提出することになる。公道を走っているときも安心だし、車検もそのままクリアできるのだから、正々堂々リプレイスマフラーが楽しめるというわけだ。
厳格化された騒音規制は確か、近接94dB / 加速82dB。これで本当に規制値をクリアしているのか……? そんな疑問を抱くほどのボリューム感のあるサウンドに、アクセルがどんどん開いてしまう。低中速のトルクが増しているようで、発進時のクラッチワークに気を使う必要がまったくない。パワフルになったエンジンは扱いやすさをもたらし、Vツインらしい鼓動感をしっかり主張している。
正直なところ、試乗前までは「合法マフラー=静かで味気ない」という思いがあったのだが、それは誤解であったことを思い知らされた。サイレンサーのタイプは、今回試乗したスラッシュカットのほか、ストレートカット、テーパードの3タイプを用意。今後、フルエキゾーストやブラック塗装タイプが出ることも期待したい。なお、今回は動画を収録してきたので、ぜひサウンドを確かめていただきたい。また、マフラーによって対応する型式が違う点も付け加えておきたい。実際に交換を検討するユーザーにこそ知ってもらいたいところなので、気になる方はデイトナのホームページ、または本記事ページの右側および巻末にバナー設置している デイトナ スリップオンマフラー特設ページ にてぜひチェックして欲しい。
マフラーのサウンドを聴くときの注意点として、PCで再生する場合、スピーカーの性能によって低音が再生できません。本来の音質により近いサウンドを聴くために、ヘッドホンを使用することをオススメします。
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インタビュー / 試乗ライダー
バイク雑誌各誌で執筆活動を続けるフリーランス。車両インプレッションはもちろん、社会ネタ、ユーザー取材、旅モノ、用品……と、幅広いジャンルの記事を手がける。モトクロスレースに現役で参戦し続けるハードな一面を持ちつつも、40年前のOHV ツインや超弩級ビッグクルーザー、さらにはイタリアンスクーターも所有する。