ハーレーダビッドソンXL1200X フォーティーエイトの前後16インチ・キャストホイールに装着したバトルクルーズ・エイチゴーマル。迫力あるフロントエンドをより強調する力強いトレッドパターンが見る者を魅了する。
『BATTLAX(バトラックス)』シリーズを中心に、ON/OFFを問わずカテゴリーごとに多彩なモーターサイクル用タイヤをリリースしてきたブリヂストン。そのブリヂストンが、ハーレーダビッドソンを中心としたアメリカンクルーザー専用に満を持して提案する新ブランド「バトルクルーズ」。ユーザーからの要望に耳を傾け、バトラックスシリーズの研究開発で培われたテクノロジーをもとに新開発されている。
まず前後16インチのフォーティーエイトのホイールにセットされたバトルクルーズ・エイチゴーマルをじっくりと眺めてみる。ハーレー乗りとしてはトレッドパターンも大いに気になるところだが、力強いルックスはアメリカンVツインによく似合う。浅く彫り刻まれたダイヤモンドカットがショルダーにあしらわれ、見た目も誇らしげで堂々たるものだ。
重量感のあるはずの車体が軽く感じるほど、ハンドリングに軽快感をもたらす。ソフトな乗り心地ながら剛性もしっかり確保され、踏ん張りの効く足まわりとなっている。まるでサスペンションをアップグレードしたかのようだ。
さぁ、走り出してみよう。ハーレーダビッドソンのラインナップの中では軽快感のあるスポーツスターファミリーといえども、フォーティーエイトの車両重量は252kgとヘビー。重量級クルーザーの走りを支えるには、強くてガッチリとした硬いタイヤがこれまでは求められてきたが、このバトルクルーズ・エイチゴーマルはどうだ。剛性はしっかりと感じられるのだが、乗り心地はソフトで、重いはずの車体が軽く感じるではないか!
吸収性が良く、サスペンションがアップグレードしたような感覚は、ゴムの強度によってではなく、タイヤの構造を見直すことによって実現している。縦バネと横バネを構造面で使い分け、リアでは縦バネを5%ほど下げることで、フラットでスムーズな乗り心地を獲得。横方向の剛性を担う横バネは従来どおりとし、リアタイヤの振動を減らし、乗り心地を飛躍的に向上しているのだ。
ストップ&ゴーを繰り返す市街地走行でもコンフォート性が上がっているのがわかり、車線変更やブレーキングも軽快で鋭い。
より丸みを帯びた新プロファイルによって、軽快なハンドリングをもたらすと同時に耐摩耗性能も大幅に向上。エクセドラ マックスと比較して約2.7倍の摩耗ライフを実現した。また、リアタイヤのロングライフ化が前後タイヤの摩耗バランスを均等化している。
振動が低減しているのは、ミラーのブレが抑制され、後方がしっかり確認できることでもよくわかる。ハンドルグリップから身体に伝わる微振動もマイルドになり、上質な乗り心地をもたらしている。
レーンチェンジやコーナリングで車体がスッと寝ていくのは、前後ともクラウンRを小さくした新形状によるところも大きい。つまりより丸みを帯びたプロファイルが新採用されていて、接地面が従来のエクセドラ マックスより増えている。軽快なハンドリングをもたらすと同時に、耐摩耗性能も大幅に向上し、リアタイヤについてはエクセドラ マックスと比較して約2.7倍の摩耗ライフを実現した。
また、新形状と大重量車に適した高剛性構造に伴い、新コンパウンドをリアに採用したが、グリップバランスを考慮してフロントには既存のコンパウンドを採用している。リアタイヤの長寿命化もあって、摩耗バランスが前後で大きく異ならないこととなり、ユーザーからしてみればじつにありがたいロングライフとなっているのも見逃せない。
ワインディングがますますエキサイティングに。コーナリング性能も高く、「さすがはサーキットで数々の栄光を勝ち取ってきたブリヂストン」と思わず唸ってしまう。ショルダー部まで使ってもしっかりとしたグリップを感じ、車体そのものが持つバンク角が物足りない。
旋回性も素晴らしいの一言に尽きる。コーナーではスッと車体が寝ていき、あっという間にステップ裏のバンクセンサーが路面を擦ってしまう。タイヤ自体は「ショルダーの端までもっと使って欲しい」と言っているかのようにコーナーが得意で、バンク中もそれほどに安定していて絶大なグリップを感じる。バンクしてからは程良くたわみ、路面をしっかり掴んでいることが把握できるから、アクセルを臆せず開けていくことができ、走りのペースが自然と上がっていく。峠道でよく出くわす荒れた路面も難なくこなす吸収性があり、ツーリングでのワインディング区間がよりエキサイティングなものになるだろう。
この旋回力の高さは、じつはタイヤを見て触った瞬間から感じていた。プロファイルが尖っていて見るからに軽快に曲がりそうだし、タイヤを手で触ったときの柔らかさはこれまでのアメリカンクルーザー向けタイヤにはなかったしなやかで弾力性に富んだもの。「これはグリップしそう!!」と、タイヤを履き替えた途端に想像できたが、その直感は間違いではなかった。
旋回性能を大幅に向上するとともに、ハイウェイクルージングでのコンフォート性も高め、本来クルーザーが持つ長所を伸ばしている。ロングライフを達成しつつ、コーナリングでの高い操縦性能と乗り心地を追求。長距離ライディングでの疲労を軽減した。
高速クルージングでの乗り心地の良さも特筆すべきポイントだ。サスペンションでスポイルしきれない路面からの細かな衝撃をタイヤがしっかり吸収し、コンフォート性を大幅に向上している。ノイズも感じられず、乗り心地が上がったことでロングライドでの疲労度を飛躍的に低減。今回のテストライドでも、半日フォーティーエイトで走り回ったが疲れは感じなかった。
ロングライドとハイウェイクルージングを得意とするハーレーダビッドソン。そのラインナップの中でアグレッシブで軽快な走りが魅力のスポーツスターファミリーだが、その持ち味をさらに引き出すことができるタイヤが、このバトルクルーズ・エイチゴーマルと言えよう。また、FLやFX系といったビッグツインユーザーにとっても「ロングライフで、もっとスポーティなタイヤを」と願っていたライダーは少なくない。筆者も自分のエレクトラグライドに履いて、FLH系でのフィーリングを再度チェックしてみたいと思った。