VIRGIN HARLEY | ハーレーダビッドソン 2014年モデル ここから見える未来を語る 特集記事&最新情報

取材協力/ON THE ROAD MAGAZINE  構成/VIRGIN HARLEY.com 編集部
掲載日/2013年11月26日(火)
 
アメリカのホイールカルチャーを軸にしたフリーペーパー「オンザロードマガジン」と初心者のためのハーレーダビッドソン専門ウェブマガジン VIRGIN HARLEY.com。今回、両媒体の編集長同士による対談企画が実現、ハーレーダビッドソン2014年モデルに対する忌憚のない意見と、そこから見える同メーカーの未来像について語り合った。

未来に向けて動き出したハーレーダビッドソン
やはり新型ウルトラのブラッシュアップは特筆モノ

ジャージー(以下 J):今回、僕は日本に先駆けてアメリカで新型ツインクールド ツインカム103エンジンのモデルに乗ってこれたんですが、ハーレーダビッドソン ジャパン(以下HDJ)のメディア向け発表会で初めて乗られたガオさんは、どんな印象でしたか?

ガオニシカワ(以下 G):以前に比べて動きが軽やかになった印象があったね。何年か前、HDJからウルトラを借りたことがあったんだけど、芝公園(当時HDJがあったところ)から都内の渋滞をちょっと走っただけで、「もうイヤだ!」って思ったもんだよ(笑)。

J:以前のモデルで、ですよね。そのときと比べると、変化は大きかった?

G:実感できるほどだったね。今回の新型については、ロングツーリングなどをしたわけじゃないけど、「あれ?こんなに乗りやすいバイクだったっけ?」って思ったぐらい。「これなら乗り換えてもいいかも」ってつい思っちゃったよ(笑)。

J:じゃあ、HDJに予約を入れておきましょうか(笑)。

G:貯金がないからダメだって(笑)。そういうジャージーは、アメリカで長~い距離を走ってきたんでしょ? その感想を聞きたい。

J:一泊二日の日程で、デンバーとビーバークリークという避暑地を往復、距離は合計400マイル以上(約650キロ)を走破しました。特に2日めはアメリカらしいロングストレートはもちろん、山中のワインディングなど、最新モデルのコントロールも存分に味わわせてもらえるメニューでした。

G:で、感想としては?

J:ひとつには、ツインクールドの放熱性の高さですね。以前のウルトラで夏に東京~神戸間を往復したことがあるんですが、夏場であのエンジンの熱さはあり得ないって思いました(笑)。でも、このツインクールドの放熱性は以前と比べても段違いにレベルが上がっている。実際、アメリカを走り続けたわけですが、エンジンの熱さに悩まされるということは皆無でした。

G:なるほど、こればっかりは何百キロも乗ってみないと、実感できないよね。そう聞くと、今度のアメリカ取材のときはツインクールドに乗って走りたいな、って思うよ。

ON THE ROAD MAGAZINE
発行人・編集長

ガオ ニシカワ

同誌の編集長であることはもちろん、イラストレーターやデザイナーとしても活躍中。ハーレーによるアメリカ横断、ルート66走破などの経験をもとに、さまざまな創作活動を行っている。最近、桜花出版よりイラストポストカードブック「ON THE ROAD IN AMERICA」を出版。1~2巻のテーマはルート66。愛車は2000年式 XL1200S。

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編集担当

田中 宏亮

2008年式 スポーツスター XL1200Rを愛車に持つ、通称ジャージー。フルペイントや軽量化など何度かカスタムを繰り返し、現在はその愛車をサーキットに持ち込むなどハーレーライフの幅を広げることに腐心中。一方で、アメリカ取材にてツーリングモデルの魅力に目覚めるなど、ハーレーの世界にどんどんハマっていっている。

「モーターサイクルに特別詳しいわけでもない僕でも、今回のウルトラがグレードアップしたのは体感できた」(ガオ ニシカワ)

J:それと、ガオさんもおっしゃられた軽快なハンドリングですね。帰国後、インストラクターの恩田浩彦さんとお話をしてその仕組みが分かったんですが、今回のウルトラ2台のブランニューはエンジンだけじゃないんです。

G:というと?

J:まず、フレームが構造変更をしている。特にステアリングヘッドの剛性がアップしているんですね。さらにフロントフォークも構造変更がなされ、ハンドリングを左右するフロントまわりが大幅にブラッシュアップされていたんです。

G:それが、この軽快なコントロールを生んでいるんだね。

J:恩田さん曰く、「17インチ フロントタイヤの性能を最大限に引き出してやれるレベルに達した」ということだそうです。さらにブレーキシステムが大幅にレベルアップし、このフロントまわりのブラッシュアップと相まって、このコントロール性能の向上が生まれているんだ、と。

G:僕もスポーツスターに乗っているけど、オンザロードマガジンはハーレー専門のフリーマガジンじゃないから、普段はあんな大きなバイクに乗る機会ってそんなにないんだよね。つまり、僕のライディングテクニックって一般的に見てもせいぜい平均ぐらいだと思うんだよ。そんな僕があのウルトラに乗って「運転しやすい」って思えたってことは、相当なグレードアップだよね。

J:おっしゃるとおりだと思います。

G:また、コントロール性能がアップしたってことは、同時に安全性もアップしたわけだよね。これは、今まさにウルトラを買いたい、買おうと思っている人にとっては朗報なんじゃないかな。

J:ガオさん、的確すぎますよ(笑)。そのとおりですね、“大柄なアメリカ人向けのバイク”だったものが、“小柄な日本人でも操作しやすいバイク”へと進化しているのだと思います。

G:これって我々日本人にとっては嬉しいことだらけなんだけど、米H-D本社にとって、日本のマーケットってどう映っているんだろう。実際に本社へ行って、CEOらに会ってきたというジャージーは、現地でどう感じたの?

J:当然ながら、世界への展開を強めている米H-D本社にとっても無視できないほど巨大で魅力的なマーケットとして見られていると思いますよ、日本は。また本社の関係者が12月のHOTROD CUSTOM SHOWへ毎年視察に訪れるなど、カスタムカルチャーという点においても注目すべき国だと見られているようです。

G:今回の題目『PROJECT RUSHMORE』は、現在のハーレーオーナーたちの声に耳を傾けて、よりよいバイクを提供するため――という意味が含まれているらしいけど、日本人オーナーの声も含まれたのかな。

J:含まれているでしょう。確か一昨年でしたか、本社が極秘に調査員を日本に派遣してリサーチを行ったという話も聞きますし。

G:そうなんだ! あなたはいろんなことを知ってるねぇ(笑)。

J:一応ハーレー専門媒体の担当者ですから(笑)。

G:そういえば、11月上旬にイタリア・ミラノで開催されたEICMAで、新型の水冷ハーレーが発表されたところだよね。ああいうモデルも、アジアへの展開強化の一環なのかな。

「新型水冷レボリューションXモデルの日本上陸が楽しみ。どんなものか、早く見てみたい」(ジャージー)

2013年11月、イタリア・ミラノショーで発表された新型水冷レボリューションXエンジン搭載の「ストリート750」と「ストリート500」。日本導入時期など現時点では未定だが、新しいムーブメントを起こす可能性を大いに秘めている。

J:間違いないでしょう。現時点では“日本への導入は未定”とありますが、インドに工場を持つ新型水冷エンジンのマシンで、しかも小柄な人向けのストリートモデルです、入ってこないわけがない。要は、それがいつなのか、ですよね。

G:どのタイミングで来ると思う?

J:HDJ関係者に聞けば、教えてくれるかもしれませんよ(笑)。まぁあくまで推測の域を出ませんが、早ければ2014年のニューモデルか……。

G:そんなに早いんだ!

J:いや、だから推測の話ですって(笑)。でも、そう遠くないうちに上陸を果たすんじゃないでしょうか。

G:ぶっちゃけて聞いちゃうけどさ。

J:なんでしょう?

G:“ハーレーの水冷化”っていうことについては、あくまで空気感だけど、言葉そのものにポジティブなイメージが持たれていないじゃない?

J:確かに、シャープな動きが魅力の水冷エンジンでは、あのハーレー独特の鼓動感は出せませんからね。Vロッドモデルなどは独自の楽しみ方を持つモデル群ですが、ハーレーオーナーのなかという点で見れば少数派です。それはひとえに、「ハーレーダビッドソンと言えば、あの空冷Vツインエンジンが持つ鼓動感」と多くの方々が考えていらっしゃるからでしょう。決して水冷を否定するわけじゃないですが、ハーレーの楽しみ方の本流はその鼓動感。どうしても相容れない部分はありますよね。

G:でも、今回のツインクールド エンジンに加え、完全に水冷の新型モデルが登場した。このあたり、本社にはどんな意図があるんだろう。

J:まずツインクールド ツインカムについてですが、僕は米H-D社の意地を見たって感動させられました。

G:というと?

J:やはりハーレーダビッドソンと言えば、エンジンの鼓動感に他ならない……これは本社も大いに理解するところだと思います。その一方で、世界の進化に合わせなければいけない企業としての使命感もあったでしょう。そのいずれもを両立させることを命題に提示されたのが、今回のツインクールド ツインカムだと思うんです。言うなれば、ハーレーダビッドソンなりの精一杯の抵抗というところでしょうか。悩み抜いた末に通しきった意地、改めてハーレーダビッドソンはスゴいな、と感じ入りました。

G:なるほど、そう言われると、あのツインクールドに対する見方も変わってくるよね。

J:実際、ユーザー目線で見れば、エンジンの造形や中身をそのままに、プラスアルファを付け加えることで内包する問題をクリアさせたわけです。しかも、付け加えた要素がまったく目立たない仕様で。褒め殺すつもりじゃないですが、その企業努力には感動するばかり。

G:一方で、まったくのゼロから生み出されたと言っていい水冷エンジン レボリューションX搭載のストリート750とストリート500に対しては、どんな印象?

2013年8月のアメリカ取材にて、米ハーレーダビッドソン モーターカンパニーのCEO(最高経営責任者)キース・E・ワンデル氏と。「日本はハーレーダビッドソンにとって重要な意味を持つ国だ」と名言。

今回ブラッシュアップされたウルトラの心臓『ツインクールド ツインカム103エンジン』。110年めの誕生日を迎えたハーレーダビッドソン社の“これからの歴史”を語るうえで重要なキーとなる存在と言える。

J:実際に現車を見てみないことには、なんとも。ただ、ハーレーダビッドソンも新しいステージへと進もうとしているんだな、ということは伺えます。HDJ関係者に聞いたことがあるんですが、ニューモデルって開発から発表まで、大体5~7年ほどかかるそうです。このモデルの背景を見ても、インドに工場を作ったり、マーケティングリサーチをしたりしていることは間違いありませんから、相当以前から動いていたプロジェクトなのでしょう。そう考えると、本社の強い意図を感じずにはいられません。

G:実際に日本に入ってきたら、ファンはどういう反応を示すかな。

J:世界では600ccがひとつの基準ですが、日本の免許制度は400ccが分かれ目になっていますよね。そういう意味では、500ccと750ccという区分は日本ではあまり意味のない分かれ方ではありますが、かつてドゥカティにラインナップされていたモンスター400のように、自動二輪免許でも乗れるモデルが出てくれば、日本でも大きなムーブメントが起こる気がします。

G:確かに、中型免許でハーレーに乗れるようになったら、若い人たちが敏感に反応しそうだよね。このストリート750とストリート500の広報車が出たら、一緒に乗り比べしようよ。

J:いいですね、オンザロードマガジンとバージンハーレーのクロス インプレッションということで!

 

実際にインプレッションして、言うことナシ!と感じたCVO ブレイクアウト。最新モデル徹底研究室でも高評価。

新しいステージへと踏み込んだハーレー
新型水冷モデルもきっと楽しい?

G:今回のニューモデル発表会で、「これならウルトラ欲しい!」って思っちゃったけど、都内で所有するにはハードルが高いよねぇ(笑)。

J:ちょっとした財産でもありますから、どこに置くか、また防犯対策など、いろいろ考慮しなければいけないことは多々ありますよね。

G:まぁ、乗りやすくなって放熱性が高くなったという今回のブラッシュアップは大きなポイントでもあるけどね。ところでジャージーは現行ラインナップで言えば、どのモデルが好き?

J:問答無用でCVO ブレイクアウトですね。

G:あれはカッコいいよね~。

J:ファクトリーチョッパーモデルの極みだと思いますよ。やりすぎていなくて、絶妙のバランス。しかも、デビュー時のメーカー希望小売価格は300万円を切っていたんですから! FXベースであのスタイルにカスタムしようと思ったら、300万円じゃ済みません。今は318万5,000円と値上がりしてしまっていますが、それでもまだ安い。

G:いやいや、300万円超えているのを「安い」って言っちゃうジャージーの金銭感覚が心配になってきたよ(笑)。

J:確かに(笑)。でも、今「現行モデルの中から一台、自分で買いたいと思うものを選べ」と言われたら、CVO ブレイクアウトを選びますね。

G:僕は最近、楽しく高速が走れるモデルが欲しいなぁ、って思うんだよ。

J:荷物が載せられて高速を気持ち良く走れるモデル……FLD スイッチバックなんかどうですか。東京~神戸間を走ったことがありますが、必要にして十分な乗り心地でしたよ。

G:スイッチバックは楽しいよねぇ。ダイナのFLってどうなの?って思ったけど、スイッチバックは日本人体型にベストマッチだし、あれだけ積載能力が高くてキビキビ走ってくれるのなら申し分ないよね。あなたの好きなスポーツスター ファミリーの中では?

J:自分のスポーツスターが一番カッコいいと思っているので、ありません。

G:あ、そうですか(笑)。

J:ローダウン化が進行している現行ラインナップの流れに逆らっていますよ。

G:なんでドヤ顔なのよ(笑)。まぁ、あなたの愛車は目的がハッキリしているからねぇ。

J:でも、ハーレーダビッドソンってスゴいですよ。

G:改まって、どうしたの(笑)。

盛大なパーティとともに110周年を迎えたハーレーダビッドソン。新型モデルの発表など、新たなステージに向かって足を踏み出したわけだが、これからの彼らや、我々ハーレーオーナーを支えるのは、これまで刻まれてきた110年の歴史であるし、“ハーレーダビッドソン”という存在価値が薄れることなど、ない。

ガオ「ところでジャージー、太った?」 ジャ「そうそう、アメリカで4キロ……いや、その話はいらないです(笑)」

対談した場所

AS CRASSICS DINER

住所/東京都目黒区八雲5-9-22

Tel/03-5701-5033

営業/09:00~23:00

定休/火曜

ウェブサイト >>

J:いや、アメリカに行って、本社とかH-Dミュージアムとか見てまわって、ふと気付いたんですよ。ハーレーダビッドソンって、ハーレーダビッドソンしかやっていないんですよね。例えば他メーカーを見てみると、自動車など他に大きな軸を持っている企業がほとんどじゃないですか。でも、ハーレーダビッドソンはハーレーダビッドソンだけなんですよね。

G:確かに、言われてみればそうだよね。かつてAMFに買収されたことがあるけど、自力で自社を買い戻したもんね。

J:そう考えると、モーターサイクルのみで立ち回っているハーレーダビッドソンってすげぇなぁ、と。特にアメリカの本社を見て、その壮大さを感じましたね。

G:今後、ハーレーダビッドソンはどんな道を歩んでいくんだろうね。

J:ガオさんはクルマの世界にも精通していらっしゃるわけですが、見比べてみて何か感じられることってありますか。

G:クルマの世界の変化ってすごく早いんだよね。だから、さっきの水冷化の話題にしても、クルマの世界と比べると、まだ趣味としての楽しみ方が存分に残っていて、これってやっぱりモーターサイクルならではだな、って思う。特にハーレーダビッドソンという点で言えば、アメリカという国に育まれてきた特別な存在だから、楽しみ方もまた特別だよね。

J:スティーブン・タイラー(世界的ロックバンド『エアロスミス』のヴォーカル)も言っていましたしね、「ハーレーダビッドソンはアメリカの魂だ」って。

G:新型レボリューションXモデルも、間違いなくハーレーダビッドソンという存在の歴史の一ページになる。それをどう楽しむかは、乗っている僕らだから、彼らから生み出されたものは良い意味で味わい尽くしたいよね。

J:さすがガオさん、キレイにまとめてくれましたね(笑)。

G:今回は面白い話が聞けて楽しかったです、ありがとう!

J:いえいえ、こちらこそ。またやりましょう!

 

【了】

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