平滑で精密に見えるエンジン内部の金属加工面。しかし、厳密には微細な突起があり、それが摩擦抵抗を招いているのは周知の事実。そんな抵抗要素に化学的反応を起こすことで、金属表面を改質するのがスーパーゾイルだ。ここでは「ゾイル効果」を持つスプレー&グリースに注目しよう。
バイクパーツ用品店やインターネットのオンラインショップでは、その効能を高 らかにうたった様々なケミカルやエンジンオイル添加剤が販売されている。ベースオイルに固形潤滑成分を添加した商品や、ベースオイル自体の性能向上を目的に開発された商品、海外製品には金属表面に直接的に反応=金属表面を溶かして滑らかにし、エンジン性能を短時間に高めようとした商品などもある。まさに多種多彩であり、それぞれの商品に愛用者がいるのも、また事実である。そんな数ある添加剤のなかで、摩擦熱によって形成された金属化合物が金属表面を改質し、そのトリートメント効果が「エンジンが持つ本来の性能を引き出す」という、基本性能の回復を目的に開発されている商品もある。それがまさにスーパーゾイルだ。ピストンやピストンリングが摺動摩擦するシリンダー内壁は、一見すると平滑なように見える。しかし、ミクロレベルで見れば、突起のある凸凹で形成されている。そんな凸凹面に対して発生する摩擦熱によって化学反応を起こし、金属表面に金属化合物を形成させる。そんな表面改質効果によって摺動抵抗を低減し、結果的に滑らかな作動性を得ることができるのがスーパーゾイルなのだ。他のオイル添加剤には見られない、この「金属表面の改質効果」こそが、スーパーゾイル最大の特徴である。
また、耐摩耗性を高めつつ、金属表面をトリートメントすることによって、エンジンオイルに対する負担を減らしている点も見逃せない。金属表面同士が摩擦を繰り返せば当然ながら金属紛が発生し、それが原因でエンジンオイルの汚れが早まってしまう例もある。しかし、金属表面改質効果による滑らか表面の獲得によって、摩擦抵抗が低減。結果的に、エンジンオイルの汚れ速度が低下するというメリットもあるのだ。そんなゾイル効果が認められ、複数のバイクメーカー用品部門では、スーパーゾイルの正規取り扱いを開始している。極めて厳しい検査をクリアできなければ、メーカー推奨用品として認められないのがケミカル商品だ。例えば、塩素系などの有害物質を含有した添加剤は、金属表面を溶かして滑らかにし、短時間で摩擦抵抗を減らせるためレースシーンでは積極的に使われていた時期もあった。しかし、排気ガスとともに有害物質が大気開放されることから、現在では採用例も減ってきているようだ。そんな有害物質を含有した商品が、市販車用推奨ケミカルとしてメーカーに認証されるわけもなく、そのような点でも「ゾイル効果」は確かなものと言えるだろう。そんなスーパーゾイルの金属表面改質成分を含有したケミカル商品が、他にもラインナップされている。スーパーゾイルスプレー、スーパーゾイルチェーンルブ、スーパーゾイルグリースがそれだ。例えば、エンジン組み立て時のアッセンブリーオイルとして利用される機会が多いスーパーゾイルスプレー。この商品は、4サイクルエンジン用スーパーゾイルオイルをスプレー缶に詰めて販売している商品だが、スプレーボトルに充填することで、使い勝手が良いとして好評を得ている。また、焼き付きやダキツキを起こしやすい空冷2サイクルエンジンファンのあいだでは、このスプレーによって出先でのトラブルに対応できたという実例が数多く寄せられているのだ。