さまざまな製品が市場にあふれ、多くのサンメカが興味を寄せるエンジンオイル添加剤。どの製品も手軽な性能向上をアピールするが、それらはどれも同じではない。劇的な性能アップを謳うことなく、しかし15年にわたってユーザーに支持されるスーパーゾイルとは、どんな添加剤なのだろうか。
バイク用品店やインターネットのショッピングサイトを覗くと、実に多種多様なエンジンオイル添加剤がある。それらは時に刺激的なフレーズでみずからの効能をアピールし、多くのユーザーが興味関心を持って接している。そんな中には、とにかく添加剤が大好きという、マニアックなユーザーもいるほどだ。ベーシックなオイル性能をさらに引き上げるべく開発されたオイル添加剤としては、モリブデンやPTFEなどの固体潤滑剤、金属表面に直接反応する塩素系や硫黄系などが知られている。塩素系添加剤については、部品管理が厳密なレース分野では効果があるとされているが、そうした成分が混入したオイルを処分する際にはデリケートな扱いが求められる。そのため、日本国内では塩素系潤滑剤の製造は禁止されている。
オイル添加剤市場で多くのファンを獲得している製品に、パパコーポレーションのスーパーゾイルがある。現行車から旧車、国産外車を問わず、さらにレースユーザーにも愛用者が多いスーパーゾイルは、どのように開発されたのだろうか。その開発のきっかけとなったのは、今から30年以上前に、開発者自らがオイル添加剤で痛い目にあったことがきっかけだった。添加剤事情は当時から混沌としており、製品には素性が明らかでないものや、性能的にも怪しいものも多かったという。そのため、添加剤全般を半信半疑で見る向きも少なくなかった。一方で、的確な製品を開発すれば、市販オイルの性能を確実に向上させられると確信。専門家との協力によって15年前にスーパーゾイルを生み出した。
その開発の狙いは「エンジン性能を長持ちさせる」という1点。元来バイク好き、クルマ好きの開発者だったから、愛車のコンディションを好調に維持できる添加剤が欲しいと思うのは、ある意味必然的な欲求だった。スーパーゾイルが今でもパワーアップを効能に謳わないのは、そうした経緯によるところが大きい。では、エンジン性能を長持ちさせるにはどうするか。どれだけ高性能オイルを使っても、金属表面がダメージを受けていてはエンジンは本領を発揮できない。そこで、耐摩耗性を高めるとともに、金属表面をトリートメントすることを考えた。ピストンやピストンリングが接するシリンダーの表面は、平滑なように見えるが、ミクロレベルで見た際には凹凸で形成されている。それはピストン表面に関しても同様だ。金属表面の凸部分に金属化合物を形成し、それによって金属表面を滑らかにできる成分を作り出したことで、スーパーゾイルは他の添加剤には見られない「金属表面の改質効果」を獲得できたのである。この反応は金属の凸部で化学的に起こるもので、その反応を引き起こすきっかけとなるのは熱と摩擦力である。そして、反応は瞬間的かつ限定的に起こるため、ピストンクリアランスなどへの影響を引き起こすことはないのが特徴である。
元素分析をすれば、どんな元素が含まれているかはある程度わかるし、蛍光分析によって化合物の種類や概略も解析できる。しかし、分析だけでは実際の化合物としてのスーパーゾイルの内容を特定できないため、同じ性能を持つ製品は登場していない。それこそがノウハウであり、いまだにオンリーワンの存在でいられる理由である。さらにはこうした分析によって、一部に噂されているような塩素系でないことも証明されている。ちなみに、今では一般的な呼称として用いられる「金属表面の改質」というフレーズは、スーパーゾイルが最初に提唱したものだ。