ここはジェットニードル(以下、JN)による調整域になりますが、チューニングパーツの中にはJNをその特性に合わせるため、専用品に換えるものが多くあります。この時、交換された専用ニードルはクリップによって高さが調整でき、このクリップ位置を変化させ調整をおこないます。純正ニードルの場合は固定式で調整できませんが、ほとんどの場合はガス量を増やす方向に調整するため、ビスワッシャ-を挿し込んで下駄を履かせれば同じ効果が狙えます。
高さ調整のクリップの段数は、取り扱い説明書に従うか、中間位置から始め最高段と最低段を除く範囲を調整幅とします。どうしても最高または最低段になる場合はガス計量をおこなっているメインジェット(以下、MJ)のサイズ変更を考慮しなければなりません。調整段数は上から数えた段数で下に行く程高く、ガスは濃くなります。
純正ニードルの場合はワッシャ-を入れて調整しますが、1枚が約00.5mmで、下から必要枚数を挿し込んで使います。だいたい2枚で調整可能なクリップの1段分になりますが6枚以上入れて改善されなければMJの再考になるでしょう。
ニードルで調整できる範囲は、使用頻度がもっとも高く、1番フィーリングを感じ易い中速度域です。「あまり飛ばさないがもう少し力強くしたい」と言う人は、前にも書きましたがここの調整だけでも十分でしょう。
では、ここから具体的な症状を見てみましょう。
以上が代表的な症状だと思いますが、ガスが濃くても薄くても同じような症状が出る場合があり、出方もさまざまなので、実際はプラグの焼けなども考慮して考えていかなければなりません。
まず1~5ですが、だいたいガスが濃い時に起こります。
1の場合 | MJの選択が大き過ぎる。 |
2の場合 | MJは合っているが、ニードルの位置が高過ぎる。 |
3の場合 | MJは濃いが、ニードルが下がっているので中速では合っている。 |
4の場合 | チューニングパーツなどできっちりセッティングが出ているけれども、キットの性格上加速重視のため巡航させると濃くなってしまう。 |
5の場合 | 全体的に濃い目で1)と被るのですがセッティングが極端には外れてないので走れてしまう場合があります。 |
また6~10の場合は薄い時の症状です。
6の場合 | MJは小さいのですがニードルが高いので中間で加速は合っています。これが極端に薄い場合はアクセルを開けた瞬間吹き返してエンジンが止まってしまったりもしますがそれが9)と同じです。 |
7、8の場合 | 全体的にガスが薄いことを示します。 |
10の場合 | MJは合っていますがニードルの位置が極端に低い時に起こり易いです。 |
大まかに分けて説明しましたが、前述のとおりガスが濃くても薄くても、同様の症状が出る場合があります。MJのところでも書きましたが、自分の目的を絞り、限られた条件でのベストセッティングを出してしまうやり方もあり、3や6の状態を意図的に作り出す事もできます。その場合はノーマルのMJに準じれば、トラブルも避けられ、あまり飛ばさない方や中間加速がもっとも欲しい場合には有効でしょう。でも余りこう言う事を書くとキャブ屋さんに怒られてしまいますね(笑)。
以上でセッティング時に起こるであろう問題の説明は終了です。CVキャブは簡易で扱い易いキャブレターですから、あまりお金をかけなくても楽しいライディングを実現してくれるのは事実です。ただ、何度も書きますが、作業する度に違った状態が現われて来ますので、容易に答えを出すことができない作業です。時には何度も繰り返さないといけないかもしれませんし、リスクもありますからイタズラ半分では絶対やってはいけません。未熟な作業は危険ですらあります。また、このようなセッティングは部分的な改善に過ぎず、根本的な問題解決には至らないのでオールマイティーではないことも覚えておいてください。
XLH883とFLSTFを所有する。彼のハーレーへの造詣は深い。特にCVキャブレターには、仕組みはもとよりセッティングや最適化まで幅広い知識を持つ。最近は、ブログにてメカニズムを中心に執筆中。