VIRGIN HARLEY |  第2回 CVキャブの魅力CVキャブレター講座

第2回 CVキャブの魅力

  • 掲載日/ 2005年04月25日【CVキャブレター講座】
  • 執筆/ジャイアン
CVキャブレター講座の画像

18年の永きに渡り君臨するCVキャブレター
なぜ、このキャブレターが純正採用され続けるのか?

1988年、ハーレーではスポーツスターに初めてCVキャブレター(以下、CVキャブ)が採用されました。それ以来18年、1部の機種には電子制御のフュ-エルインジェクションが採用されているにも関わらず、このキャブレター(以下、キャブ)が使い続けられているのはなぜでしょう? オイラが知っているその魅力をお話しましょう。

CVキャブレター
その18年の歴史

1988年にスポーツスターは大改良を受けました。それまでのS&Sなどに代表される固定ベンチェリー※1のバタフライ開閉キャブから、可変ベンチェリーの負圧サーボ型キャブ、所謂「CVキャブ」への変更です。

※1 ベンチェリー
キャブ内の空気通路は通過する空気の流速を上げるため中ほどで絞り込まれています。絞り込みによって流速があがる事をベンチェリー効果といい、可変ベンチェリーはその絞り込みの直径を変化させる事を可能にし、状況に対応し易くしています。

当初、CVキャブの採用はライダー達にとっては悪夢のような出来事だと思われていました。「レスポンスが悪い、力が無い、セッティングが変更できない、暖機が長い…」つまりいじれないキャブの代名詞で、つぎつぎに外され社外のキャブに付け替えられていました。しかし今やその評価は一変し、数々のチューニングパーツが存在し、オークションなどでも比較的高額で取引されています。なぜ純正のCVキャブは時が経つにつれ、そのような評価を得ることができたのでしょうか?

CVキャブは国産バイクでは70年代より使用され始め、今ではそのほとんどに採用されているキャブレターです。それだけ多くのバイクに採用されている理由は、「状況や乗り手を選ばず、扱い易く、エンジンにとってやさしい」キャブレターだ、ということでしょう。では、CVキャブのどういった仕組みが、それを可能としているのでしょう?

なぜ適切な空気量が
キャブレター内を流れるのか?

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乗り手がスロットルを開けることによってエンジンにガスを供給する、それがキャブレターの仕組みだと考えがちですが、実は必ずしもそうではありません。確かにCVキャブと同じ可変ベンチェリーを持つスライドバルブキャブ(FCR、HSRなど)などは、通路径を変化させるスロットルバルブがスロットルワイヤーで引きあげられる構造になっているため、スロットルワイヤーでバルブが引き上げられるとガスを供給する仕組みになっています。一方、CVキャブはスロットルワイヤーによって通路内のバタフライ(これもスロットルバルブ)を開閉する仕組みになっています。バタフライが開閉されると通路内の空気の流速が変化し、この時発生する負圧を利用して上下するスライドピストンがあがり、適切なガスを自動的に供給するのです。

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負圧を利用して適切なガスを供給するこの仕組み(これを負圧サーボ型という)では、同じスロットル開度でも走行している状況によってはスライドピストンの上がり方が違い、当然ガスの供給量が違うと言う事が起こります。平坦な高速道路の巡航では走行負荷も大きくないのでキャブ内の流速もそれほど高くなく、したがってスライドピストンもそれほど上がらないので比較的少ないガスで走行できますが、急加速時などの急激な流速の変化が起こった場合はそれに応じてスライドピストンは大きくあがり、より多くのガスを供給します。

つまり極端に言ってしまうと、CVキャブはスロットル開度に関係なく、状況に応じて自動的にガスを供給しているのです。スロットルコントロールは通路内の空気の流量を調整し、その負圧の変化でスライドピストンが上がり状況に応じたガスをエンジンに供給できる非常に頭の良いキャブレターなのです。ただし、スロットル操作に対するレスポンスはスライドバルブキャブに比べるとやはり遅れてしまいます。スライドバルブキャブは自分の思い通りのガスの供給が操作できレスポンスも良いという利点があるので、そこは悩みどころでもあります。

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しかし、ツーリングペースや一般公道ではあらゆる状況に対応しなければならず、状況に応じてガスの供給をおこなうCVキャブは、神経を使わないスロットル操作とイージーな扱い易さを与えてくれます。この点ではライダーに対する負担を軽くしてくれ、かつ熟練をあまり必要としない気軽さがあります。

現在、ハーレーに採用されているCVキャブは、メーカー側が様々な規制に対応しなければならないため、エンジンが本来求める適正な濃さの混合気を作り出しているわけではありません。そのため、CVキャブの部品の交換・追加を行い、セッティングしてあげれば、エンジンの本来の性能を引き出すことができ、多くの人はそれで満足する結果が得られると思います。ちゃんとセッティングされたCVキャブは、実は公道上では他のリプレイスキャブに負けないくらいの実力を見せてくれ、かつイージーで扱い易いキャブレターなのです。それがあなたのハーレーには最初から付いているのです。

※HSR、CVキャブレター撮影協力/広畑日産自動車
※FCR、S&Sキャブレター撮影協力/カチナパーツ

プロフィール
メンテナンス番長 ジャイアン氏

XLH883とFLSTFを所有する。彼のハーレーへの造詣は深い。特にCVキャブレターには、仕組みはもとよりセッティングや最適化まで幅広い知識を持つ。最近は、ブログにてメカニズムを中心に執筆中。

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