VIRGIN HARLEY |  第9回 吸気系の働きなぜから学ぶハーレーメンテ講座

第9回 吸気系の働き

  • 掲載日/ 2006年09月08日【なぜから学ぶハーレーメンテ講座】
  • 執筆/モトスポーツ 近藤 弘光
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クリーンな空気を供給する
それがエアクリーナーの役割

今回ご紹介するのは吸気系、要するにエアクリーナーとキャブレターです。カスタマイズにおいてエアクリーナーやキャブレター交換はメジャーです。しかし、このパーツがどんな役割を持っているのか、よくご存知ない方もいるかもしれません。エアクリーナーとキャブレターがどんな役割を担っているのか、今回はそれをご紹介いたしましょう。

まず、エアクリーナーの紹介から。ハーレーが走るためにはエンジン内部で混合気(空気+ガソリン)が燃焼し、ピストンを上下させて動力を得る必要があります。その混合気を作る際に空気を供給するのがエアクリーナーなのです。エアクリーナーカバーは雨を防ぐという役割を持っているのですが、内部にはさらにフィルターが入っています。空気中には埃やゴミなどが大量に浮遊しており、そのままの空気を供給するとキャブレターやエンジン内部にゴミが混入してしまいます。これでは正常に機能しなくなってしまいますね。エアクリーナーは、そういった水分や埃などを除去した空気を取り込むためにあるのです。カバー形状の好みなど「スタイル」から選ぶのも、車両が求める性能に合っていれば構いませんが、エアクリーナーは製品によって「空気の吸入量」に差があり、交換の際にはマフラーやキャブレター、エンジン仕様などを考慮に入れて選択すべきでしょう。

予断ですが、エアクリーナーには定期的なメンテナンスが必要です。距離を走れば走るほど、エアフィルターに埃が貯まって目が詰まってしまったり、ブリーザーからのオイルの吹き返しでエアフィルターやカバー内部がオイルで汚れたりと、空気の吸入量が低下してしまいます。そのため、カバー内部の清掃や定期的なフィルター交換(洗浄)が必要なのです。ちなみに、純正の紙のエアフィルターは洗浄ができません。1年、もしくは8000kmごとの交換が推奨されています。社外メーカー製のエアクリーナーはフィルターを洗浄し、再利用できるタイプが一般的ですね。

キャブにもメンテは必要
定期的にチェックすべし

次にキャブレターの役割をご説明しましょう。キャブレターの細かな仕様については、このサイトの ジャイアン氏のコラム で詳しく紹介されていますので、そちらもご覧ください。キャブレターの機能は大きくわけると2つあります。

  • ● エアクリーナーで取り込まれたクリーンな空気をガソリンと混ぜ合わせ、霧状にしてエンジンへ供給
  • ● 乗り手のスロットル操作、エンジンの吸入負圧に応じた、適量のガソリンを調整する

「キャブレターのセッティングが合わない」というトラブルはよく耳にしますが、そういう場合は2の調整機能が正しく働いていない、ということになります。メインジェット、スロージェット、ジェットニードルなど、さまざまなパーツを調整して、走行状況に応じたガソリンを供給してやらないと調子よく走れません。ただ、最近のモデルでは、キャブレターやマフラーは排ガス規制に適応した設定になっています。ですから、どちらか一方でも交換してしまうとバランスが崩れ、調子は悪くなります。点火タイミングもそれに応じた設定になっていますから、むやみに手をいれるのは環境的にも考えものですね。

キャブレターもエアクリーナーと同様、距離を重ねてくるとメンテナンスが必要です。キャブレター内部のガソリンが流れる通路は、場所によっては非常に細くなっており、小さなゴミが詰まるだけでもガソリンの流れが滞ってしまいますからです。また、キャブレターにはガソリンタンクから送られてきたガソリンを貯めておく「フロート室」という部屋があり、その内部にあるフロートとフロートバルブは適正なガソリンの供給を行う働きをしています。フロートバルブが磨耗したり、ゴミが付着したりすると、オーバーフローという現象が起きることもあります。オーバーフローになると、ガソリンがキャブレターの外に流れ出してしまい大変危険。昔はフロートバルブが真鍮で出来ていて、中にガソリンが入り込んでしまいオーバーフローを起こしてしまうこともありました。

他にも、キャブレターにはラバー製品が多く使われており、長年の走行でラバー類が劣化し、調子を落としてしまうことがあります。よく言われる「キャブレターのOH(オーバーホール)」とはキャブレターの部品をバラバラにし、そのすべてを洗浄し、再使用できない部品を交換する作業なのです。性能の劣化は徐々に起こってきますので、なかなか調子が落ちていることに気づかない人も多いですけれど、燃費の悪化や走行中に何か気になることがあれば、キャブレターのOHをやるべき時期なのかもしれません。

まだまだあります
注意すべきチェック項目

キャブレターの構成部品ではありませんが、メンテ・交換が必要な吸気系部品は他にもあります。まずはキャブレターとエンジンを繋ぐ、混合気の通路である「マニホールド」です。マニホールドとエンジンの付け根の部分にはラバー製の部品がついており、この部品が劣化すると大気中の空気を吸い込んでしまい(よく言われる“2次エアー”です)、エンジン内部で正常な燃焼が行われなくなります。それほど頻繁に交換する部品ではありませんが、ここのトラブルは非常に多いですから、長く走行している車両の場合は注意した方がいいでしょう。次は2本の「スロットルワイヤー」です。クラッチワイヤーと同じく、こちらも定期的にオイル注油を行わないと、スロットルが徐々に重くなってしまいます。ここのメンテナンス不足で重いスロットルのまま走っているハーレーは多く見受けられますので、こちらも定期的にメンテナンスをしましょう。ただ、スロットルが重くなる原因は潤滑の問題だけではなく、取り回しに問題がある場合も多いので、ご注意ください。

簡単に吸気系の役割についてご紹介してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。外装の触りやすいところに取り付けられているため「エアクリーナーもキャブレターも非常に触りやすい」と思われていますが、勘所を押さえてメンテナンスをしないと、愛車の調子を崩してしまいます。簡単だから、と自己流で触り、お店に持ち込まれる人が意外に多いのです。ご自分で触る方は、各部がどんな役割を担っているのか、そこを理解した上で慎重に触ってください。

プロフィール
近藤 弘光

53歳。1979年に「モトスポーツ」を創業。ショベルヘッドが新車の頃からツインカムが現行の今までハーレー業界の第一線で活躍している。オートバイを愛するが故に規制対応マフラー「ECCTOS」やオリジナルエンジン「U-TWIN」の開発に携わる情熱家でもある。

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