現代のハーレーは毎日整備をしなくても故障はしません。けれど、最新のクルマほどメンテナンスフリーになっているわけでもありません。昔からバイクに乗っているベテランライダーはメンテナンスの勘所を押さえていますが、比較的最近に乗り出したライダーはつい「似て非なる」クルマの整備と比べがちですけれど、基準は全く違います。
掲示板などでよく「…は自分でも出来るでしょうか?」などの質問を見掛けますが、これはもしかすると「簡単だから自分でやってみれば」と不安な気持ちを後押ししてもらいたいのかもしれません。ワタシも店頭で部品をお買いになった方に「これ自分で付けられますか?」とか「オイル交換は自分でできますか?」などと良く聞かれます。しかし、これには全く返答のしようがありません。なにしろドレンボルトの締めすぎによる破損など、これまでたくさんの失敗例を見てきましたから。
まず、オーナーの方に一番お勧めしたいのは始業点検です。タイヤの空気圧、灯火類、エンジンオイルの量の基本的なチェック。これにできれば付け加えたいのがバッテリーのターミナルのネジです。これらを出発前に点検するだけで、出先のトラブルはグンと防げるでしょう。優秀なメカニックはそのバイクのメンテや故障の履歴を把握し、思わぬトラブルも最小限の費用と時間で対処するものです。ユーザー車検が悪いとは言いませんが、日頃の整備データがないと優秀なメカニックも遠回りしてしまいます。プロが行う日々の整備にはトラブルの予防の視点も含まれているのです。「自分でやるメンテナンス」は素晴らしいことではありますが、ただ淡々とオイル交換などの作業を行うのではなく、プロの整備同様、各部のチェック、作業の工程でトラブルの種を見つける、などの視点を持たなければ「整備」ではなくただの「作業」となってしまいます。
こちらのコラムではハーレーの各部のメンテナンスの意味と、その工程を説明していきますが、それは安易に「自分でやるメンテナンス」をお勧めするものではなく、正しいやり方、プロが行う各作業の意味を知っていただきたい、という目的でのコラムで、すべての車種に対してのメンテナンス情報をご紹介するコラムではないことをぜひご了承ください。
53歳。1979年に「モトスポーツ」を創業。ショベルヘッドが新車の頃からツインカムが現行の今までハーレー業界の第一線で活躍している。オートバイを愛するが故に規制対応マフラー「ECCTOS」やオリジナルエンジン「U-TWIN」の開発に携わる情熱家でもある。