カスタムポイントという点において、ハンドルやシートなどと比べると軽視されがちなホイール。しかしホイールが変わると、見た目の印象はもちろん乗り心地まで大きく変わります。ことフロントホイールだけで言っても、チョッパーライクな21インチ、スポーティな走りが楽しめる19インチ、ツアラーテイストあふれる16インチなどなど、楽しみの幅は千差万別。そう、今回紹介するホイール選びは、こうしたスタイリングの変化はもちろん、乗り心地への影響についても詳しく解説するものです。
まずはハーレーのホイール構造について、基本的なところから整理していきましょう。知っておいた方が良い大まかな点を挙げると、以下の3つになります。
車輪のハブとリムを結ぶために放射状に取り付けられる棒のこと。ワイヤー状のタイプである「スポーク」と、ハブとリムを一体化させている「キャスト」といった2つのタイプがある。
車輪の中心に位置する車軸。スムーズな回転を生み出すためのベアリングが車軸の左右に取り付けられている。ハーレーの場合、1999年以前と2000年以降では、ベアリングの形式が異なる。
・1999年以前■ニードル・テーパー・ベアリング使用
・2000年以降■ボール・ベアリング使用
ホイールの外径のことで、タイヤがはまる部分。リムの幅や形状によって装着できるタイヤが決まってくる。
現在までのハーレーに採用されているホイールの形状は、「スポークホイール」、「キャストホイール」、「ディッシュホイール」の3種類に分けられます。
ワイヤー状にスポークが張られたタイプ。スポークには丈夫で適度なやわらかさを持つスチール製のものが使われるのが一般的。クラシカルなルックスを演出するのに最適なホイールデザインで、国産車では36本型が多く用いられている。スポークの本数を増やすといったカスタム手法もあるが、反面ホイールの重量が増してしまうこと、またメンテナンスの手間が多いなどデメリットも。
アルミなどの軽金属合金で一体形成されたタイプで、スポーク以上に剛性が高いのが利点のひとつ。またワイヤースポークに比べると磨きやすく手入れがカンタンなところも魅力で、リムおよびハブと一体型になっていることからワイヤースポークを通す穴がなく、チューブレスタイヤを履けるのでパンク修理もしやすい。デザイン面で個人の好みが分かれてくるかも。
その名のとおり、お皿のようなデザインのタイプ。特徴的にはキャストホイールとほぼ同じだが、ホイールに穴が開いていないため横風を受けたときに走行バランスを崩しかねない点、また重量という点でもデメリットは多い。ただ最大の特徴は、重厚感のあるルックスという見た目のインパクト。また近年のモデル(例:FLSTFBファットボーイ・ロー)のタイプは穴が増えており、改善に努めている。
例えばフロントホイールを16インチから19インチに、また19インチから21インチなど、ホイール径が大きくなることで得られる恩恵は 直進時の安定性が増すこと です。逆に径を小さくすると、ハンドリングがクイックになり、コーナリング時にバランスを取りやすくなること が挙げられます。しかしながら、このようにただ長所・短所があるだけではなく、フロントフォークが立ったり寝たりするなど、車体バランスに小さくない影響が出ます。またホイール変更後の走行フィーリングや車体バランスの変化についても考えを及ばせる必要があるでしょう。リアショックを換えたりネックを寝かしたりする際も同様に車体バランスが変化するわけですから、この点に留意した上でカスタムを考えてみてください。
ここ数年、リアタイヤをワイドかするカスタムが主流となってきています。現行モデルを見てみると、ソフテイルファミリーの中のほとんどが200ミリタイヤで、FXCWCロッカーC は240ミリタイヤを履いています。中には社外パーツを用いて300ミリ(!)というサイズに換える人も。車両を後ろから見たときの迫力は格段にアップしますが、ホイール幅が広くなることでハブの幅も膨らんでしまうため、ベルトドライブをチェーンに換えなければいけないなど、ホイール以外の構成部品を換える必要が発生します。 一般的には、タイヤが太くなるとコーナリング時の安定感が増しますし、路面とタイヤの接地面積が増えるのでブレーキの効きも良くなるでしょう。ただ、それもタイヤの形状や質(パターン)などで異なってきますし、あまりに太すぎるタイヤだと曲がりにくくなってしまうといった弊害を生みます
国産スーパースポーツの歴史に目をやると、エンジン出力の増大にともなってそのパワーを受け止められる幅広いタイヤに進化してきた、という経緯があります。大排気量エンジンを搭載するハーレーともなると、車体の重量も相まってある程度幅のあるタイヤにするべきでしょう。ただこれもバランスの問題になってきますし、ビジュアルを優先して極太タイヤを履かせて楽しむこともカスタムのひとつですから、このあたりは自身の好みで判断されれば良いと思います。
近年では XL883N アイアン に装着されているブラックアウト型のキャストホイールの人気が高まっており、ホイールそのものを同タイプのものに履き替えるケースが見受けられます。そのように、一見するとさほど区別がつきにくいサイズのホイールでも、ファミリーやモデルによって アクスルシャフト の長さが異なってきます。ダイナとスポーツスターという、互換性があるモデル(ファミリー)もありますが(FXDWG ダイナ・ワイドグライド は除く)、ホイール交換時にアクスルシャフトの長さが異なる場合はスペーサーを噛ませるなどの工夫が必要になってきます。
[ハブ]の項目でも説明しましたが、1999年以前と2000年以降では、ハブの中央に内蔵されているホイールベアリングが違います。1999年以前はニードル・テーパー・ベアリングが、そして2000年以降はボール・ベアリングが採用されています。同じファミリーのモデルに装着されているホイールを流用する場合、1999年以前か2000年以降かという年式によるベアリングの違いに気をつけてください。ここを見落とすと、せっかく手に入れたホイールが使用できないという悲劇が起こってしまいます。
ホイールおよびタイヤは、車体とライダーの体を受け止め、地面に接地している重要なポイント。ですからここの形状を換えることで走り方が変わってしまうのは当然のことと言えます。しかし何も知らずにルックス優先で先走ってしまうと、後々後悔してしまうケースもないわけではありません。上記のように解説させていただいたホイールの性質やそれぞれの特徴などを知った上で交換を検討すれば、ある程度許容できる範囲の変化に抑えることだって可能です。最後はオーナーの好みが優先されるわけですが、ぜひこの解説を踏まえてホイール選びをしてみてください。
関西でも老舗のハーレー正規ディーラー店として知られるハーレーダビッドソン姫路で、長年メカニックとしてハーレーに触れてきた経験豊富なサービスフロント。立ち上がって間もない頃のVIRGIN HARLEY.com 編集スタッフもずいぶんお世話になった御仁でもある