「まず、どんなバイクにしたいのかをイメージする。そのイメージに合わせてバランスを整え、美しいバイクに仕上げる。ディテールは、そのバランスを取るための要素のひとつ。だから、取り入れているパーツそのものへの思い入れはない」
神戸のシウンクラフトワークス代表の松村友章氏によるカスタムハーレーは、旧車から最新モデルと車種がどう変わろうとも、この哲学に則って生み出される。確かにハイエンドなカスタムパーツへの憧れは誰もが強く持ってしまうものだが、取り付けた際にそれだけが浮いて見えると、カスタムバイクとしての完成度は著しく下がってしまう。言うなれば”猫に小判”なのだ。
ほぼノーマルの状態で入庫されたファットボーイを、ボバーへとカスタム。松村氏が思い描く理想のボバースタイルに向けて細部を整え、無駄のないアメリカの匂いが漂う一台にまとめられた。
キモとなるのは、足まわりだろう。本来前後16インチのディッシュホイールが備わっているファットボーイだが、これをフロント19/リア16のスポークホイールに変更。タイヤはフロントがDURO、リアがAVON マーク IIという組み合わせに。
「ビンテージスタイルのタイヤはいろいろありますが、今回のボバーについてはこのタイヤしかなかった。タイヤハイトや太さでまったく違うスタイルに変わってしまいますからね。ここが決まったからこそ、思い描いたとおりのボバーにできました」
「パーツは選択肢のひとつ」という変わらぬスタンスゆえ、ディテールを語ることに対しては雄弁ではない松村氏。しかし、つい目が行きがちなディテールから目を離し、改めて全体像に目をやると、惚れ惚れするほど美しい完成度であることに気づかされる。そんな完成されたスタイルから生まれる風合いに、いかに”ハーレーらしさ”を漂わせられるか。シウンのファクトリーから生み出されるハーレーからは、そんな説明不要の雰囲気がにじみ出ている。