このカフェレーサーがお披露目されたのは、2015年12月に開催された『ヨコハマホットロッドカスタムショー』だ。昨今のカスタムシーンを見ている人なら、このバイクを一目見ただけでチェリーズカンパニーのスタイルを連想することだろう。しかしよくよく見てみると、ボディワークこそチェリーズのそれながら、グラフィックや各ディテールのパーツに異なるテイストが盛り込まれていることに気づく。
このマシンをプロデュースしたのは埼玉・川越のバイクペイントカンパニー『TMガレージ』代表の橋本 崇さんで、自身のネットワークを活かしてハーレーのカスタムシーンに関わる一流どころの技術や創造性を取り入れた、アイディアの集合体のようなカフェレーサー・スポーツスターなのだ。
「シンメトリーにしたい」という橋本さんの要望に基づいたチェリーズのボディメイクは、エヴォスポーツの魅力であるナローなフォルムを最大限に活かしたスタイリングにまとめられている。あえてノーマルのそれを前後逆転させたスポーツスタータンクや「ゴースト」と名付けられた埋め込み型テールランプなど、チェリーズ流の解釈によるカフェスタイルが美しく表現されている。
もちろんバイクとしてのバランス取りも抜かりなし。真横からのカットを見ればお分かりいただけるかと思うが、エンジンからリアにかけて真っ直ぐなラインになるようシートカウル下に特別なマウント加工を施している。車高そのものは低くしつつ、カフェとしてのライディングポジションを確保することが狙いだ。これによってバッテリーやオイルタンクをコンパクト化&移設し、空いたスペースをスリム化してワンオフのエキゾーストを左右に通した。シンメトリーという要望どおりのリアエンドが完成したのだ。
45ディグリーズが取り扱うサスペンション「ハイパープロ」を取り入れ、フロント19 / リア18インチのグライドホイールにコンチネンタルタイヤ、シートメーカー・スカンクによるワンオフシート、独モトガジェット製スピードメーター「ヴィンテージ」など、あらゆる部位にハイエンドな要素を取り入れ、しかもそれをバランス良く組み上げている。明確なコンセプトと完成時のビジョンがなければ、こうはフィニッシュしない。
その完成度を高めているのが、全体のペイントワークだ。グラフィックはピンストライパーKID KUSTOM PAINTと橋本さんによる合作で仕上げているが、ブラックアウトしたエンジンやコーティングがかけられたフロントフォークは橋本さんの手によるもの。「ブラックが基調のマシンになったので、統一感を持たせるためにディテールを黒くしてみました」と、プロのペインターとしての矜持を感じさせるカラーリングとなっている。
今までにない独創的なシルエットのカフェレーサーを前に、スポーツスターカスタムの可能性がさらに広がっていくのを実感した。