カスタムに存在意義を見出すモデルながら、実に難易度の高い要求をしてくるストリート750。その理由は、最安値たる85万円という価格にある。車両代金と同じだけ(またはそれ以上)のカスタム費をかけようというオーナーは極めて稀だろうし、かといってコストを抑えるとほとんど何もできない。目安となるカスタム費は大体50万円ほどで、それを超えると人気モデル・フォーティーエイトに届いてしまい、かのモデルと張り合うにはあまりに分が悪い。しかしながら、工賃込みで50万円と見積もっても、数ヶ所をカスタムするだけで終わってしまう……。
ハーレーダビッドソン知立は、わずか50万円という予算内でここまで変えてしまった。ハンドル、シート&カウル、タンク、グラフィックなど、「最低限これだけはなんとかしたい」というプランを実現したのだ。
この予算内でやりくりできた最大の理由は、パーツ選びを見直したことと、充実の自社設備だ。
「一番の目的は、バイクとしての質感を高めることでした。全体的なものはもちろん、特にライディングの際の重要ポイントであるコックピットの質感は高めたかったんです」
と語るのは、H-D知立の山田晃久さんだ。ハーレー専用の高価なパーツではなく比較的安価ながら品質のいい国産系パーツチョイスとし、タンクのエグリなど加工が必要な部分はすべて自社対応とした。ぱっと見ても、グラフィックチェンジだけで予算を多く取ってしまいそうだが、これも自社対応とすることでコストを抑えた。
実はこのカスタム・ストリート750のキモは、車体のシルエットにある。垂れ下がったリアエンドをしっかり持ち上げ、フレームラインをスマートにし、見た目をシャープにしている。ワンオフのシートも、絶妙なくびれを生み出す役割を担っている。ここまで完成度が高まれば、あとはオーナーのイメージ次第でさらなるオリジナリティを加えられるに違いない。
アイディアと技術で、50万円カスタムという夢のプランを実現したH-D知立のストリート750。同モデルカスタムに新たな可能性を示した一台と言えよう。