最後まで天気に恵まれなかった道東を後にして旅も後半。札幌に出て久しぶりに都会の夜を楽しむ。散々呑んだ翌朝はのんびり過ごして、午後からニセコの知り合いの宿へ。一泊して積丹に向かい、20年前に入った食堂を訪ねてみる。おばちゃんが一人でまかなう小さな食堂だ。当時と同じようにおばちゃんが作ってくれたウニ丼は絶品。「また来るね」と、店を出て走り出す。目の前に積丹ブルーの海と真っ青な空。雨の中をずっと走って来たせいか泣けてくるほど目映い蒼だった。自然の中でキャンプして呑む酒は美味い。でも都会の夜の喧噪も嫌いではない。冷たい雨の中、オホーツク海を眺めながら走ることも、そのときしかできない体験。それはそれでリアルな旅だからこその経験だ。そして真っ青な空の下を走ることが素晴らしく感じるわけだ。悪天候と最高の天気、自然の中でキャンプと都会の喧噪、日常の生活と旅の非日常、そして20年という時間。バランスなのかギャップなのか解るわけではないけれど、どんな状況でも楽しめるタフさがないと人生が面白くない、なんてお気楽に考えながら南へ下るのだった。
ツーリングマガジン アウトライダー など二輪誌を中心に雑誌、広告等で活躍中のカメラマン。愛車は 2010年式 FLTRX ロードグライドカスタム。日本の古典芸能やアメリカインディアン等の文化から多大なる影響を受ける。バイクによる旅の写真や水中写真をライフワークとし、日本やアメリカ、ルート66などの風景を自らバイクで走って撮影するスタイル。「職業=旅人なんて書きたいけど、そこまで旅できていない」という。なぜか誌面に顔を出していること多し。