苫小牧から1日で稚内まで走り翌朝は、宗谷丘陵へ。ここから眺める景色を撮りたかったのだが、霧に覆われて何も見えない。諦めて宗谷岬へ降りる。記憶にあるより小綺麗になった最北端。昔は一日中流れていた“宗谷の岬~”という歌は、スイッチを押さないと流れなくなったそうだ。観光地に長居は無用と、オホーツク国道を南下。本降りになってきたので停まる気にもならないまま走り続ける。雨が止んでもガスで景色は広がらない。ふと思いついて横道へ。牧草地の間を抜けるどこまでも続く直線。晴れていればもっと気持ちが良いんだろうけど、なんて文句は口に出さずに走る。白い霧と緑の牧草地の間を黒く濡れたアスファルトが貫く。空が見えないことがさらに現実味を薄くする。数キロ走って単調な色と景色に麻痺した頃、果てしなく見えた直線は終わる。振り返ってみると霧の中に消える一本の道。いったい自分がどこから走って来たのかわからなくなる。そんな体験が出来たってことは、あの天気も面白かったのかもしれない。出来ることなら雲一つない青空の下、もう一度走ってみたいものだが。
ツーリングマガジン アウトライダー など二輪誌を中心に雑誌、広告等で活躍中のカメラマン。愛車は 2010年式 FLTRX ロードグライドカスタム。日本の古典芸能やアメリカインディアン等の文化から多大なる影響を受ける。バイクによる旅の写真や水中写真をライフワークとし、日本やアメリカ、ルート66などの風景を自らバイクで走って撮影するスタイル。「職業=旅人なんて書きたいけど、そこまで旅できていない」という。なぜか誌面に顔を出していること多し。