第1回 写真で表現するバイクの旅
夏は単なる季節ではない。それは心の形なのだ」。そんな言葉がサーフィン映画『エンドレスサマー』の冒頭に出てくる。終わりなき夏を求めて旅をする。カッコ良すぎるだろうと思いながらも、いつかはそんな旅をしてみたいと思っていた 20 代。
夏は単なる季節ではない。それは心の形なのだ」。そんな言葉がサーフィン映画『エンドレスサマー』の冒頭に出てくる。終わりなき夏を求めて旅をする。カッコ良すぎるだろうと思いながらも、いつかはそんな旅をしてみたいと思っていた 20 代。
旅に出ると、気になるのは天気。やっぱり気持ちの良い青空の下を走りたい。クロームのパーツに写り込む青空が最高なのだ。写真はアメリカ、コロラド州。西部から中西部を廻った一人旅の途中。
今年の冬は長かった。終わったと思ったらいきなり夏! ロングライドの季節がやってきた。今年は北海道に行きたい! 九州も行きたい! アメリカも走りたいゾ。どこを走るにしても気持ち良く走りたい。そんなわけで、今回の写真は“気持ち良さ”がテーマ。
先月、東京から松山まで愛車の FLTRX で走っていった。所用を済ませて昼過ぎに東名に乗る。良い感じに晴れていたのに厚木辺りでいきなりの雨。一度止んだのでレインウェアを脱ごうかと思ったら、初めての新東名に入ったところから数メートル先も見えないほどの豪雨に遭遇。
ラスベガスをスタートしたツアーは、ルート66を経由してグランドキャニオンへ向かう。ネバダの熱気は尋常ではない。この日は朝から40℃近い気温。街を出れば少しはマシになるとはいえ、強すぎる日差しと照り返しがライダーを容赦なく責める。
アメリカを走ってみると、ハーレーというバイクがなぜ大排気量の V-Twin エンジンを積み、フレームやサスペンションがベーシックな造りであり続けるのかわかってくる。地平線まで真っ直ぐ伸びてゆくフリーウエイをひたすら走るには、これがベストだからだ。
アメリカにそれほど興味の無い人でも「ハーレー」と「ルート66」という名前は知っているだろう。ルート66はかつてアメリカのメインストリートと呼ばれた道だ。イリノイ州シカゴからカリフォルニアのサンタモニカまで 2400 マイル、8つの州を越える。
今回のアメリカツーリングは、キングマンからヒストリック・ルート66を走りグランドキャニオンのゲートシティ、ウイリアムズで一泊。そして翌朝、このツアーで最初のナショナルパークである世界遺産のグランドキャニオンへ。
初めて北海道を走ったのは 19 の時。80年代半ば、バイクブームの真っ只中。バイク乗りは、夏になると鈴鹿8耐か北海道ツーリングに行くモノと決まっていたくらいの時代。早朝に苫小牧に着いたフェリーを降りて、まず目指したのは最北端の宗谷岬。
スベガスからスタートしたツアーは約500マイルを走り、旅のクライマックスとも言えるモニュメントバレーへ到着した。途中、灼熱の砂漠をフリーウェイで越え、砂嵐や竜巻も体験した。
苫小牧から1日で稚内まで走り翌朝は、宗谷丘陵へ。ここから眺める景色を撮りたかったのだが、霧に覆われて何も見えない。諦めて宗谷岬へ降りる。記憶にあるより小綺麗になった最北端。
オホーツク海沿いに南下、知床でキャンプ。水平線近くの雲が切れて一瞬夕陽が見えた。翌日、知床峠は快晴。羅臼の街を抜け標津から内陸へ。今回再訪したかった場所のひとつ、開陽台を目指す。残念なコトに空には厚い雲。
開陽台へ至る北19号線。真っ直ぐ地平まで伸びる直線道路。前々回 に上げたエサヌカ線もそうだが、北海道には何本もの気持ちの良い直線道路がある。その中でもアップダウンを繰り返しながら丘に消えて行く北19号は、特に気持ちの良い道だ。
最後まで天気に恵まれなかった道東を後にして旅も後半。札幌に出て久しぶりに都会の夜を楽しむ。散々呑んだ翌朝はのんびり過ごして、午後からニセコの知り合いの宿へ。一泊して積丹に向かい、20年前に入った食堂を訪ねてみる。
北海道最後の夜は、日本海を望む丘の上のキャンプ場。テントを張り、飯の支度も終わった頃に空がオレンジに染まり出した。海に沈んでゆく夕陽を眺めながら、カメラ片手に缶ビール。一本空けた頃に水平線の下に太陽は隠れる。
東京から広島、岩国まで約800km。高速を使えば、一日で無理なく走れる距離だ。オレの愛車がロングランに特化したロードグライドだから、というコトもあると思うけど。なぜかアメリカで同じ距離である500マイルを走ろうと思うと、それほど気負いはいらない。
アリゾナからカリフォルニアへ、退屈なフリーウェイを離れて砂漠の中のローカルロードを走る。気持ち良く制限速度を少し越えるぐらいで走って行くと、小さな女の子とタンデムでのんびり走る GL1000 を追い抜いた。
旅をしていると、どうしても夕景を多く撮ってしまう。特にアメリカ西部を旅すると、シャッターを切らずにはいられないような夕陽に遭遇することが多い。乾燥した空気と紫外線の強さの影響なのか、息を飲んでしまうような景色の中に沈んで行く太陽、その後に刻々と変わってゆく空の色。
予定もないのに早起きした朝、寒さが緩んでいる気がしたら暖かなイメージの場所を地図で探す。もっとも、山や標高の高い場所は雪や凍結が怖いのではなから候補に入らない。自ずと往き先は海になる。
広大な牧草地の中、地平線まで真っ直ぐ伸びる道をひたすら走る。対向車と擦れ違ったのはどれくらい前だったのだろう。時間の感覚も距離感も麻痺して、今が何時かとか何日間走ったかなんてことがどうでも良くなってくる。
仕事も兼ねて、片道 400km ほど走ってきた。愛車 FLTRX は、少し高めのウインドシールドにロアーフェアリングを装着し、自分にはヒーテッドジャケットに厚手のオーバーパンツと寒さ対策は万全。爪先が冷えたぐらいで、それほど辛い思いもせずに走ることができた。
3月になると、伊豆では早咲きの桜が咲き誇る。他の地方より一足も二足も早い春だ。ところがニュースを見ると、北海道ではまだ雪が降っていたりする。最西端の八重山諸島では夏日が続き、もう海で泳げたりするのだろう。
三寒四温、一雨ごとに暖かくなる。癒し系より刺激を求める傾向が強い自分だけど、この季節は緩く走りたいともうコトも多い。暖かな日差しの中、海でも見ながらのんびり走るのが良い。そんな気分を味わうために数百km走って知らない街まで行く、なんて旅がいい。
ある年の夏、ミネソタのカナダ国境からニューメキシコのメキシコ国境までひたすら走った。何か意味があったわけではない。ただ国境から国境まで走ってみたら面白いかもしれないと思っただけ。