フリーランスの身としてはタイヘンありがたいことで、5月の連休後半からほとんど毎日ずっとロケや取材があり、休みどころかこういった原稿を書く時間さえない。ようやく月刊誌の締め切りが迫りロケがなくなると、今度はパソコンの前に張り付く時期が到来。キーボードを叩き、取材してきたことをチマチマと書き連ねるのである。
バイク雑誌に寄稿するのが生業だから当たり前だが、今月もずいぶんといろいろなオートバイに乗り、そして走った。泊まりでのロケも含め、毎日 100~500km くらい走ったと思うから、結構なバイク野郎だったわけだ。もちろんハーレーにも乗ったし、カブのような小排気量モデルのインプレも某二輪総合誌の仕事でやらせてもらったから、排気量もカテゴリーもさまざま。某ツーリング誌では食べ物のレポートページもあるから1日に6食いただいたり、胃袋にも負担がかかったりする。
たまにはこんなこともある。雑誌 VIRGIN-HARLEY の看板娘 古澤 恵さんを後部シートに乗せて走行しているシーンを撮影。
それぞれの媒体で、違うカメラマンと仕事をするわけだが、雑誌 VIRGIN-HARLEY のロケや取材ではメインカメラマンの磯部孝夫さんとの「タカオ・コンビ」となる。デイトナバイクウィークを取材したときは、アメリカのモーテルで1週間ほど寝食をともにし、お互いに嫌というほど時間を共有したが、いま思えばじつに楽しく、充実した取材旅行であったと思う。
ロケのときは磯部さんを後部座席に乗せることがとても多い。迫力、そしてライヴ感のある作品の数々は HOT BIKE JAPAN やクラブマン誌 (現在休刊中) などでもお馴染みだが、そんな写真の一部、とくにバイクが走っているシーンなどは誰かの運転するオートバイのリアシートから撮られているのがほとんどである。ロケ中は「白髪のオッサンを後ろに乗せて鬱陶しいなぁ」と思ったりすることもあるものの、あの素晴らしい写真を撮る磯部さんの力になれていると思うと、まぁ我慢ができる。磯部さんも後ろに乗る相手を選んでいるようで、乗りたくない人もいるというから、そういう意味では認めてもらっているようで嬉しかったりもする。
【左】リアシートから撮影した磯部さんの写真。古澤 恵さんが運転する FLSTSE3 CVO ソフテイル コンバーチブル に接触しそうなほど接近して撮影した。【右】ライダー目線の写真もリアシートからファインダーを覗き込んで撮影している。磯部さんならではのライヴ感のある写真だと思う。
でも、磯部さんの後部シートへの乗り方が気に入らなくて文句を言ったりすることもある。磯部さんは片足をステップボードに乗せてから、全体重をその片足にかけてリアシートを跨ぐようにして座るから、車体を支えているボクとしては片側に思いきり荷重がかかり、よろけそうになるのを必死で堪えなければならない。「磯部さん、何回も言っていますけど、ステップにいきなり片足を乗っけないで、後部シートをまず跨いで座ってくださいよ。ステップに片足を乗せて全体重をかけられると、バイクごとひっくり返っちゃうよ」って語気を強めると、そのあとの撮影がチョットだけ険悪なムードになったりするのである。
普段はツーリングモデルのトップケース付きモデルでタンデムするが、先日は FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシック だった。
ボクは普段からエレクトラグライドに乗り、その FLHTC の後部座席にはゴージャスなバックレストがついているが、考えてみると、そこに座ったのは磯部さんがほとんど。カミさんも小学2年生の息子も「バイクなんか乗らない」といい、リアシートには乗ったことがないのである。なのに、なんでエレクトラグライドなんかに乗っているんだろう、オレ……。思い返せば、数人の友だちを少しだけ乗せたことがあるが、99パーセントは磯部さん。あぁ、なんと虚しいことか。今月は2人でタンデムし、アクアラインを渡ったのだった。
バイク雑誌各誌で執筆活動を続けるフリーランス。車両インプレッションはもちろん、社会ネタ、ユーザー取材、旅モノ、用品……と、幅広いジャンルの記事を手がける。モトクロスレースに現役で参戦し続けるハードな一面を持ちつつも、40年前のOHV ツインや超ド級ビッグクルーザー、さらにはイタリアンスクーターも所有する。