前回の原稿を改めて見直してみたら、冒頭でこれまでに履いたタイヤは6ブランド10セットと書いているのに、私的ランキングを7位から発表しておりました。すみません。これは大間違いです。純正のダンロップD401を7→6位に、メッツラー・マラソンME880を6→5位に、ブリヂストンBT-45Vを5→4位に訂正いたします。そしてこれらに続いて、以下、上位の3ブランドを発表します。
全体的な印象としては第4位の BT-45V に近く、グリップ力や乗り心地の良さ、溝の多さに起因するウェット路面での安心感はいい勝負なのだが、レーザーテックはとにかく抜群に軽快なタイヤだった。車重が260kgもある’04年以降のスポーツスターにとっては(僕の愛車は’06年型)、これは相当に魅力的な要素で、僕がツーリングでよく走るチマチマした峠道、県道や農道、舗装林道における楽しさと快適性は、これまでに履いたタイヤの中ではナンバー1だったと思う(ただし、純正やメッツラー・マラソンME880などを好むライダーの場合は、この軽快さを落ち着きがない、フラフラするなどと感じるかもしれない)。
というわけで、25000kmを走った時点でレーザーテックを履いた僕は、以後はずっとこれでいこうと思ったものの……。残念ながらこのタイヤはライフが短かった。実は最初に履いたのがHレンジだったので、次はVレンジを選んだのだけれど、いずれも5000kmでリアが磨耗限度に到達。このタイヤの主な対象は、もう少し車重が軽いバイクなのだろうか。あるいは、エンジン特性がもう少しマイルドな車両とか。
スポーツデーモンの魅力は、何と言ってもグリップ力の高さだろう。スポーツスターの世界でハイグリップタイヤとして定評を得ている、ブリヂストン BT-39 とダンロップ K300GP を試したことがない僕が言っても説得力はないかもしれないが、峠道で車体を倒し込んだ際の食い付きのよさは圧倒的で、この感触はちょっとラジアルタイヤ的ですらあると思った。
しかもスポーツデーモンは、BT-45Vと同等の約6000kmまで使えたのである。BT-39 や K300GP が5000kmは持たないと言われていることを考えると、このグリップ力にしてこのライフというのは、相当に素晴らしいことなんじゃないだろうか。しかし僕の使い方と財政事情を考えると……、6000kmという距離数はちょっと寂しいのだった。
率直に言うとコマンダーは、これといった特徴がないタイヤである。軽快さならレーザーテックに軍配が上がるし(BT-45V だってコマンダーよりははるかに軽快だ)、グリップ力ならスポーツデーモン、直進安定性ならマラソン ME880 のほうが上。とはいえコマンダーは、すべての点において純正のD401を上回る程良い能力を持っていて、そのうえ、ライフが長く(1万3000~5000km前後)、価格が他のタイヤの半額~2/3なのである。
そんなわけなので、僕はこれまでに4度もコマンダーを履いた。そして何度も履くうちに思ったのは、このタイヤには少々ぶっきらぼうな面があるものの、乗り手がきちんとした操作をすれば、それなりの反応を返してくれるということだった。特筆すべき性能はないけれど、必要にして十分な能力を持っていて、ライフ(=自分の財政事情?)を気にせずにツーリングを楽しめる。これこそが、僕がコマンダーを1位にした理由だ。
さて、2回に渡ってお届けしたタイヤの話だが、近年になってスポーツスターのタイヤ事情は変わってきている。新たに純正指定となったミシュラン・スコーチャーは、従来の D401 よりしなやかな特性を持っているようだし、僕が私的ランキングで1位に挙げたコマンダーは、昨年度で生産が終了して、近日中に後継のコマンダー2が登場するらしい。僕としてはコマンダー2が従来型と同じ特性を持っていることを期待しているのだが、こればっかりは実際に履いてみないと何とも言えないところである。
1900年代初頭の旧車から最新スーパースポーツまで、あらゆるバイクに興味を示す業界16年目のフリーライター。最近のハーレーではFXCWC ロッカーCとVRSCF V-ROD マッスルがお気に入り。愛車は’06年型スポーツスター883、’76年型トライアンフT140V、’09年型スーパーカブ50など。