前回のコラムでオーリンズのS36Eを装着した小瀧さんの2001年式FXDLダイナ・ローライダー。今回は取り付け直後のステップ、「セッティング」です。高価なサスペンションを装着されると、それだけで満足しちゃう人が少なくないのですが、「装着した後」にこそサスペンションの真の楽しさがあるのです。まずは初歩中の初歩、セッティングについてご説明しましょう。
前回取り付けたタイラップが下まで!
しかしバンプタッチしちゃっています…
サスペンションを交換した際にダンパーロッドに取り付けたタイラップがどこまで沈み込んだか、ストロークのチェックをしましょう。素晴らしい!見事にタイラップが沈み込んでいますねぇ~。ただ、ダンパーロッドの一番下まで沈み込み、バンプタッチしてしまっています。これだと“遊び”がないので、大きな段差に飛び込んでしまった際などに生じる衝撃を吸収し切れません。タイラップの位置は、バンプから見てちょうど人差し指がすき間に入るぐらいの余裕があるのがベストです。では、いよいよセッティングを行うとしましょう!
見事に沈み込んでいますが、バンプタッチしています。少し“遊び”を持たせるセッティングにしましょうか。
我妻店長のワンポイントアドバイス
300~400キロほど走って慣らしを
気になる変化も細かくチェック!
今回の小瀧さんのように、新しいサスペンションに交換した後はまず300~400キロほど走って慣らしましょう。これだけ走ればサスペンション全体が柔らかくなって馴染んできますので、ここでプリロードを調整して、オーナーにとってベストの状態に設定してあげます。いわゆる「ショック長の調整」です。ツーリング(ソロまたはタンデム)やワインディング、サーキット走行などバイクライフのシチュエーションはさまざまですが、まずは街乗り走行を前提にセッティングします。バンプタッチしてしまっているのでバネレードを伸ばしてやりますが、このとき女性ライダーとして気になるのが足つき性ですね。どちらも両立できる絶妙のポイントを探しながら、作業を進めていきましょう。
ハーレーだからほんのちょっと車高が上がるだけでライダーの印象も激変。ここはデリケートに調整……。
自分でやるサスペンション・セッティング
【01】ショック長をチェック
まずは1G(ワンジー)でのショック長を計測します。ショック長は前回とほぼ同じで、ストロークもいい感じになっています。馴染んできている証拠ですね。
【02】スプリングの長さもチェック
続いてスプリングの長さをチェックします。この後車体を吊り上げて荷重がかかっていない状態にし、ショック長と合わせて伸び幅を確認しましょう。
【03】フリー状態でのショック長を
ジャッキで車体を吊り上げて、サスが伸びきった状態にしてショック長を測ります。ここで305ミリと、前回と同じだったのでOK。それでは長さ調整の作業へと進みます。
【04】作業前にサスをキレイに!
…とその前に、まずは汚れたサスペンションをキレイにしてやりましょう。ここではエアーを吹き付けていますが、自宅でされる場合は水洗いだけでOKです!
【05】もちろんウェスで磨く
当然ながら、濡れっぱなしはよくありません。乾いたタオルをスプリングに巻きつけて、汚れと水分を拭い取ってやってください。これだけで十分キレイに。
【06】サインペンでマーキング
キレイにし終えたら、アジャスターの噛み合った部分にサインペンでマーキングします。ショック長を調整した後、元通りの場所にセッティングしてやるためです。
【07】カンタンな工具で作業開始
専用の工具でいよいよ作業開始。まずは下のアジャスターを固定して、それから上のアジャスターを回していきます。女性の力でもまったく問題なし。
【08】いよいよショック長を変更
上のアジャスターを数ミリほど上げたら、続いて下のアジャスターだけを同じく工具でゆっくりと回していきます。1回転で1.5ミリなので、今回は2回転ほど上げましょう。
【09】調整を終えたら再度長さを
マーキングした部分を揃えてアジャスターを締め終え、ジャッキから降ろしたら再びスプリングの長さをチェック。先ほど1G193ミリだったのが194ミリに。
【10】当然ショック長もチェック
1Gでのショック長もチェックします。先ほど300ミリだった長さが302ミリに。はてさて、この2ミリという変化がハーレーにおける足つき性にどう影響するかな。
【11】ライダー乗車時の沈み込み
小瀧さんにバイクに跨ってもらい、ライダー乗車時の沈み込みもチェックします。と同時に足つき性も確認。本人曰く「さほど気にならない」……ほっ(笑)。
【12】最終チェックはライディング
最終チェックはもちろん走行です。乗り慣れた愛車ですからわずかな差でもオーナーなら気づけます。許容できる範囲での変化なら言うことナシですね。
取り付けた後に自分色にしていく
サス最大の楽しみはここにアリ
モーターサイクル用のサスペンションは世に山ほどありますが、ライダーの体型やバイクの種類、バイクライフの幅がもたらす走行状態など、組み合わせは無限大ですから、あらゆる状況に応じてセッティングできるサスペンションを備えているのがベストと言えるでしょう。本コラムの基本中の基本ですが、サスペンションは“乗りやすさ”を追求してライダーのバイクライフをより豊かにすることを目的にセッティングできるようになっています。つまり、『サスペンションは取り付けた後からが楽しい』のです。この楽しみを知ってしまったら、愛車への愛着もより一層増すというもの。皆さんもぜひご自身のサスペンションのセッティングに挑戦してみてください。
サスペンションは“取り付けてから”が一番面白い!