はじめまして。このたび、新コーナーの「メンテナンス講座」を任されることになりましたH-Dシティ中野店メカニックの芦田と申します。ディーラーメカニックの観点から、基本に忠実に、日々のハーレーのメンテナンス作業をリアルに伝えてゆくべく、レポートを綴っていきたいと思います! どうぞ皆様、この講座を心ゆくまで楽しんでください。
「少し前からブレーキの握りしろが深くなり、エンドプレーの多さが気になり始めた」と本車両のオーナー様より相談を受けました。確かにしっかり握ると、グリップまで到達して接触してしまいました。今回の症例ですが、アフターマーケットのブレーキレバーが取り付けられているため、握りしろが手前に顕著にきていると考えられます。正常な状態であれば問題ないのですが、今回は助長条件になっています。
スカスカブレーキレバーのエンドプレー、果たしてこいつはどこからやってくるのでしょうか? 遊びが生まれるということは、必ずどこかに物体が移動できるクリアランスが生じているはずです。そのクリアランス部分を適切に見極め、なくしてやることで本来のエンドプレーに必ず戻ります。逆に適切な部位を見誤ってしまうと、作業後に不要な焦りを感じることになります。エアの混入か? マスターシリンダーのリーク? ピストンシールリターン不足? 整備作業ではあらゆる可能性を探ります。そうすることで、その先に素晴らしい達成感が待っているのです。
ピストンシールの交換で見事に復活しましたが、実はシールにシリコングリースを塗布してピストンを馴染ませるだけでも、ピストンのリターンはある程度復活します。が、シールの寿命が尽きているものに関して、この対策はあくまで付け焼刃に過ぎず、やはりオーバーホールするのが理想です。ゴム製品であるシールは消耗品ですので、コマメな交換が大切。フルード交換も定期的に行い、新鮮な状態でブレーキラインをクリーンに保てば、マスターシリンダーやシールが持つ本来の寿命を維持できます。私はレースシーンでの活動を通じて、命を預けるブレーキの重要性を再認識させられました。もしブレーキに異常を感じたら、必ずプロのメカニックにご相談ください。それでは、次回をお楽しみに!
広畑日産自動車・H-D事業部で経験を積み、25歳のときに「アメリカのディーラーに勤めたい」と単身渡米。アリゾナ、ラスベガスと約2年間におよぶディーラー勤務を経て帰国。現在はH-Dシティ中野店でメカニック主任として活躍中。V-RODでドラッグレースに興じるなど、幅広いハーレーライフの楽しみ方を知っている。