お久しぶりです、メカニック芦田です。
今年の日本はどうやら暖冬のようですね。温かい冬…バイクで走るには都合の良い話ですが、あまり風情溢れている感じではありません。ちなみに私は冬が大好きです。雪の日にバイクを平行に滑らせながら走るのが大好きでして…。そんな話はさて置き、今回は日本の暖冬にも影響している地球環境やアメリカのバイクに関する規制、その他の交通法規制について触れてみたいと思います。非常に重要なテーマなので少し堅苦しい内容かもしれません。どうか少しの間我慢してお読み下さることをお願い申し上げます。
近年、環境問題が危惧されることは数多くありますが、なかでも地球温暖化が最も深刻と言われています。地球温暖化は先進国による急速な産業技術開発により、各産業の工場が無尽蔵に増え続けたこと、また生活に欠かせない車やバイクの普及により大量の温室効果ガス(主に二酸化炭素「CO2」)が大気に放出され続けていることが原因です。この温室効果ガスの影響により、ここ数十年で地球上の平均的な気温が1.2~1.3℃も上がってしまったのです。このまま人類が環境配慮を怠り、温室効果ガスを排出し続けると、更に2~3℃の上昇が確実と言われています。この影響で数千万人が食糧不足に陥り、数億人がマラリアの危険に、数百万人が洪水に遭い、数十億人が水不足に直面するのだとか。また、映画の話ではなく、南極などの氷が溶け(もう融解は始まっています)海面が7メートルも上昇します。海面が7メートル上がるとどうなるか? 日本を含めて海抜付近の地域は全滅です、ハーレーで海岸沿いを…なんて場合じゃありません。
この恐ろしい現実に我々は直面しています。現段階でも温室効果ガスの排出量は増え続けており、このまま増えれば3℃以上の上昇も免れないそうです。しかし! 現代の技術を駆使し、地球全体レベルで意識を変えることにより本当にギリギリですが“最悪のシナリオ”の直前で食い止められるかもしれないとも言われています。近年、車はもちろん、バイクに関しても厳しい排ガス規制が敷かれ始めたのは、こういう地球環境の危機的状況からきているのです。車の話をしますと、1962年にカリフォルニア州が世界に先駆けて排ガス規制を設けたのが環境規制の始まりで、次いで日本、ヨーロッパと最初の環境規制が敷かれました。しかし、この規制だけでは環境破壊を充分に食い止めることができず(無論、産業部門からの排出も考慮して)、年々その規制には拍車がかかり、ついにそれまでは規制の対象外であったバイクに対しても平成11年に排ガス規制を敷かれるに至りました。その影響で、皆さんのハーレーの吸排気系(マフラーやキャブレター)の交換や使用継続に影響が出たという成り行きです。
アメリカの排ガス規制に関して書くと、アメリカには規制が2つ存在します。1つは「カリフォルニア規制」、もう一つは「連邦規制」です。これはカリフォルニア州が1962年にアメリカ連邦政府より先に独自の規制を敷き、連邦政府の規制の方が後出しのような結果になり、アメリカではこのどちらかの規制を州ごとに採用することになっています。連邦規制はかなり緩く、車両のどこかに異常でもない限りは確実にクリアできる数値です。バイク適用数値が平均基準値でCO5.5%、HC1800PPM(PPMとは濃度の単位、大気の場合1?中1c?の割合)と、日本やヨーロッパの規制に比べ物にならない緩さです。しかし、カリフォルニア規制は世界最高レベルの規制となっています。ただし、カリフォルニア州ではバイクと一部の車に限っては登録時に排ガス測定「スモッグチェック」は無く、メーカーが新車開発時に受けるモード試験のみです。
ただ、これはあくまで登録時での悩みです。排ガス試験が原因で給排気系カスタムの幅が狭くなっているということは実際にはほとんど無いに等しいと考えられます。カルフォルニアの規制がいかに厳しいと言えど、車検が無い訳ですから新車時に検査をパスしていれば、その後マフラーやキャブやEFIの設定を変えたところで、給排気の改造に対し取り締まりはなく、少なくともは今のところ聞いたことはありません。もちろん、違法は違法です。カルフォルニアではキャブレターのミクスチャーの封印を外した時点で違法と聞いたこともあります。
一方、連邦規制下の州では、これといって規制の影響を受けることはなく、大抵のキャブ仕様の場合、アフターマーケットのキャブレターでもスロージェットを絞れば規制には対応できてしまいます。キャタライザー無しのマフラーであっても問題なくパスできるでしょう。つまり、排気音量規制がないのでマフラーに制限は一切無いと言っても過言ではありません。今まで私が触ってきた限りですが、お客さんのハーレーでマフラーがノーマルだったのは…私の記憶が定かであれば0%でした(新車は除きます)。
しかしながら、この状況は変わってくるかもしれません。話を環境問題に戻しますと、今、アメリカでは各州がこのカリフォルニア規制を全州適用するように方向転換が迫られています。1970年に上院議員エドムンド・マスキー氏によって提案された排ガス基準値は、当時は達成困難とされました。しかし長年かかって1995年頃には氏の基準値は排ガス基準に採用され、アメリカの車両排出ガス規制も大幅に進展しています。ただ、現実的には一般的なアメリカ人は環境に対して関心が薄いような印象があります(あくまで個人的印象です)。豊富過ぎた資源保有も合間って、自分の生活レベル維持のため他の先進国ほど環境問題に興味は無いように思えます。
これから日本では「平成19年規制」、ヨーロッパでは「ユーロ4(ステップ4)」、アメリカでは「新カリフォルニア規制」と世界が手を取り合おうとしていますが、アメリカ全体での姿勢の変化が待たれます。アメリカが京都議定書に参加しなかったことは国内議論を呼んでいますから、変化の兆しはあるような気がしますね。1つだけ確実に言えることは、世界の石油を牛耳っているアメリカの姿勢が変わらない限り、厳しい未来は変えられないということでしょう。利便性、生産性を重視した人類の歩みのツケがいよいよ目の前に迫ってきているのです。我々個人にできることもあります。明日から、ハーレーで急加速をちょっと控えるだけでも私たちや子供たちの未来に光を添える事ができるのです、今気付くか、終わってから気付くか、我々次第です。“経済打撃”か“地球環境”か、究極の選択が今目の前に迫っているのです。
26歳。幼少からバイクと車に興味を持ち、メカニックになることを誓う。高校中退後、四輪メカニックとして4年の経験を積み、ハーレー界に飛び込む。「HD姫路」に6年間勤務、経験と技術を積み重ねたのち「思うところがあり」渡米を決意。現在はラスベガスHDに勤務。(※プロフィールは記事掲載時点の内容です)