1970年代に入るまで、ハーレーのラインナップは現代でいうところのツーリングファミリー(FL)とスポーツスターファミリー(XL)の2カテゴリーのみでした。そこに、「XLのフットワークを持ったスポーツ仕様のビッグツインを」と、ダイナファミリーの原点となるFX スーパーグライド(1971年)が誕生したのです。このアイディアを出したのは、創業者のひとりウィリアム A.ダビッドソンの孫にしてカンパニーの若きインダストリアルデザイナーを務めるウィリアム G.ダビッドソン、ウィリーGその人でした。
その後、現代のラインナップにもその名が残るローライダー(1977年)やワイドグライド(1980年)などの登場により、ハーレーのラインナップの一翼を担うファミリーとして、ツーリングやスポーツスターらと肩を並べる存在となりました。
エンジンはビッグツイン仕様で、ツインショック構造のフレームにテレスコピックフォーク、そしてホイールサイズはフロント19/リア16が基本設計とされるダイナファミリー。フロント21インチというチョッパースタイルのワイドグライド、前後16インチ×ディッシュホイールというファットボブ、ダイナ版ツアラーのスイッチバックといったモデルも登場していますが、基本軸はいずれも同じ。「ビッグツインでスポーツする」というスピリットは今なお継承されているのです。
2006年、フレーム並びにスイングアームの剛性アップとフロントフォーク49mm化というダイナモデル全共通のマイナーチェンジが施され、よりパワフルなマシンへと進化したダイナモデル。そしてこの2017年、ツインカム88(排気量1,450cc)からツインカム96(排気量1,584cc)へと進化したエンジンは、かつてのツーリングモデルや現ソフテイルファミリーに備わるツインカム103(排気量1,690cc)へと排気量がアップされたのです。
各モデルともベースの骨格に変化はなく、あくまでエンジンのパワーアップをはたしたのみ。グラフィックについては、大幅な変更があったのはストリートグライドのツートーンカラーぐらいでしょうか。ローライダー(ビビッドブラック)の価格を比較してみると、209万円という2016年の設定に比べて、2017年版は212万8,000円と、その差は38,000円。エンジンのボアアップだけを考えると、これは大変お得と言えます。エンジン性能をしっかり引き出すチューニングを施してやれば、高速道路での走行で差が出ることは間違いありません。2016年以前のモデルはさらに値下がりしているものと思われるので、とりわけ中古車と比較する際はカスタムメニューと走行距離をあわせて見てみることをオススメしたいです。
なおスイッチバックは2016年いっぱいでラインナップから姿を消しています。
1977年から継承されるダイナファミリーの代表格モデル。2014年にフルモデルチェンジをはたし、ノスタルジックな雰囲気を再現しつつもオートバイとしての快適性を追求した一台へと変貌。ダイナ唯一のダブルディスクブレーキ仕様でもある。
ダイナファミリーのなかでもっともシンプルかつお値打ち価格な一台で、カスタムベースとして多くの人から親しまれるライトチョッパーモデル。ブラックアウトされたボディはまさしくカンパニーが掲げるダークカスタムの理念にふさわしいものと言えよう。
全ラインナップで最長となるホイールベースを備えたリアルチョッパー。猛々しく燃え盛るようなフレイムスのグラフィックはワイドグライドを語るうえで欠かせないもの。両腕と両足を突き出すようなポジションを強いる、まさしく乗り手を選ぶハードな一台。
前後16インチのディッシュホイールにデュアルヘッドライト、ドラッグバー、そしてボートテイル風リアフェンダーなど、型破りなスタイルを有するファットボブ。最大の特徴はグンを抜いて高い直進安定性で、ディッシュホイールが地に足をつけた走りを生み、重戦車のようなライディングを楽しませてくれる。