ガービングは1976年に創設されたアメリカのメーカーで、電熱ウェアをいち早く実用化したことで知られている。その特徴は、まず第一にとにかく丈夫で耐久性に優れていること。そして、氷点下の厳しい環境でも高い保温性能を発揮し、軽さと機能性に優れていることにある。高性能で高品質であることから、アメリカ軍の物資調達基準であるMIL規格を取得、デルタフォースをはじめとするアメリカ軍の特殊部隊に採用されているほか、冬季の屋外作業用などバイク乗り以外にも様々な分野で使用されている。ここまでヘビーデューティな電熱ウェアは、ガービングの他にはないといえるだろう。
ガービングのウェアはスイッチを入れるとすぐに暖まるのが特徴で、その秘密は同社が採用するマイクロワイヤーテクノロジーにある。これは電熱メカニズムに髪の毛の約1/4、約12ミクロンという細さの高弾性ステンレス鋼を数十本にまとめてテフロンコーティングを施し、パッド状に成形したものを使う技術。従来の銅線や炭素繊維のワイヤーに比べ、軽くて着心地がよく、断線もほぼ皆無で電源を入れるとすぐに暖まるという点で優れている。ライダーの体を線ではなく「面」で暖めることで、ウェア全体で暖かさを実感できるのだ。
2016年モデルのガービング電熱ウェアは、従来のモデルに比べ、さらに進化を遂げている。まずは生地。従来よりも薄くなり、しかも引っ張りや裂けに対する強度が優れているナイロン生地へと変更され、同時に以前のモデルにあった袖口と裾のリブが廃止された。また、前ポケットもあわせて廃止され、襟のカラーリングも赤から黒へと変更になっている。ちなみに、電熱ユニットについては、特に変更はない。これはつまり、暖かさの性能はそのままに、より薄く、軽くなり、インナーとして着やすくなると同時に着心地が改善されたということだ。従来モデルだとポケットなどもあるデザインだったため、アウターと間違えて着てしまった例もあると聞いたが、今回の改良により、よりインナーとして特化したことになる。
このことにより、以前よりもタイトなアウターと組み合わせて着ることが可能となり、シルエットへの影響も最小限のまま、冬でも暖かいライディングを楽しめるようになった。電熱ジャケットに興味はあるけど、どうしてもモコモコ感が気になる、と思っていた人には朗報といえるだろう。
実際に着てみると、非常に軽く、しなやかで、ライディング姿勢を取っても突っ張るような感じは一切ない。そして、スイッチを入れるとすぐにじわりと暖かさが伝わってきた。ガービングの電熱ウェアの暖かさは非常に強力で、真冬の北海道を走っても快適さをもたらしてくれるぐらいだという。逆に本州の平野部では、コントローラーを最弱にするぐらいでも十分暖かいとのこと。
ジャケットのほかにパンツやグローブ、インソールがラインナップされており、これらを自由に組み合わせて使うことが可能だ。つまり、指先と足元だけ暖めたいという人はグローブとインソールを組み合わせればいいし、上半身のみでいいという人はジャケットとグローブだけにするなど、必要な部分を各自が選んで使えるのだ。もちろん、すべてを組み合わせて全身を暖めることも可能。別売りのデュアルコントローラーを組み合わせれば、ジャケットとパンツを別々の温度に設定するなど、きめ細かい調節が可能になるのも嬉しい。タフでヘビーデューティなうえ、着心地や機能も充実したガービングの最新モデルは、冬でもアクティブに走るライダーの強い味方になってくれること間違いなしだ。
上半身から下半身、そしてつま先まで、簡単にシステムアップして全身を暖めることができるのがガービングの電熱ウェアの優れた点だ。ここではそのラインナップを紹介するとともに、各部の細かいディテールや機能を細かく見ていこう。