今回ご紹介するのはスポーツスターの“吸気系”パーツ。愛車のフィーリングを大きく変えてくれるアイテムだ。883ccや1200ccのスポーツスターエンジンはバイブレーションを強化する方向に味付けすることもできるが、ビックツインにはない4カムという機構を採用しているため、スポーツに振ることもできる。幅広いベクトルの中からエンジンの方向性を決めるのが吸排気のパーツなのだ。
今回は吸気に限ったパーツ紹介となるが、吸気系と排気系は一体として考えることが必要。いくら吸気を強化しようと、排気が貧弱であれば思うような変化は得られない。吸排気はバランスを取ってカスタムすることが必要なことを覚えておいて欲しい。
最初に紹介する吸気パーツはエアクリーナー。現行インジェクションモデルや以前のキャブレターモデルの双方に取り付けられているパーツだ。エアクリーナーの役割はその名の通り「空気を綺麗にすること」。空気中に含まれるホコリやゴミなどを内部に取り付けられた「エアフィルター」で取り除き、綺麗な空気をキャブレター内部に送り込む役目を果たしている。
ドラッグレーサーなどではエアフィルターが取り付けられていない、いわゆる“オープンファンネル”となっている。これは高回転時にエアフィルターが抵抗となり、本来必要な空気をキャブレターに送り込めないことを防ぐためだ。ストリートを走る我々はドラッグレーサーほどシビアに考える必要はない。しかし、キャブレターやマフラーに高性能なモノを選んだのであればエアクリーナーにもそれなりのモノを選んでやるべきだろう。また、最近はエアクリーナーのカバー形状はさまざまなモノが登場している。性能だけではなく見た目からエアクリーナーをチョイスする、というのも手だ。
カスタムでは定番のS&Sエアクリーナー。ドラッグスタイルからスポーツ系まで幅広くフィットする。
シンプルなスタイルが人気のアイテム。同じ7インチでキャスティングのモノや、径が5インチのラインナップもある。
大きな空気吸入口を持ち、フィルターは高効率。スポーツスターのポテンシャルを大きく上げたい人にはオススメ。
ダイキャスト製のシンプルなエアクリーナー。雨天走行時は雨を吸ってしまうので注意が必要。
進行方向に開かれた開口部から効率よく空気を吸入する。見た目の迫力もかなりのモノ。
5.5インチと小口径のエアクリーナー。レトロに振ったカスタムにはかなりフィットする。
純正エアクリーナー内部をこれに交換することで、吸入効率が大きくアップするエアクリーナーキット。
安価で手に入るリプレイス用エアフィルター。スポンジ部分は簡単に取り外せ清掃が非常に簡単。
純正エアフィルターより吸入効率が高いエアフィルター。エアクリーナー形状に合わせて他にも種類が豊富。
サーキットや峠を走るような人でなければ、必要以上に吸気効率を心配する必要はないでしょう。ウチに訪れるお客さんに人気なのはシンプルなラウンドエアクリーナー。7インチや5インチのどちらのモノでもスポーツスターにはよく似合います。個性的なエアクリーナーを取り付けようとするならば、エアクリーナーだけが目立ってしまわないように気をつけた方がいいでしょう。(SPEEDBUGGY 岩田 慎一氏)
2007年のスポーツスターから採用されたインジェクションとは、コンピューターでガスの吸入量を調整してくれる乗り手に優しい吸気システムだ。キャブレターの場合、シビアなセッティングにしている車両では季節ごとにキャブレターを外してセッティングし直す必要があったが、インジェクションでは不要。気候などによっては入力されているデータが合わなくなることもあるが、エキパイ入り口付近に取り付けられたO2センサーで排気ガスをチェックし、データ補正を行ってくれる。
ハーレーにインジェクションモデルが登場して間もない頃は「キャブレターの方がフィーリングは上」など議論が起こったものが、インジェクションはデータさえ作成すれば、どんなフィーリングにも設定が可能。滑らかなトルクカーブを描く性能本位の設定もできれば、わざとトルクカーブを崩しテイストフルな設定にもできる。ただし、インジェクションチューンの場合、ノーマルのコンピューターをベースに+αの変更を行う「サブコン」とコンピューターを丸ごと交換してしまう「フルコン」の2種類がある。設定の自由度はフルコンの方が遥かに上なので、どんなチューンをしたいのか、イメージを持ってお店に相談して欲しい。
ノーマルのコンピューターから大きく外れたデータ変更はできないが、手ごろな価格が人気のサブコン。
世界的に有名なZippersが開発したフルコン。日本での流通も増え、MAPデータも豊富に揃いつつある。
キャブ時代からモジュールの開発に心血を注いできたTWINTEK社のフルコン。設定の自由度の高さが秀逸。
ウチに来てくれるお客さんは「アイドリングを落として三拍子に」という方が多いですね。サブコンではアイドリングは落とせないので、フルコンに変更して対応しています。最近はサプライヤーが用意しているMAPデータの種類が増えてきたので、本格的にインジェクションチューンが楽しめるようになってきました。PCを繋ぐだけでMAPを書き換えられるので気軽なのも嬉しいですね。(Glory Hole 小山 嘉隆氏)
ほんの2年前まではキャブレターモデルのスポーツスターは現役だった。そのため、インジェクションが現役の今もキャブレターモデルは街中を駆け抜けている。スポーツスターに長く採用されてきたのは扱いやすく、燃費も優れたCVキャブレターだ。しかし、高年式のモデルでは排気ガス規制の関係でガスが薄く設定されていることなどもあり、CVキャブレターのチューニングや社外のリプレイスキャブレターに交換するのはカスタムの定番となっている。
キャブレターカスタムには大きくわけて2種類ある。1つ目は市販のダイノジェットを組み込んだり、オリジナルのCVチューンを施すショップに依頼したりすること、2つ目がHSRやFCRに代表される社外キャブレターへの交換だ。CVキャブレターはハーレー以外の車両にも広く採用されるほど優れているため、CVキャブレターをチューニングするだけでも非常に面白くなる。また、体感的な大きな変化を求めて他のキャブレターを選ぶのも手だろう。ただ、1つ気をつけて欲しいのが883。社外キャブレターの中には、883のキャブレターとしては口径が大きすぎるものがある。HSRやS&Sなどを883に取り付けているユーザーがいないわけではないが、セッティングに苦労すると思った方がいいだろう。
CVキャブ内の部品を交換し、性能と体感の双方がアップ。いくつかのステージにわかれたラインナップがある。
CVキャブレターの究極版と言ってもいいチューニングCVキャブレター。ラインナップは4種類。
強制開閉キャブでありながら、レーシーなだけではなく味わい深さも持つ人気のキャブレター。
定期的に多少のメンテは必要だが、味わい深いテイストとトルクの太さは病みつきになってしまうほど。
アクセル操作に多少慣れが必要だが、どのキャブレターにもない、ダイレクトで力強い加速感が人気。
日本では特に人気の高いレーシングキャブ。スロットルに敏感に反応し、別次元の加速感が味わえる。
オーナー自らキャブレターを調整するときの参考に、2000年以降のスポーツスターのメインジェットの番手を紹介しよう。ノーマルがどの番手を使っているのか、セッティングの際の参考にして欲しい。
883シリーズ | 1200シリーズ | |
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2000年式 | #160 | #170(1200Sのみ#195) |
2001年式 | #160 | #170(1200Sのみ#195) |
2002年式 | #160 | #170(1200Sのみ#195) |
2003年式 | #190 | #200(1200Sも共通) |
2004年式 | #170 | #160 |
2005年式 | #170 | #160 |
2006年式 | #170 | #160 |
※スロージェットはどの年式もすべて♯42を採用
「キャブレター交換で何を求めているのか?」キャブレター交換の際にはまずそこをハッキリさせておきましょう。街中をのんびり走るだけなら、FCRやHSRなどの強制開閉式のキャブレターの美味しいところは体感できないかもしれません。逆に山道などでスポーツ走行がしたいのでしたら、スロットルに俊敏に反応する強制開閉式キャブはオススメです。じっくり考えてから選んでください。(V-Factory 呑海 和彦氏)