仕事が終わり、彼女は駐輪場へと向かった。そこに待っていたのは愛馬の72ショベルチョッパー。慣れた手つきで始動の手順をササッとこなすと、すぅっと息を吸い、一気にキックベダルを踏み降ろす。そして、難なくスーサイドシフトを繰り、彼女とチョッパーは静まり返った夜の冷気をまるで切り裂くかのように走り出した。
MIKI。彼女のバイクへの憧れは大学生の頃に生まれたそうだ。キッカケは女友達が乗っていたSRで、時折後ろに乗せてもらっていた時に、キックでエンジンをかける姿や、長い髪をなびかせて走る光景にいつしか惹かれていったと言う。そして、その友人がSRを手放すと聞き、彼女はすぐに免許を取得して憧れのSR乗りとなったのである。
彼女は後に、大型免許を取ってスポーツスターも所有することとなった。しかしそんな折、偶然買い物に行ったショップに展示されていたナックルヘッドに衝撃を受けることに。「この頃ってまだショベルとかナックルとか旧車のことは全然知らなかったんですけど、良いなぁ、って。帰ってから色々と調べました」。
その後はカスタムにどっぷりと興味を持ち始め、全国各地のカスタムショーへと足しげく通った。知識を広げるうちに、乗りたいバイク像は着実に脳内へと描かれていったのである。そして遂に、カスタムバイクのオーダーを決意。しかし、その方法が実に興味深い。「言葉じゃ上手く伝えられないから、ネットの写真や自分が撮った写真を集めて、それを切って貼って……コラージュを作ってそれをショップに持って行ったんです(笑)」。
かくしてカスタムはスタート。彼女自身がベースに選んだショベルFLHは、昨年の秋に完成となったのである。
納車以来、MIKIは走りを存分に満喫している。今月は彼女の地元である九州から名古屋JOINTSまで自走で参加した。今はとにかく走るのが楽しくて仕方ない様子で、「仕事が終わって疲れててもショベルに乗ると走りに行っちゃうんです(笑)」と話してくれた。