取材協力/SHIUN CRAFT WORKS 取材/HOTBIKE japan.com編集部
掲載日:2012年4月19日
自らの分身たるチョッパー
「チョッパーに一生を捧げるというくらいの気持ちでシウンをはじめました。レシプロエンジンがなくなって電動になろうが、それこそ空を飛ぶようになってもチョッパーというモノを作り続けよう、好きなモノで食って行こうと腹を括ってこのシウンを立ち上げました」
そう語るシウン代表、松村友章。チョッパーが好きという思いで走り続けてきた彼にとって、チョッパーとはどのような存在なのだろうか?
「人それぞれでしょうが、僕にとって自分のチョッパーは自らの分身、自分自身だと思っています。例えばバイクにのめり込んでいる人の車両を見れば、そのオーナーの人柄なんかも分かりますね。僕はオーナーの人となりとか好みが分かるまでバイクは作らないようにしてるんです。だからいろんな話しをします。バイク以外の話しが多いかな。そうしてその人に合ったスタイルを模索するんです」
当たり前のことを当たり前にこなす
オートバイとしての機能、耐久性に徹底的にこだわるシウン。それはバイク屋としてごく普通のことだと彼は言う。その上でオーナーの好みやスタイルに合った車両を製作する。最低でも10年間は基本メンテナンスだけで走れるモノ。もちろんスタイルも含めての話しである。「オーナーの満足度は高いと思いますよ。思っていたのより、いいモノができたと言われるのが僕のモチベーションです。"思った通りのモノ" では満足できないんです。それよりもいいモノが作りたい。120%のモノを提供したいと考えています。金額的な満足度も含めて……」。
バイク屋として当たり前のことを当たり前にこなす。そこに嘘やごまかしはなく、すべてにおいて正直に取り組むことがシウンの基本スタンスである。これは簡単なようで簡単ではない。シウンでは現行のツインカムからパンやナックルなどの旧車まで幅広く扱っている。内燃機系に関してはボーリングやバルブガイドの製作、クランクの芯出しなどの作業は外部に委託。品質向上のために各分野のスペシャリストの手を借りて車両のクオリティアップが図られている。
トータルバランスこそすべて
シウンを語る上で、2003年に製作されたコンセプトマシン "Salty Bonnie" はやはり外せないだろう。この車両は2005年にラスベガスで開催されたAMD World Championship Pro Showのフリースタイルクラスで約200台中19位に食い込んだ。今でこそAMDの名は日本でも知られているが、シウンのこの挑戦によりAMDのことを知ったという人も多いはずだ。
「当時の日本のカスタムショーでのジャッジ方法に疑問を感じていたんです。AMDではビルダー同士が細かく採点し合うビルダーズチョイスを導入していたので挑戦してみたいと思ったのがキッカケでした。緻密なディテイルや色使いなどに表れる日本人の感性を世界に発信したかった。結果には満足しています」
好奇心とチャレンジ精神で借金だらけになりながらもAMDへ日本から初となるエントリーを果たしたシウン。その功績は大きい。
カスタムマシンを製作する上で最も重要なのはそのバランスだと彼は言う。機能、見た目ともにバランスこそがトータルでの仕上がりを左右するという考えのもと、車両製作には細心の注意が払われている。「一点豪華主義的なバイクは好きじゃない。バランスがすべて。昨今の風潮を見ていると一番大切な部分であるバランスが、おざなりにされているように感じられます。とても基本的なことなんですけどね」。
ディテイルに宿るポリシー
1998年式のEVOをベースに定番パーツを使って組み上げられたフリスコチョッパー。シウンのこだわりである均整の取れたスタイリングがキモとなる車両である。心臓部のEVOモーターにエーデルブロックヘッドを組み込み、シリンダーフィンは下部が4枚削り取られパープルにペイントが施されている。CCEのフィン付きビレットロッカーカバーもアクセントとなっている。定番のスポーツスタータンクにフラットフェンダーという外装にダイヤモンドステッチのワンオフレザーシートをセットアップ。フロントフォークはデュース用が使われている。そして注目して頂きたいのは耐久性を考えたフェンダーステーの強固なマウント方法や、メンテナンス製を考慮したリアアクスル部のプレートなどのディテイルだ。これがシウンの仕事である。
走りに重きを置いたツインカムFXR
1998FXRに2000年式のTC88モーターをスワップしたツインカムFXR。ミッションはEVOの5速が使われてる。S&SハイカムにサンダンスFCRをチョイス。マフラーはシウンオリジナルのハイパイプが装着されている。フロントフォークはXL1200S用のアジャスター付き、ホイールは純正の9キャスト。ライムグリーンのペイントがアクセントになっている。走り重視のFXRにTC88エンジンをスワップすることにより、さらなる磨きをかけたシウンならではの車両である。
新しいモノは想像力からしか生まれない
2011 NEW ORDER CHOPPER SHOW 6thでシウンが出展したエレクトリックチョッパー “Chopper’s Forever” について話しを伺った。 「シウンをスタートしてすぐの2001年に製作したショベルのコンセプトマシン “What’s Chopper” がベースになっています。70年代のチョッパーとドラッグレーサーを融合したスタイルがこの車両の特徴です。先人たちをリスペクトしつつ、当時から見た未来をイメージして作りました。その車両も10年経って一区切りしたので新しく作り直そうと思ったのがプランのキッカケでした」
四輪の世界ではハイブリットカーや電気自動車が全盛を迎え、ガソリンの高騰も続いている。しかしハーレー、ことチョッパーの世界では全く危機感が感じられないと彼は不安を覚えた。
「ガソリンが枯渇したら、チョッパーも絶滅するのか?」
チョッパーに一生を捧げるという思いでシウンを立ち上げた彼はさらに考えた。「電動バイクはつまらない? 本当にそうなのか? やってみなきゃ分からないだろ」。
エコだとか、環境のためだとかいう思いは微塵もない。ただハーレーが好き。チョッパーが好き。ガソリンが枯渇してもチョッパーというカルチャー、スピリットは電動化しても残せるはず。誰もやらないなら自分でやるしかない。
──Chopper’s Forever
「僕は今40なんですが、もし50才を超えていたら電動バイクは作っていなかったでしょうね。これから先も自分がチョッパーに乗り続けることを考えて作ったわけだから。個人的な趣味の延長です(笑)。今の若いビルダーに言いたいですね。パンやナックルなどの旧車ばかりじゃなく、もっと前を見て欲しいと。新しいモノは自分自身の想像力からしか生まれない。先人達をリスペクトしつつも、前に進まなければならないんだと……」
SHIUN CRAFT WORKS
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