2014年のブルースカイヘブンで日本導入が発表された水冷ハーレーダビッドソン、ストリート750。販売が開始されたのは2015年の2月27日でした。カンパニーが次世代ハーレーダビッドソンと位置づけるストリート750に搭載されているのが、ここに紹介する水冷750cc SOHC4バルブ・挟角60度Vツインエンジンの「レボリューションX」です。ハーレーダビッドソンの水冷エンジンとしては2002年に登場したV-RODに搭載された「レボリューション」以来の完全新設計エンジンなのです。
2013年に開催されたEICMA(ミラノ国際モーターショー)ではじめてお披露目された次世代水冷ハーレーダビッドソン、ストリート750。本国アメリカではなくヨーロッパで発表されたということが非常に興味深いですね。これには明確な理由があります。ストリートの開発コンセプトには「アーバン・モビリティ」「オーセンティック・ハーレーダビッドソン」「ダークカスタム・ソウル」という3つがあります。このコンセプトにある通り、アーバン・モビリティというタウンユースをメインにしたモデルだったため、広大な国土を持つアメリカではなくタウンユースにマッチしたヨーロッパで発表されたのです。
つまりストリートはヨーロッパやアジアをメインターゲットにしたモデルといえます。もちろん、伝統的なハーレーダビッドソンであること、そして近年のカンパニーのトレンドであるダークカスタムを意識したモデルに仕上げられています。
さらに35才以下という若いライダーをターゲットとし、日本を含む世界各国3500人の声を集めた上で開発。そのイメージソースは1977年に登場したハーレー歴代ラインナップの中でも唯一のカフェレーサー、XLCR となっています。タンクのエンブレムとスピードスクリーンはXLCRからインスパイアされたものなのです。
ちなみにストリート750の名称はXG750といいます。しかしこの名称はあまり浸透しておらず、「ストリート」と呼ぶユーザーが圧倒的に多いですね。ストリート750はカスタムのベースモデルとしても大きな可能性を秘めており、2015年には全国の正規ディーラーで争われる「THE BATTLE OF THE KINGS」や、本社スタイリングチームが選出したトップビルダー5組による「STREET BUILD OFF」などのカスタムコンテストが積極的に行われています。
2002年に登場したV-RODに搭載された水冷「レボリューション」に次ぐ、完全新設計の水冷エンジン「レボリューションX」。V-RODのレボリューションは排気量1246ccの水冷DOCH 4バルブ・挟角60度Vツインという仕様。対してストリート750のレボリューションXは排気量749ccの水冷SOHC4バルブ・挟角60度Vツインとなっています。ボア×ストロークは85mm×66mm、圧縮比は11.0:1、最大トルクは58Nm / 3750rpm、燃費は21.3km/Lというスペックです。
高回転型のレボリューションの最大トルク、105Nm / 7000rpmと比べるとレボリューションXは低回転型のトルク特性を持ち、タウンユースで非常に扱いやすいエンジンといえるでしょう。
スポーツスター883に搭載されるエボリューションのボア×ストロークは76.2mm×96.8mmとの比較で分かるようにレボリューションXはショートストロークで小気味よく回るエンジンです。水冷エンジンには必須のラジエーターはフレームダウンチューブにセットされ、シリンダーの冷却フィンはツインカムやエボリーションに比べると控えめなものといえます。
もちろん燃料供給方式はインジェクションでミクニ製38mmボアのシングルポートフューエルインジェクションが搭載されています。
高回転型の爆発的なパワーを誇るV-RODの水冷レボリューションをマイルドにした印象のレボリューションX。かつ、近しい排気量のスポーツスター883の空冷エボリューションのトルクフルな乗り味を、よりシャープにしたようなエンジン特性といえます。さらにハーレーらしいVツインエンジン特有の鼓動感を持ち合わせたエンジンに仕上がっています。
しかし鼓動感という意味に置いては水冷エンジンのツインカムやスポーツスターのエボリューションに分があるでしょう。ショートストロークならではの軽やかに回るレボリューションXのスタートダッシュは力強く、その加速はスポーツスターを凌ぐものです。ストップ&ゴーが多い、まさにタウンユースに適したエンジンといえます。
日本に導入されているのは排気量749ccのストリート750のみですが、本国アメリカでは排気量492ccのストリート500がラインナップされています。おそらくこのストリート500が日本に導入されていないのは日本の免許制度が関係していると思われます。
排気量492ccのストリート500は排気量400cc未満の車両まで運転することができる普通二輪免許では乗ることができず、大型二輪免許が必要になるからです。そうなるとストリート750とストリート500の差別化が難しくなってしまいます。ちなみにアメリカでストリート500は6849ドル(ビビッドブラック)で販売されています。日本円では約79万円となっています。