取材協力:パインバレー 写真:磯部孝夫 取材・文:渡辺英夫
掲載日:2011年3月28日(月)
取材協力:パインバレー 写真:磯部孝夫 取材・文:渡辺英夫
掲載日:2011年3月28日(月)
納車日に交換するオーナーも珍しくないというほど、その存在が知れ渡った「北米マフラー」。日本仕様のノーマルマフラーを米国仕様の純正マフラーにリプレイスすることで、ストックの完成されたスタイリングを維持したまま、程よい歯切れ感と排気音量のアップ、絶妙なサジ加減の抜けの良さを実現する手法として、もはやライトカスタムの定番となった感さえある。その実力のほどは、下の映像をご覧いただきたい。
さて、この北米マフラーを日本に広めたパイオニアが横浜・本牧にあるショップ「パインバレー」だ。創業当初から米国に太いパイプを持ち、膨大な数のユーズドマフラーおよび新品マフラーを買い付ける独自のルートを確立。音量や抜けを微妙にコントロールする「パンチアウト加工」の無料実施や、マフラーの連結管を塞ぐことでより強い鼓動感が楽しめる「テイストアップバルブ」の開発など、北米マフラーに対する独自のアプローチもユーザーから高い評価を得ているショップである。今回は、そのパインバレー協力のもと、より本来のハーレーらしい味わいを演出するライトカスタムメニューをご紹介しよう。
街中の交差点。北米マフラーを装着したFLHTCU ウルトラクラシック・エレクトラグライドなら、瞬時のレスポンスで車体を安定させることが可能だ。
北米マフラーに交換したことで駆動力と瞬発力が増加。右手の一ひねりで、歯切れ良い排気音とともにFLHTCUの巨体を伸びやかに加速していく。
ハーレーの魅力はいくつもあるが、こと乗り味に関して言えばエンジンのパルス感と歯切れの良い排気音が最大のチャームポイントではないだろうか。この部分をより明確にするためにカスタマイズに踏み切るオーナーも多いことだろう。「オリジナルのスタイリングは気に入っているので変更したくない、大人のライダーとして近所迷惑になるような爆音系のカスタマイズはしたくない。でも、愛車の味わいをもう少しアップさせたい…」。そんな相反する条件を満たすのに最適なアイテムが「北米マフラー」だったというわけだ。このバージンハーレーでも何度かレポートしてきたのでご存知の方も多いと思うが、北米マフラーへの変更は、カスタマイズというよりはハーレー本来の排気系を取り戻すという意味合いが強い。そしてその効果は確実に走行性能にも影響するのだ。今回紹介している映像の中では、日本仕様マフラーと北米仕様マフラーを同じバイクに装着して比較している。音質や音量の差もかなり明確だが、注目して欲しいのが発進直後のバイクの挙動。日本仕様の場合、FLHTCU ウルトラクラシック・エレクトラグライドのヘビー級の車体を低回転域で安定させるだけの駆動力が不足気味のため、少し右にフラついてから加速している。一方の北米仕様の場合、ハーレー本来の力強い駆動力が車体をすぐさま安定させるため、比較的まっすぐ発進しているのがわかる。 北米マフラーというと、その音質と音量の変化だけが注目されがちだが、実は走行性能やフィーリングにも大きな効果を及ぼすのである。もちろん、ハーレー独特の不等間隔燃焼による味わいが本来の排気系により蘇ることは言うまでもない。愛車に秘められた魅力を覚醒させる鍵は、やはり北米マフラーが握っている。
映像でも紹介しているが、北米仕様と日本仕様とでは開口部の口径がまったく異なる。北米マフラーがもともと抜けの良い設計であることがわかる。 | 美しく完成されたノーマル・ハーレーのスタイリング。北米マフラーなら、これに手を加えることなく程よいカスタマイズが可能だ。比較的リーズナブルな価格も魅力。 |
ハーレー本来の味わいを取り戻すマストアイテム「北米マフラー」。今回は、これに加えることでさらにテイストをアップさせる良質なスパイスが2つあるのでご紹介しよう。
日本の交通環境ではオーバーヒートやノッキングが気になることがあるハーレー。インライン・エンリッチメント・ディバイスで改善が期待できる。
モデルや年式に合わせて各種用意されているインライン・エンリッチメント・ディバイス。セッティングの楽しさも味わえるダイヤル式がお勧め。
インライン・エンリッチメント・ディバイス
北米マフラーとの組み合わせでまずお勧めしたいのが、インライン・エンリッチメント・ディバイスだ。これは、排気ガスの状態を監視しているセンサーとエンジンを制御しているコンピューターの間に割り込ませることによって、意図的にやや濃い目の燃調にシフトさせるアイテムだ。一般なガソリンエンジンの燃調は、計算上の理想よりも濃い目(リッチ)にセッティングされることがほとんど。これは、点火しやすさやパワーの出しやすさ、ノッキングなどの異常燃焼抑制を考えた場合、その方がメリットが大きいからだ。しかし、ハーレーの場合はその割合が小さいようで、ガソリンが薄いと感じるオーナーも多いという。インジェクション化されたハーレーでは、ガソリンの供給量も自動調整されているはずだが、実際の走行においてエンジンがオーバーヒート気味だったり、ノッキングなどが発生する場合は、さらに多くガソリンを供給した方が良いケースも。そうした微調整を可能とするアイテムがこのインライン・エンリッチメント・ディバイスというわけだ。問題が出ない範囲でガソリン量をアジャストする仕組みなので走行フィーリングが劇的に変化することはないが、オーバーヒートの抑制や膝まわりに感じる熱さの軽減、ノッキングやアフターファイヤーの減少、低速での滑らかさが向上するなどの効果が期待できる。価格も比較的安価なので、北米マフラー装着時のみならず実際の走行において上記の気になる症状が発生している場合は検討したいアイテムと言える。
(価格:15,000円~18,500円 ※ショップでの取り付け工賃は2,100円。マフラーと同時装着の場合は無料 すべて税込)
車両への設置作業は簡単。このようにカプラーをはずしてその間に割り込ませるだけ。この後、タイラップなどで車体にしっかり固定しておく。 | 2気筒エンジンなのでリアシリンダーにも同様の作業を行う。こちらも非常に簡単。セッティングを考えてダイヤルを手前にして固定するのが良いだろう。 |
スクリーミンイーグル・エアクリーナーキットは北米マフラーにベストマッチ。抜けの良い排気系には効率の高い吸気系を組み合わせたい。
左がノーマル、右がスクリーミンイーグルのエレメント。厚みが増している分、吸気効率が高い。表面積も広い設計なので吸気抵抗の少なさは圧倒的だ。
スクリーミンイーグル・エアクリーナーキット
インライン・エンリッチメント・ディバイスとあわせて注目したいのが、スクリーミンイーグル・エアクリーナーキットだ。映像の中でもアップで撮影されているので一目瞭然だが、日本仕様と北米仕様とではマフラー開口部の口径がまるで違う。もともと北米仕様マフラーはかなり抜けが良い設計なのだ。そうした排気系を手に入れたのであれば、やはりそれに合わせて盛大に外気を吸い込んでくれる吸気系も検討したいところ。
なかでもハーレー純正パーツとして認められているスクリーミンイーグルのエアクリーナーキットは、当然のことながら北米マフラーとベストマッチ。これまで何度も北米マフラーとこのエアクリーナーのコンビネーションをテストしてきたが、その効果は想像以上。マフラーが奏でる排気音に大きな差はないが、迫力を増した吸気音とパワー感がかなり違う。ややフワッとトルクが立ち上がり、その直後に力強い後輪駆動力が発生。右手の動きにシンクロするレスポンスと高回転まで伸びていく爽快感は、明らかにノーマルのエアクリーナーとは異なる世界だ。スポーツスターなどでもこの性能は十分に享受できるが、厚みを増した駆動力はどちらかと言えば発進や低速のコーナリング時に車体を安定させたいツーリングファミリーにおいてメリットが大きいと感じる。吸気系と排気系のアンバランスをすぐに見抜いてしまうような経験豊富なライダーであったとしても、この組み合わせであれば大きな不満が出ることはないだろう。
(価格:16,260円~27,960円 ※ショップでの取り付け工賃は3,150円 すべて税込)
スクリーミンイーグルは、エアクリーナーボックスのベースを交換して設置。エレメントの周囲すべてが吸気口となるのでレスポンスが格段に向上する。 | ノーマルのエアクリーナー。小さな吸気口を持つベースがあるのでかなり絞られている。汚れている場合はスクリーミンイーグルに変更するチャンスだ。 |
北米マフラーも年式やモデルによって音量・音質が異なると語る秋山店長。経験豊富なパインバレーならオーナーの好みに細かく対応が可能だと言う。
これまで「北米マフラー」とひとくくりに説明してきたが、パインバレーの秋山店長によると、今後はその変遷にも注目していただきたいとのこと。例えば近年のツーリングファミリーでは、2006年以前と2007年以降、2009年以降、2010年以降と、マフラーの仕様が細かくが変更されてきていると言う。
特に2009年から2010年にかけて北米マフラーでもキャタライザー(触媒)を装備することが多くなり、それを境に音量・音質も若干変化してきている。また、単純に考えるとキャタライザーを装備しないマフラーの方が音が良さそうだが、そうとも言い切れないようだ。もともと劇的な排気音量・音質の変化を望んでいないオーナーが北米マフラーをチョイスしているため、意外にもこのキャタライザー装備のマフラーも人気が高い。要はオーナーの好みの問題ということになりそうだが、こうした場合はやはりショップの経験がものを言う。
北米マフラーの取扱量では国内最大級のパインバレーでは、微妙な音量・音質の違いやパンチアウトの径など、オーナーの希望に合わせてさまざまな提案が可能だ。北米マフラーを装着して、オリジナルの良さを活かしたライトカスタムを目指すのであれば、そうした細かい部分にもこだわりたいところ。興味のある方はパインバレーに相談してみていかがだろうか。なお、北米マフラーの変遷については、秋山店長のブログ「アッキーブログ」で詳細に解説されているので参考にしていただきたい。
(価格:30,000円~モデル年式に合わせて各種取り揃え ※ショップでの取り付け工賃は5,250円 すべて税込)
北米マフラーの膨大なストックを誇るパインバレー。来店・通販にかかわらず、モデルや年式に合わせてオーナーに最適な一組を提案してくれる。 | 横浜市本牧という抜群の立地も魅力の新店舗。下の映像でも紹介しているが、横浜ツーリングの目的地のひとつにパインバレーを加えるのも面白い。 |
取材協力:パインバレー
〒231-0821
神奈川県 横浜市中区 本牧原 12-1
ベイタウン本牧5番街1階
フリーダイヤル:0120-918-469
FAX番号:045-305-4006
Mail:vh@ypv.co.jp
URL:http://ypv.co.jp
アクセスも容易なベイタウン本牧5番街に移転を完了したパインバレー。北米マフラーなどを装着した試乗車もある。また、初心者向け交換作業マニュアルも完備するほか、希望者には必要な工具も廉価で販売してくれる。